【第104回定例記者レク概要より抜粋】
それと、今日インターネットのニュースを見ていたら、たまたまこんなニュースを見つけたので、一言コメントしたいと思います。
「検察の危機、検察官の負担軽減を」という、産経新聞のニュースが出ているんですけど、いったい何を考えてるのか、と言いたいです。
検察官が負担が大きすぎるから、一人ひとり忙しすぎるから、こんなことになってしまった、もう少し楽に仕事ができるように負担を軽減しなさいと、そういうことを書いてるんですね。産経新聞の人に、この『アメリカ人のみた日本の検察制度』の本を読んでみてもらいたいです。
これはアメリカの法曹資格者であるデイビッド・T・ジョンソン氏が、たしか2年にわたってフルブライトで日本に留学して、その間にいろんな検察関係者とか、いろんな弁護士とか、いろんな関係者にインタビューした結果、日本の検察の実情というのはこういうもので、諸外国の検察制度と比較して、日本の検察はこんなに特殊なんだということを書いてます。この中で「日本の検察はパラダイスだ」と言われています。
処理する事件の質と量という負担の面でも、検察がほとんど公判でも負けない。99.9何%有罪になるということなども含めて、これだけ検察にとって天国みたいな世界はないということが書かれている。これ、多くの検察の関係者がインタビューに応じていて、これを読んでいるんですけれども、みんな「たしかにその通りだ」という、率直な印象を持ったはずです。この本は本当に貴重な本だと思いますね。
新聞記事を書くのであれば、よく実情を知って書いてほしいですね。ものすごく荒っぽいことを書いているわけですよ。
全国の検察官の数が2500何人で、受理した事件は約200万件にのぼって、一人あたり年間775件、1日2件。これ、全部の刑事事件を一緒に考えているから、それをこんな1件1件の処理に時間がかかるようなものと同じように考えたら大間違いです。それは本当にほとんど右から左に、検察官一人ひとりはまったく手間をかけなくてもいいような事件が大部分なんです。これで犯人を捕まえてくるのは警察なんです。被疑者が事実を認めていて犯人であることに間違いがなければ、それを確認して起訴状を書いて起訴すればいい、情状によっては不起訴にして釈放すれば良いというだけのことなんです。
検察官が全部それをフリーパスでやっていたところで、おそらく今の有罪率というのは基本的に98%~99%にはなると思います。いちおう基本的には認めている事件が大半なわけですから。そんなものも含めて、1日2件も処理するのは大変な数だという認識自体、まるっきり完全に間違っていると思います。ということで、とりあえず検察の話はこのあたりにいたします。