参院本会議代表質問、安倍首相「投了」に追い込めるか~「桜を見る会」問題、国会は最大のヤマ場に

 本日(12月2日)午後1時から参議院本会議で開かれる代表質問が、今臨時国会で安倍晋三首相が野党から直接質問を受ける最後の場となる。

 代表質問なので、一問一答形式の委員会とは異なり、何回も質問と答弁の応酬を繰り返すのではないが、代表質問に対する内閣総理大臣の答弁に対しても、与えられた質問時間の範囲内で2回まで再質問(参議院規則110条)を行うことが可能だ。

 【「桜を見る会」前夜祭、安倍首相説明の「詰み」を盤面解説】で「将棋の盤面」を用いて解説したように、前夜祭における公選法違反、政治資金規正法違反に関する安倍首相の「説明」は、完全に「詰み」の状態である。

 しかも、11月29日の「桜を見る会」追及本部法務班でのヒアリングでも説明したように(ビデオニュース【「ホテルが直接領収書を渡した」は嘘 ?!追及本部が郷原弁護士を招き公開ヒアリング】)、安倍首相が、ホテルニューオータニ側に説明を押し付けるという最悪の「一手」(6七玉)を打ったのに対して、この問題に対する「追及」で、

安倍首相夫妻、事務所、後援会関係者は、夕食会の参加費をホテルに支払ったのか

という質問を行うことで、安倍首相側には、後援会の政治資金収支報告書に

支払ったと言えば、主催者の後援会側の「支出」、支払っていないと言えば、ホテルニューオータニから後援会への「寄附」

の記載義務があったことになり、政治資金規正法違反が否定できなくなる。

 安倍首相がまともに答弁しなければ、再質問も可能なはずだ。

 つまり、「5五金」を、「6六金」と動かす「一手」だけで詰む「一手詰め」なのである。

 この点は、先日のヒアリングで、野党の追及本部の議員に、十分に説明した。

 今日の参議院本会議での代表質問で、野党側がこの「一手」を打って、「桜を見る会」前夜祭の問題を、安倍首相の「投了」(安倍晋三後援会の政治資金収支報告書訂正の必要性を認める)で終わらせることができるかどうかが、最大の注目点となる。

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「桜を見る会」問題、「詰んでいる」のは安倍首相の「説明」~「検察が動かない」理由とは

今週水曜日(11月27日)に投稿した【「桜を見る会」前夜祭、安倍首相説明の「詰み」を盤面解説】で「桜を見る会」問題に関する安倍首相の「説明」の問題点を全体的に解説したのに対して、大きな反響があった。将棋の「盤面」を用いて、解説したことで、公職選挙法、政治資金規正法上の問題点はかなり理解されたように思える。

 その翌日の28日、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」の「玉川徹のそもそも総研」でも、「『桜を見る会』前夜祭、安倍総理 法的問題はないのか」が取り上げられ、インタビュー録画で出演した私が「詰んでいる」という表現で、この問題について安倍首相が「説明不能」の状況に陥っていることを指摘した。

 そして、11月29日朝、野党の「『桜を見る会』追及本部法務班」のヒアリングに出席し「盤面解説」を用いて、公選法、政治資金規正法との関係で、安倍首相の説明が「詰んでいること」を説明した(ビデオニュース【追及本部が郷原弁護士を招き公開ヒアリング】)

 しかし、一つだけ、私の指摘の趣旨が正しく理解されていない点がある。「この問題は検察が動くことはないと思う。完全に政権に飼いならされてきた検察に、問題の違法・犯罪の疑いを取り上げる意思があるとは到底考えられない。」との発言の趣旨だ。その後、ツイッター等で、「安倍首相の違法が明白なのに、なぜ検察は動かないのか。」という声が寄せられているが、私が、「詰んでいる」と指摘するのは、安倍首相の「説明」の問題であり、事実としての法違反が明白になっているという趣旨ではない。「検察は動かない」と言っている趣旨も正確に理解されているとは思えない。

 私の「将棋の盤面」を用いた解説の前提とその趣旨を改めて整理しておこうと思う。

 第1に、私が「詰んでいる」と言っているのは、一連の「ぶら下がり会見」などでの「安倍首相の説明」のことだ。苦しい言い逃れを重ねた末に、自ら窮地に陥り、「違法ではない」という説明ができない状況に追い込まれているということを言っているのである。

 だからこそ、「公選法違反」、「政治資金法違反」、「世論の批判」という敵の駒の動きに対して、「安倍王将」が「駒」としてどのような「動き」をしてきたのかを解説しているのである。

