甘利氏・江田氏の落選運動を振り返る ~政党内の「権力者」にNO!を突き付ける機会は選挙しかない

 

 横浜市長選挙での山中竹春氏と小此木八郎の落選運動に続いて、今回の衆議院議員選挙では、神奈川8区の江田憲司氏と13区の甘利明氏の落選運動を行った(【神奈川13区(自民)「甘利幹事長」と同8区(立憲)「江田代表代行」の落選運動で、“健全な民主主義”をめざす!】)。

 いずれも、与党系、野党系各1人を対象としたが、いずれも、それぞれ、私なりに「当選させてはならない」と考える理由があったわけであり、単なる数合わせではない。ただ、特に、今回のような国政選挙における落選運動では、特定の党派への支持のためではなく、政治家個人に着目した落選運動であることを明確にする上でも、与野党両方の候補者を対象にしたことには意味があったのかもしれない。

 公職選挙法は、当選を得若しくは得しめる目的で行われる「選挙運動」と並んで、「当選を得しめない目的」で行われる「落選運動」を想定しているが(221条)、「落選運動」については、ウェブサイトやメールによる場合の落選運動者のメールアドレスの表示義務が定められている外に、時期・方法についての制限は規定されていない。

 今回も、落選運動の主たる手段にしたのは、横浜市長選挙の時と同様の「夕刊紙風チラシ」だった。ブログやYouTubeでの発信も、最大限に行ったが、どうしても、それを見てくれる人の範囲は限られる。選挙区の有権者への訴求力という面では限られる。そういう意味では、多くの人に関心を持ってもらい、それを、直接有権者に届ける方法としてのチラシの活用は効果的だ。

 以下が、そのチラシの画像だ。

 

 このチラシを、私のホームページにアップして、誰でも自由にダウンロードして印刷してもらえるようにした。

 ダウンロードはこちらから➡ https://www.gohara-compliance.com/information

 内容は、ほとんどが、私が個人ブログ等で指摘していることだが、紙面の編集はプロの編集者に依頼しており、色使いも見出しのフレーズも、かなり派出な仕上がりになっている。

 このようなチラシに対して、少し下品ではないか、「怪文書」のように見られるのではないか、という見方もあった。しかし、日頃からブログ、YouTubeなどで発信していることを、落選運動では、当該選挙区のできるだけ多くの有権者に見てもらう必要がある。そのためには、目を引くような外観にすることが必要だ。そういう意味では、見出しや色使いをある程度ドギツイものにした方が効果的だというのが編集者の判断だった。もちろん、公選法上も義務付けられている発行人である私の氏名は明示しているし、メールアドレスも記載している。内容も、私が、相応の根拠に基づいてブログ等に記載していることを述べているものであり、決して「誹謗中傷」などではない。

 そういう意味で、このような「夕刊紙風チラシ」を落選運動に用いていくことが適切だと判断した。

 問題は、それを、どうようにして各選挙区の有権者に拡散していくかだった。

 落選運動の趣旨に賛同し、個人的の意思で選挙区内にチラシのポスティングをしたいと申し出てくれた人には、私の事務所で印刷してお渡しした。また、チラシの拡散のための新聞折込、ポスティング、インターネット広告などの費用について寄付を募集したところ、多くの方から寄付をして頂いたので、それを効果的拡散に活用すべくいろいろ手を尽くしたが、こちらの方はかなり難航した。新聞折込は、広告代理店の多くから拒絶され、1社だけ受けてくれそうだったが、新聞販売店が拒絶した。落選運動が社会的に認知されていないことを痛感した。

 そこで、「便利屋」に依頼してポスティングを行おうとしたが、1万枚程度の大量の印刷を、印刷業者に発注しようとしたところ、選挙の関係で印刷業務が立て込んでいるらしく、納期が、いずれも投票日後になるということで、やむなく、事務所のコピー機でまるまる3日間、深夜までプリントアウトを続け、便利屋によるポスティングの必要部数を印刷した。

 私の事務所で印刷した部数だけでも、各選挙区で1万部以上に上る。個人で印刷してくれてポスティングされた部数を加えれば、相当な部数の選挙区内での配布ができた。

 かなり派手な「夕刊紙風チラシ」がポスティングされたことに対して、一部からは反発の声もあるかとも思ったが、実際には、「一昨日ポストを見ると下品なチラシが投函され大変な憤りを感じております。そもそもこのチラシは電話番号も書いていないので違法ですよ。」という苦情のメールが1件届いただけだった。

