明日(10月19日)に公示される衆議院議員総選挙で、自民党甘利明幹事長と立憲民主党江田憲司代表代行の落選運動を行うことにした。
甘利氏の落選運動を行う理由
甘利氏については、既に、Yahooニュース記事【甘利氏の「説明責任」は不起訴処分で否定されるものではない ~注目される衆院選神奈川13区】などで、2016年に経済再生担当大臣の辞任の原因となった「あっせん利得疑惑」について、説明責任を果たさないまま自民党幹事長に就任したことを批判してきた。「説明責任」は、どのような立場の人物について、どのような問題について生じるものなのか、「説明責任を果たす」とは、どういうことなのか、検察の起訴不起訴の処分との関係についても述べてきた。その延長上にあるのが、今回の落選運動である。
選挙というプロセスを経ることなく、総裁からの指名だけで、党の政治資金の配分、公認権限など強大な権限を握る自民党幹事長に就任した甘利氏が、「政治とカネ」に関わる重大な問題への説明責任を果たすことなく、その地位にとどまることによって、自民党の自浄能力には全く期待できなくなる。唯一、選挙の洗礼を受ける場は、目前に迫った衆議院神奈川13区の小選挙区選挙だけであること、このまま何事もなく衆議院選挙を乗りきってしまえば、甘利氏の対応が、選挙を通して国民の了解を得たことになり、第二次安倍政権から長年にわたって続く、「説明責任を軽視し、虚言で批判を交わす政治」が、岸田政権下においても継続することを意味する。
「説明責任」を果たさない甘利氏に「NO!」を突き付けることができるのは、衆院神奈川13区の有権者しかいない。大和市、海老名市、座間氏、綾瀬市の有権者の方々に、甘利氏の当選を阻止することの重要性を、全力で訴えていきたいと思う。
江田氏落選運動を行う理由
一方、立憲民主党代表代行の江田憲司氏の落選運動は、「健全な野党」を実現するために行うものだ。
立憲民主党推薦の野党統一候補山中竹春氏が、菅首相(当時)が全面支援する小此木八郎氏ら自民党系候補者に、大差で勝利し、菅首相を総裁選出馬断念に追い込んだ横浜市長選挙(8月7日告示、22日投開票)は、今回の衆院選の前哨戦として、極めて重要な選挙だった。その選挙で、山中氏擁立を主導し、市長選圧勝の原動力となったのが、江田氏だった。
それは、独断で山中氏の候補者選定に対する県連内部や市民団体などからの反対を押し切り、同氏の市長としての適格性に関する様々な問題に対しても全く説明責任を果たさず、江田氏の独断で、強引に山中氏を擁立したことによるものであった。そして、山中氏が新市長に就任し、立憲民主党などが「与党」となった現在、山中氏は、疑惑に対して「説明不能」の状況に陥り、しかも、市議会では、選挙で掲げた公約や今後の施策をめぐって、山中市長の答弁の混乱が続き、自民・公明両党からの追及に対して、ほとんど「議論が成り立たない」異常な状況にある。
このように、横浜市政を「惨憺たる事態」に陥らせている「横浜市長選での圧勝」を、江田氏は、野党共闘によって「政権交代」をめざす選挙戦略のスタンダードとすべき成功事例であるように喧伝している(毎日「政治プレミア」【菅首相退陣を招いた横浜市長選の勝因と教訓】)。
その江田氏が、野党第一党の立憲民主党の代表代行として、党運営や選挙対応に大きな実権を持ち続けることは、野党第一党としての立憲民主党の信頼を損なうものだ。
山中市長就任後の横浜市の「惨状」
江田氏が、山中氏の選挙運動の中心に位置づけたのは「コロナ専門家」というフレーズだった。その山中氏が市長になってから行ったのは、ワクチン接種時間を拡大する接種会場を設けること(福岡市では、既に実施されている)を表明したことぐらいで、特に目新しいものはない。
一方で、山中氏は、7月まで大幅な遅延が問題となっていた横浜市のワクチン接種が、「全国平均より10%も高い」などと、にわかに信じ難い発表をし(10月13日定例会見)、その直後に誤りだったと判明するなど、「データサイエンスの専門家」であることが改めて疑問視される失態も起きている。
市長選挙の争点とされた横浜市へのIRの誘致については、「即時撤回」の公約どおり、最初の市議会本会議で「撤回宣言」を行った。しかし、選挙では、「ギャンブル依存症の増加や治安悪化はデータから明らか」としていたが、市議会一般質問で、IR撤回の理由を問われ、「ギャンブル依存症や治安悪化の懸念について市民の理解が得られていない」としか答えられず、「将来にわたって誘致することはないのか」との再質問には「IRのコンセプトには反対なので、誘致しない」との答弁を繰り返した。
山中氏が市長選で、「3つのゼロ」として、①敬老パス自己負担ゼロ 、②子どもの医療費ゼロ 、③出産費用ゼロ を政策として掲げ、そのための財源を、「新たな劇場建設(六百十五億円)の中止で財源確保」としていた。しかし、新たな劇場は事業化されておらず、その「予算」というのは、そもそも存在していない。山中氏は、市長就任早々、劇場計画を中止することで615億円の財源が生み出されるような誤解を生む公約が不適切だったことを認めざるを得なかった。結局、「3つのゼロ」の財源については、「全事業を見直す」と述べるだけで、基本政策が全くのデタラメであったことを露呈している。
そして、山中氏が、選挙中から指摘されながら一切無視していた経歴詐称疑惑・パワハラ・強要疑惑についても、新たな事実が判明し、「説明不能」の事態に陥っている。
