平成「緑のタヌキ」の変 ~衆院選で起きた“民意と選挙結果とのかい離”~

始まりは、隣国、自民国の城主アベが起こした突然の挙兵だった。

自民国では、城主の「身内」や「お友達」を偏重するやり方に対して領民の批判が強く、しかも、それらの問題への対応が不誠実なものであったことから、城主への不満が高まりつつあった。いずれ、城主アベは、領民の信任を失い、城を追われるのではないかと見られていた。

そのような自民国の状況は、対立を続けていた民進国にとっては、城主アベを打倒する千載一遇の機会であったが、内部対立に加え、家臣の離反や不祥事が表面化し、対応に追われていた最中に、城主アベが突然挙兵したのだった。

もともと、「挙兵」には決まりがあった。領民を戦いに巻き込み、多大な負担と苦痛を負わせることになるのだから、余程の理由がなければならなかった。しかし、城主アベは、適当な口実をつけて、挙兵を宣言、近隣諸国との戦争準備を始めた。

大混乱に陥ったのが民進国の城内だった。家臣の離反や不祥事で混乱している最中に、アベ軍が攻め込んできたのでは、城を守れない。城主マエハラも家臣たちも、頭を抱えた。

そこに登場したのが、「私についてきなさい。城主アベを討ち取ってしんぜましょう。」などと言って現れた「緑の国の女城主」のユリコだった。自民国の出城を攻めて「黒いネズミ」を討ち取って大勝利を収めた「女城主ユリコ」の武勇伝は、瓦版などで広まっており、民進国では、城主マエハラが、「今、アベに攻められたのでは城がもたない。民進国が打ち揃って、緑の国の下に入り、ともにアベと戦おうぞ!」と家臣に呼びかけた。家臣たちは、城主マエハラから渡された軍資金を手に雪崩を打つように城を離れ、「緑の国」をめざした。アベ軍が押し寄せてきても、ユリコ率いる緑の軍が圧勝するだろうと信じて疑わなかった。

ところが、民進国の家臣達が「緑の装束と甲冑」を与えられて戦争準備に入った頃から、城主ユリコは、不可解な行動を取り始めた。

民進国の家臣をすべて引き取るのではなく、「考え方の合わない人は緑の国から排除します。」と言って、城を閉ざすことを明言したのである。「排除」の対象となった家臣達は、独自に「立憲民主国」を立ち上げて、自民国との戦争準備に入った。

そして、城主ユリコは、「アベを討ち取る」と言っていたのに、そのアベを支持する浪人を召し抱え、城に引き入れたりもした。決定的だったのが、城主ユリコ自身が、出陣する気配を見せないことだった。家臣達に対して「アベを倒せ!」と叱咤激励して応援するだけだった。「ユリコ殿、そろそろご出陣を。」を促されても、「最初からそんな気はないと言っているじゃありませんか。私には、トウキョウトの領民がいます。」などとうそぶいている。さらには「緑の軍」の総大将も決めようとしない。「戦が終わってから相談します。」と言うだけだった。

そうこうしているうちに、民進国の家臣たちの中から、「ユリコは『緑のタヌキ』だ。我々は騙されたんだ。」と言って離脱する動きが出てきた。「やはり騙された。『緑のタヌキ』に化かされて、民進国家臣の地位も失い、身ぐるみ剥がされた。」

しかし、もう時間がなかった。アベの大軍は、すぐそこに迫っていた。

そして、10月22日、戦いの火ぶたは切られた。立憲民主国は、「エダノ丸」を築いてアベ軍を迎え撃ち、城主エダノンを中心に奮戦し、アベ軍に各地で打撃を与えた。ユリコから「排除」された者、早く離脱した者も奮戦し、多くが生き残った。

しかし、「緑の軍」の方はといえば、戦う前から勝負はついていた。敗北を見越した城主ユリコは、前日に国外に逃亡。ユリコの腹心ワカサは、自民軍先鋒の若武者コイズミに、一撃で討ち取られた。「緑の軍」が新たに召し抱えた武将たちは、ほぼ全滅。民進国の家臣たちの多くが、緑の甲冑をつけたまま、自民軍の格下武将に討ち取られた。

 

以上が、今回の衆院選をめぐって起きた平成「緑のタヌキの変」の顛末である。

この「変」は、日本の政治に、そして、日本の社会に何をもたらすことになるのか。

直接の「被害者」は、「希望の党」に加わったがために落選の憂き目にあった民進党所属の前衆議院議員達である。しかし、「緑のタヌキ」に化かされて、公約が公表されてもいないのに「公約を遵守する」「党側が要求する金額を拠出する」などという「政策協定書」に署名したのは彼らなのであり、まさに自業自得である。しかも、途中で「化かされた」と気づく局面はいくらでもあった。