 それに対しては、すぐに、以下の返信をした・

今回の落選運動は、私が個人で行っているもので、チラシは、ホームページで公開し、内容に賛同して頂ける方に自由に使用して頂いています。

体裁を夕刊紙風にしているのは、少しでも多くの方々の目に留まるように、私なりにコストをかけて作成を依頼したものですが、下品と言われれば、致し方ありません。落選運動に賛同して頂いた多くの方々から、このチラシを少しでも多くの有権者の方々に拡散してほしいとの趣旨でご寄付を頂いたので、チラシのポスティングに活用させて頂いています。

落選運動に関する公選法の規定に従い、ご異議や反論がある方にはメールで連絡頂けるようアドレスを表示しております。電話番号を表示することは法律上は必要ありませんが、私の法律事務所(郷原総合コンプライアンス法律事務所)の電話番号は公開しておりますので(代表03-5775-0654)、いつでも、ご連絡ください。

チラシの記載内容等に疑問点や問題点などありましたら、遠慮なく、メールででも電話ででも、ご連絡ください。

 それ以降、チラシの件については、このメールの方からも、他の方からも、一件も連絡はない。

 もう一つ、寄付を落選運動用チラシの拡散に使ったのがインターネット広告だ。 フェイスブックで、神奈川8区、13区の地域限定で、チラシを拡散する広告を行った。 

 今回の落選運動では、このようなチラシの拡散に加えて、私自身が、各選挙区で、落選運動街頭演説を行った。この街頭演説は、横浜市長選挙でも行うことを考えたが、そこでネックになるのが、「選挙期間中の団体としての政治活動の禁止」との関係だった。公職選挙法では、選挙期間中は、政党の政治活動と、無所属候補者等を支持する「確認団体の政治活動」以外は、団体としての政治活動が禁止されている。落選運動は、政治活動の一つであり、個人として行うことについての制約は、上記のメールアドレス表示義務以外にないが、選挙期間中は「団体としての落選運動」を行うことはできない。あくまで、落選運動の主体である個人が、単独で行うことに限られる。

 そのため、通常、候補者の選挙活動で行うような、選挙カーの壇上から演説したり、街頭で、多数の支援者が横断幕やノボリを掲げたりビラ配りをするというような「団体による活動」ができない。

 横浜市長選挙の際は、一旦、立候補意志を表明していたこともあり、支援者、ボランティアの人達も相当数いたが、そのような人達を動員して行う街頭での活動ができないので、街頭演説は断念し、夕刊紙風チラシの活動にしぼった。

 今回は、新聞折込ができなかったこと、ネット広告も審査に時間がかかり、立ち上がりが遅れたことなどもあって、何とかリアルでの活動も行うことができないと考え、選挙期間の最終日の10月30日の土曜日に、神奈川8区では、たまプラーザ駅前と青葉台駅、神奈川13区では大和駅と海老名駅で、街頭演説を行った。

 あくまで、個人として行うものという制約があるので、「江田氏(甘利氏) 落選運動」と書いたタスキをかけ、自立式のノボリ立てを準備し、「江田氏(甘利氏)を当選させてはならい」と書いたノボリを立てて、脚立の上に乗って。街頭演説を行った。

たまプラーザ駅・青葉台駅で江田氏の落選運動の演説
大和駅・海老名駅で甘利氏の落選運動の街頭演説

 街頭演説の現場では多くの人から声を掛けてもらった。甘利氏が、直近の街頭演説で、「落選運動」について、どのようなことを言っているのかについて情報を提供してくれた人もいた。海老名駅の街頭には、私とは無関係に甘利氏の落選運動を行っている高齢者の方がいて、私の演説の後にマイクを渡し、演説をしてもらった。

 初めて、選挙区の現場での活動を体験したのは、いい経験だった。各街頭で、それぞれ有権者の反応があった。いずれの場所も駅周辺の人通りの多いところだったが、その中に、私の話を聞いて足を停め、聞き入ってくれる人がいる。その人達が、私の話に反応してくれる。それによって、「有権者に訴える」という気持ちが高まっていく。街頭演説というのは、こういうものなのかなと思った。

