バス事故に関する国交省の監督行政の問題

昨日の記者レクでも、バス事故に関する国交省の監督行政の問題を取り上げました。「安全と競争の関係」という極めて重要な問題が背景にあると思います。

私も総務省顧問としてこの問題に関する行政評価に関わっただけに、今回の事故は本当に残念です。どう考えても控訴審で覆るとは思えない小沢無罪判決のことで、いつまでもグダグダ言っているより、貸切バスの問題等「安全と競争」に関する行政の問題を考える方が重要だと思います。

2010年2月に総務省で開催された行政評価機能強化検討会の議事録中の「安全確保のための行政」の問題に関する私の発言部分を抜粋してアップしました。


平成22年2月17日開催、第1回行政評価機能評価検討会議事録から抜粋]

【郷原顧問】 行政評価の機能を抜本的に強化するということであれば、聖域を設けないことが絶対に重要だと思うんです。今まで聖域と考えられていたような業務、先ほど防衛省の作戦業務は作戦の当否を評価することはできないという話がありましたけれども、それはもちろんそうなんですが、例えば検察庁の業務で言えば、事件処理の当否は評価の対象にはならないと思いますが、どういうリソースをどういう業務に振り向けるかというのは、検察庁も行政ですから当然、行政評価の対象になるはずです。
そういう面で考えますと、資料4の4ページの「貸切バスの安全確保」という件について相談を受けたんですが、貸切バスについて重大な事故が発生して、違法行為が後を絶たない状況にあって、行政処分も行われているけれども、なかなか危険な状態が解消できない。そういう場合に、刑事告発を行って罰則適用をする必要があるのではないかということが検討されています。
しかし、今までの行政と検察との関係から言いますと、罰則適用というのは行政からの告発ではほとんど行われていません。結局、事案の重大性、悪質性に応じて行政処分のレベル、最終的には罰則適用というものがシステムとして整っていないと、効果的、実効的な行政はできないはずなんですが、罰則適用の部分は刑事司法の問題だということで、最初から聖域化してしまっているために、行政としての効率性・有効性という発想がないんです。
改めて、検察もそういう部分においては行政なわけです。個別の事件の処理は検察固有の業務ですけれども、どういう法分野に対してどういう体制で臨んでいるのか、実際にどういう実績を-19-上げているのか、そこできちんと行政庁との擦り合わせができているのかという観点から、行政としての評価をしていくことによって、かえって行政のリソースの効率化にもつながると思いますし、エンフォースメントの強化も図れるんじゃないか。そういったところにも、従来聖域と考えていた領域にやるべきことが含まれているんじゃないかと思います。
【郷原顧問】エレベーターの安全の問題をお話ししたいと思うのですが、2006年に港区でエレベーター事故が起きて、非常に悲惨な犠牲者が出た。あの事故に関しては、警察による事故原因の究明がなかなか行われないで、そのためにずっと行政の対応が遅れてしまって、エレベーターの安全対策が遅れたということが既に問題になっているんですが、より根本的な問題として、そもそもエレベーターというのは、建築基準法の枠組みの中で、国交省の住宅局建築指導課などという部署で所管することに適しているのかという問題があると思います。
建築基準法は、階段とかドアという構造物をいかに安全に造るかということには向いていますけれども、エレベーターのような高度なメカトロニクス機器をどうやって安全に設置して、どうやって維持管理していくのかということには全く向いていません。しかも、そういったことに関する専門知識を持った要員は、ほとんど国交省の住宅局にはいない。2年ぐらいでどんどん入れかわってしまう。結局、そういったことが国際的な安全基準を実現する上でもマイナスになり、事故原因の調査に関しても当事者意識を欠いてしまうことにつながる。
こういう問題を根本的に解決しようと思えば、建築基準法という枠組みの中にエレベーターの問題が入っていること自体を見直さないといけない。そういうことはどこも言い出さないんです。むしろ、人を運搬する機器という面では国交省の乗り物を所管する部門の問題かもしれませんし、メカトロニクス機器という面では経産省の所管のほうが適当なのかもしれない。エレベーターの安全を実現するためにどこの省庁が担当するべきなのか、改めて根本的に見直さないといけないという問題が、まずエレベーターの問題だと思います。

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弁護士
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