民進党を事実上解党して、希望の党に合流することを正当化する唯一の理由は、前原氏も言っていたように「いかなる手段を使っても安倍政権を倒す」ということだったはずだ。しかし、「希望の党」は、必ずしもそのような方向で一致結束していたわけではなかった。小池氏は「安倍一強」を批判するが、「情報公開の不足」などの自分の主張に我田引水的に結びつけようとするだけで、具体的な安倍批判はほとんどなかった。

原口一博元総務大臣が、公示の直前になって、「小池氏が出馬しないなら安倍支持」などと放言した中山成彬氏の九州比例ブロックでの扱い等に反発して、希望の党を離脱した際には、希望の党が「安倍打倒」に一枚岩になれていないことは十分に認識できたはずだ。その頃、私は、RONZAに、【希望の党は反安倍の受け皿としての「壮大な空箱」】と題する拙文を寄稿し、その中で、「原口氏の決断を重く受け止め、今回の衆議院選挙に向けての最大の目標が安倍政権打倒であることを、党の公認候補の間で改めて確認する行動を希望の党内部で起こすべきだ」と述べた。「安倍政権打倒をめざすことの確認文書への署名」を全立候補者に求めることも一つの方法であり、前原氏は、そのためにリーダーシップを発揮すべきだと述べた。

この時、民進党前議員達が、「血判状」に署名するぐらいの気概を持って、「アベ政権打倒」と、そのためのアベ批判の論陣について認識を共有し、一致結束していれば、局面も変わっていた可能性がある。関ケ原の戦いで西軍が壊滅した後、西軍に加わっていた島津軍は、徳川本陣を敵中突破し、九死に一生を得て薩摩に生還した。希望の党に加わった民進党前議員には、逆境を乗り越えるため、安倍政権打倒のための決死の行動が必要だった。

それとは対照的に、立憲民主党が純粋に政治信条と理念を守り抜く姿勢は、多くの国民の共感を得た。1年前にNHKの大河ドラマ「真田丸」が大人気だったのと同様に、日本人は、「逆境にあっても信念を貫き、戦い抜く姿勢」に好感を持つのである。

このような平成「緑のタヌキの変」で恩恵を受けたのは、自民党・安倍首相のように思える。しかし、果たしてそうであろうか。今回の選挙での共同通信の出口調査では、比例代表投票先を回答した人に安倍晋三首相を信頼しているかどうかを尋ねたところ「信頼していない」が51・0%で「信頼している」の44・1%を上回ったとのことだ。それなのに、自公で3分の2を超える圧勝だ。

森友・加計疑惑で窮地に追い込まれた末に、事実上首相に与えられている解散権を悪用して、政権維持のための「最低・最悪の解散」に打って出たことには、自民党内からも多くの批判があった。本来であれば、選挙で国民の厳しい批判を受けて当然だったのに、「緑のタヌキ」の「化かし」によって、結果的に救われただけだ。さすがに安倍首相自身も、そのことは認識しているのだろう。選挙での圧勝にもかかわらず、笑顔はなかった。

そして、何と言っても、この「変」の最大の被害者は、国民だ。安倍政権に対する民意と選挙結果が余りに大きくかい離してしまったことは、日本の社会にとっても不幸なことだ。しかも、今回の解散総選挙を通して国民の多くが安倍首相に抱いた不信は、ほとんど不可逆的なものと言える。そのような状況で「国難」に対処することこそが「国難」と言うべきだろう。

今後、安倍政権に対する対立軸として純化された立憲民主党を中心とする野党勢力が、森友・加計問題への対応への批判を強めていけば、選挙結果への反動もあって、内閣支持率は低下していくだろう。そのような状況でも、自民党は結束して安倍政権を支え続けるのだろうか。来年の総裁選を控え、自民党内でどのような動きが出てくるのであろうか。

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平成「緑のタヌキ」の変 ~衆院選で起きた“民意と選挙結果とのかい離”~ への9件のフィードバック

  1. 黒瀬 理行 より:

    前原さんと連合の会長の話し合いがあり、前原さんは、小池さんと話し合いをして希望に合流を決めた。
     連合会長の後ろに、財界の誰かさんがいませんか?
    根拠を示す程の情報は、私にはありませんが、財界は、安倍政治の安定した継続を求めています。だって、お金 ジャブジャブを閉められたら、一気に緊縮財政ですから。

  2. 鋭いご指摘。マエハラには2度キシ回生ののチャンスがあった。先ず小池が排除を言い出した時、想定範囲内とは言わず、抵抗手段を発表すること、次に筆者の指摘する原口のタイミングで『アベ打倒」を枚買うにする署名。

  3. sikiyua紗千 より:

    納得!