 では、このような落選運動が、2人の選挙にどういう効果を生じたのか。

 今日の投票結果を見なければ、確かなことはわからないが、私は、かなりの影響を与えることはできたのではないかと思う。

 神奈川13区の甘利氏については、自民党幹事長として全国の公認候補の応援に回っていたのに、落選危機が報じられて、急遽地元に張り付いていると報じられた。私が夕刊紙チラシで、あっせん利得疑惑についての説明責任を全く果たしていない甘利氏が自民党幹事長のポストに就くことについて、具体的に問題を指摘し、選挙区の有権者に訴えたことは、そのような甘利氏の「落選危機」に少なからずつながったのではないかと思う。

 幹事長が本来選挙で果たす役割を投げ出して、地元に張り付かざるを得なくなった甘利氏は、私の街頭演説の場に来てくれた人が提供してくれた動画を見ると、街頭演説の中で「誹謗中傷は犯罪」などと言った後に、「落選運動」という言葉を出し、「選挙妨害」などと言っている。私の「落選運動チラシ」が、誹謗中傷、選挙妨害だと言いたいのかもしれない。そうであれば、具体的に、何がどう誹謗中傷、選挙妨害なのかを明らかにしてもらいたい。

 江田氏は、10月28日のBSフジの番組で、「金融所得課税をNISAにもかける」などと誤った発言をして訂正・謝罪に追い込まれた。その背景にも、選挙区で展開されている落選運動に対する江田氏の焦りがあるのかもしれない。

 昨日の街頭演説の冒頭で、落選運動の意味について話をした。

 日本の公職選挙は、基本的には、政党中心であり、有権者も「どの政党に投票するか」「どの政党の公認・推薦の候補に投票するか」ということで投票を考える人が大部分だ。国政選挙の場合、基本的には、各政党の当選者数という「数の比較」の問題なので、基本的には、それで十分なのだろう。しかし、それでは済まない問題がある。それは、その候補者の当落が、単なる当選者の数の問題ではない意味を持つ場合である。政党の中で、大きな権限を持ち、国政全体に大きな影響力を与えるようなポストに就いている候補者の場合、その候補者の当落や得票は、そのような権限を行使することの是非の判断にもつながる。

 政党の公認、推薦が、公正、適正に行われ、政党への政治資金の配分も客観的に行われているのであれば、特に問題はない。しかし、実際には、政党内部で、政治家の世界で行われていることは、極めて不透明な、「猿山のボス争い」のようなものであることが珍しくない。政党内部で公職の候補者の選定や政治資金の配分等に大きな権力を持つ政治家が、信頼に値する人物でないということは、しばしば起き得ることだ。そういう特定の政治家に対してNO!を突き付ける唯一の機会は、その政治家が立候補した選挙なのだ。

 今回、私が行った落選運動は、まさに、そのような観点からの与野党の内部で大きな権力を持つ政治家に関して、有権者に事実を伝え、それを踏まえて選挙での選択してもらうことを目的とするものだった。

 公職の候補者の選任、政治資金の配分などについての政党内部での決定が不透明極まりなく、民主的なプロセスを経ていない現在の日本の政治状況の下では、落選運動は、極めて重要な意味を持つ。今回の衆院選で、自分なりに懸命に落選運動を行った私が、多くの人に伝えたいことである。 

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甘利氏・江田氏の落選運動を振り返る ~政党内の「権力者」にNO!を突き付ける機会は選挙しかない への2件のフィードバック

  1. 酒井義博 より:

    大変意義深い行動を高く評価いたします。
    今後とも力強い正義のご活躍をお祈りいたします。

  2. 秋沢陽吉 より:

    数々のまさしく法と正義に基づいた弁護活動。コンプライアンスの考え方に基づく実践活動。現実の法的問題に対するメディアに流れる誤った報道を正しい方に導く啓蒙活動。大いなる敬意を抱いておりました。この度の落選運動をたった一人で実践し、日本に新たな道を切り開かれたことに驚嘆しております。市民として人間として正しくあるためには社会の不正義を正さなければならない。権力であろうとも正義を貫かんとする姿勢は素晴らしいと思います。地獄のような日本に希望を指し示していただきました。ありがとうございました。

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