2002年から2004年までの米国での経歴に関して、「NIH(米国衛生研究所)リサーチフェロー」という、博士号取得後3年以上経過が必須とされる正規ポストに就いていたように記載していたが、実は、留学時に博士号を取得していなかった山中氏は、「ビジティングフェロー」という留学生の扱いであったことが明らかになっている。これについて、市議会や定例会見で質問されても、「リサーチフェローは、『研究員』の意味で使った」と答え、「NIHでの役職」を問われても、まともに答えない。
「リサーチフェロー」は、大学のHPの経歴や、市大と横浜市の共同事業で提出した履歴書に記載されているだけでなく、公的研究費の申請書にも記載されており、今後この問題は、重大な問題に発展する可能性がある。
私が、山中氏の落選運動の中で、「恫喝音声」を公開していた横浜市大の取引先業者に対する「強要未遂事件」は、横浜地検特別刑事部に提出された告発状が受理され、同部が捜査中である。
また、山中氏が、立憲民主党市会議員らとともに、理事長らに、山中氏の市長選出馬が報じられた直後に出された学内文書の訂正・謝罪等を要求し、市長選挙で自己に有利になる内容の新たな学内文書を発出させた「横浜市大不当圧力問題」は、市議会での事実解明を求める請願が政策・総務・財務委員会で審査が行われ、「理事長・学長の不誠実さをインターネット上で批判させる」などと山中氏が脅迫発言を行った事実も確認され、閉会後も継続審査されることが決まっている。
要するに、山中氏は、市議会では、自民・公明両党の質問には、まともに答えられず、選挙中から指摘されていた疑惑は一層深まり、また、それについて市議会や会見で質問されても、質問をはぐらかすという、凡そ市長にあるまじき姿勢を続けているのである。
このような事態に対して、山中氏を推薦した立憲民主党も支援した共産党も、単に市長を擁護する姿勢をとり続けるだけで、疑惑に説明責任を果たすこと、市議会でまともな答弁を行うことに対しては、何ら努力を行う気配も見えない。逆に、市長特別秘書として立憲民主党職員を送り込んで自民・公明両党の反発を受けている有り様だ。
「野党共闘による選挙での勝利」によってもたらされたのが、このような“横浜市の惨状”であることを知れば、多くの国民にとって、「政権交代」への希望は急速にしぼんでしまうことになるであろう。
市長選「圧勝」が招いた「最悪の結果」
江田氏も【前記記事】で述べているが、コロナ感染爆発下での、菅政権へのコロナ失政への怨嗟の声を追い風に、
「山中さんは候補者のうち唯一のコロナの専門家。感染爆発を抑え込み、医療崩壊をくい止められるのは山中さんだけ」
というような詐言(多くの人が「感染症医学の専門家」という意味で理解したが、山中氏は、「横浜市大医学部教授」ではあったが、医師でも医学者でもない、医療「統計」の専門家に過ぎない)が功を奏し、投票日直前には、山中氏の「市長選圧勝」が確実な状況となった。
私は、投票日の8月22日午後に出したブログ記事《【横浜市長選挙】山中竹春候補「圧勝」が立憲民主にもたらす“最悪の結果”》で、
横浜市長選での野党共闘候補山中竹春氏が「圧勝」しても、早々に「市長不適格」が明らかになれば、コロナ禍に立ち向かうべき横浜市政の混乱を招き、立憲民主党への国民の期待を急速に失わせる。それによって、野党第一党の同党が、自公政権に替わる「政権の受け皿」にはなり得ないことが露呈するという「最悪の結果」に終わることになりかねない。
と述べた。
今まさに、その「予言」が現実のものとなろうとしている。
江田氏の落選運動に関しては、市長選挙での山中氏擁立に表れた、「民主的手続」や議論を無視した強権的手法、事実を隠蔽するためのマスコミ工作、正確な説明・理解を避け、「言葉のイメージ」で訴求する選挙活動、そして、その根底にある、徹底した有権者「愚民」視の発想などについて、2000年に自民党公認候補として菅義偉氏の全面支援を受けて初出馬して以降、数々の政党を作っては壊してきた遍歴も含めて、述べていきたいと考えている。
江田氏の小選挙区である神奈川8区(横浜市青葉区、緑区、都筑区の一部)の有権者の方々には、今回の選挙で江田氏に投票することで、「健全な民主主義」が損われかねないことを認識した上で、投票に臨んでもらいたい。
落選運動の具体的方法と「個人としての協力」
今回の甘利氏、江田氏の落選運動でも、ブログ、YouTubeによる発信、夕刊紙風チラシのホームページへのアップによる拡散、インターネット広告など、横浜市長選挙で用いた方法を使用していきたいと考えている。
公職選挙法は、当選を得若しくは得しめる目的で行われる「選挙運動」と並んで、「当選を得しめない目的」で行われる「落選運動」を想定しているが(221条)、「落選運動」については、ウェブサイトやメールによる場合の落選運動者のメールアドレスの表示義務が定められている外に、時期・方法についての制限は規定されていない(投票日当日も可能)。
ただし、落選運動が、他候補の「当選を得させる目的」で行われた場合は選挙運動としての規制を受けることになるし、「団体としての活動」は、選挙期間中は行えない。
しかし、私の落選運動は、あくまで、私個人が行うものであり、それに個人として協力することに対しては、特に制限はない。私個人の落選運動が、多くの個人の「落選運動」に波及し、大きな力になることを期待したい。