  4. ナゴヤシミン より:

    自公政権が2/3の議席を維持すると言う残念な結果の終わりましたが、小池百合子の濃い化粧がはがされたことは良かったです。小池百合子の本心は自民との連立との声もあり、希望の党が与党か野党かの立ち位置が分かりませんでしたが、これで野党に行かざるを得ないこととなりました。これからも小池百合子に嫌々都政を担われる都民がかわいそうです。さっさと都政からも退陣して欲しいものです。
    国政では政権交代が遠のき、しばらく選挙もありません。野党を応援した身としては、野党特に立憲民主党には心置きなく森友・加計問題をしっかり追及し、安倍晋三氏を退陣に追い込んで欲しいものです。

  5. 池田 明男 より:

    今の小選挙区制でバラバラに戦ったら勝てるはずがない。これは共産党も含めた共闘しかないが、それ以外の方法でやれば分裂闘争になる。
    それとあまりにも政策がいい加減。消費税を増税しないと何もできなくなる。
    元々、自民、公明、民進(元の民主党)の消費税増税は公約だ。たしかにいろんな問題はあるが早く増税して教育費等を賄うことだ。
    それと財界もほとんどベアなし春闘。これでは消費が伸びるはずがない。お勉強ができるエリートよりも博打がうまい投資家を求めている。博打とは設備投資を早く回収することだ。それができずに日本は停滞したんだなぁ。台湾や韓国、中国はそうした人が投資家(企業家)になっている。日本はお勉強はできるが投資はできない人ばかりだ。
    少しどんな人が企業にふさわしいかも考えないとなぁ。幾ら内部留保を増やしても株価はそれほど上がっていない。
    今後は日本はどうするのか余程考えないとなぁ。

  6. 山本 功 より:

    今回つくづく考えさせられたのは、言葉の軽さと言葉の重たさです。
    言葉を発した瞬間に捕まえれば、重く圧し掛かり、捕まえ損ねると軽く扱われ話題とならない。
    首相の”詐欺を働く人”発言をあの発言の瞬間に的確に指摘できれば、状況は一変したはずだ。
    政治家の皆さんの瞬間力がこれからの国会議論で問われている。

  7. 試行錯誤者 より:

    関ケ原ではタヌキおやじが江戸の総大将だったが、今回の東京のタヌキは、途中から寧ろ西軍の淀殿(守るのは大坂ではなく、東京ファーストですが)のようになってしまった。
    若狭氏が、これも西軍の石田三成の様になって破れた。
    枝野さんは小早川秀秋ではなく、菅さん野田さん長妻さん辻本さんといった、古参の長老や排除された古参武士をまとめて支持を得ていった。
    民進党内に「犬伏の別れ」があったのかどうかわからない。
    小池さんが自民と連立するか対立するか、東京2020オリンピックという国際イベントを前に、今後一年間に注目します。

  8. T_Ohtaguro より:

    比例区

    自民66
    公明21
    計 87

    社民 1
    共産11
    立憲37
    維新 8
    希望32
    計 89

    その他0
    ___

    つまり、政党支持について、野党が過半数を占める。
    国民の公務員を選出する権利の行使について、
    与党が可決し、内閣が承認した公職選挙法の小選挙区制が、
    議席の配分を歪め、国民の権利を侵している。

    内閣が衆議院を解散することによる選挙においては、内閣を信任するかしないかについて、国民投票を同時に行う必要がある。

  9. T_Ohtaguro より:

    比例区の票/議席 

     自民 66議席 1855万5717票 (28万1147票/議席)
     公明 21議席  697万7712票 (33万2272票/議席)
     計  87議席 2553万3429票

     立憲 37議席 1108万4890票 (29万9592票/議席)
     希望 32議席  967万7524票 (30万2423票/議席)
     共産 11議席  440万4081票 (40万0371票/議席)
     維新  8議席  338万7097票 (42万3387票/議席)
     社民  1議席   94万1324票 (94万1324票/議席)
     計  89議席 2949万4916票

     こころ 0議席    8万5552票
     諸派  0議席   64万3655票

    票/議席について、社民/自民は3以上。

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