 安倍首相にとっての「桜を見る会」前夜祭をめぐる「違法行為」として、現実的に考えられるのは、(1)安倍後援会が、地元有権者への寄附を行った公選法199条の2第1項違反と、(2)前夜祭の主催者としての後援会が、政治団体としての政治資金収支報告書を正しく記載していなかった問題である。

 前者の法定刑は、「50万円以下の罰金」、後者は、政治資金収支報告書を訂正すれば足りるレベルの問題である。

 しかし、「罰金50万円以下」であっても、後援会関係者が公選法199条の2違反を犯したということになると、現内閣で、菅原一秀氏が同じ罰則の違反の問題で辞任に追い込まれていることもあり、総理大臣の進退問題につながりかねない。

 そこで、安倍首相は、自分自身も、安倍後援会も「一切違法な行為を行っていない」という説明を維持するために、「安倍後援会」側ではなく、ホテルニューオータニという、日本を代表するホテルを経営する企業の側に「説明」を押し付けようとし、その挙句、(安倍首相の説明どおりだとすれば)、内閣府からの受注業者であるホテルニューオータニからの利益供与、つまり寄附を受けることの政治資金規正法上の違法性(企業団体献金の禁止)や「贈収賄」の疑いすら生じさせた上、「説明不能」の「詰み」の状態に陥っているのである。

 安倍首相に、検察が本格的に捜査の対象にすべき「事実」が明らかになったと言っているのではない。安倍首相が、「自分も、後援会も、違法行為を行っていない」という「説明」をしようとして、かえって重大な違法行為があるかのような疑いを生じさせ、自ら墓穴を掘っているだけなのである。

 第2に、安倍政権になってからの政権側の政治家に対する検察の姿勢からすると、仮に、安倍首相自身、或いはその秘書や後援会などに「重大な犯罪の嫌疑」があったとしても、検察が動くとは考えられないという「安倍政権と検察の関係」の問題がある。甘利明氏、小渕優子氏ら有力政治家の刑事事件に対する特捜部の捜査の姿勢(【特捜検察にとって”屈辱的敗北”に終わった甘利事件】)や森友学園の事件での籠池夫妻に対する捜査の姿勢(【検察はなぜ”常識外れの籠池夫妻逮捕”に至ったのか】)と財務省側に対する捜査との比較などから考えても、検察が安倍政権に飼い慣らされているように思える。

 検察の現状を考えれば、いかに重大な犯罪の嫌疑があっても、積極的に捜査をするとは思えない。公職選挙法違反、政治資金規正法違反事件、贈収賄事件などには、必ず何らかの証拠上、法律適用上の問題がある。検察の現場で積極的に捜査を行う方針であっても、上司・上級庁・法務省側から問題を指摘し、捜査の動きを止めることは可能だ。

 そういう意味では、「政治家に対する捜査」を、それなりの理由をつけて潰すことは、どのような事件でも可能なのである。ただ、それは、あくまで、安倍政権と検察との「一般的な関係」について言っているに過ぎない。今回の「桜を見る会」の問題については、検察が「重大な犯罪」の疑いを見逃そうとしていると言っているのではない。

 第3に、「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。」(憲法75条)として、国務大臣の訴追を拒む権限が総理大臣に与えられていることとの関係である。

 そもそも、総理大臣に重大な犯罪の嫌疑があり、検察に積極的な捜査で、その嫌疑を明らかにしようとしたとしても、最終的には、総理大臣の同意がなければ、総理大臣を起訴することはできない。総理大臣が自分を起訴することに同意するはずはないので、事実上、総理大臣は、在任中は、起訴されることはない。そういう意味で、検察の起訴によって、総理大臣がその職から引きずり降ろされるということは、あり得ないのである。

 しかし、この憲法75条の規定で、総理大臣が、自らの犯罪の嫌疑について、在任中、訴追を拒否することができるというのは、一方で、総理大臣自身に犯罪の嫌疑が生じた時には、重大な説明責任が生じるということになる。犯罪の嫌疑について合理的な説明が十分に行われることがなければ、訴追は免れても、「政治的責任」を免れることはできないのである。

 そういう意味では、第1で述べた、「桜を見る会」前夜祭についての安倍首相の「説明」が、「詰んでいる」、すなわち、「違法性は全くない」ということについて安倍首相自らが説明した内容を前提にすると、「違法ではないという説明ができない状況に追い込まれている」という現状は、憲法75条との関係からも、内閣総理大臣にとって「致命的」と言えるのである。

 以上のような、私が「安倍首相の説明」が「詰んでいる」と言っている趣旨は、上記の【ビデオニュース】に収録されたヒアリングでの私の解説全体を見て頂ければ、十分に理解してもらえるはずだ。

 「桜を見る会」をめぐる問題については、安倍首相の「説明」が「詰んでいる」のに、「検察が動かない」という話ではない。検察が動くかどうかとは関係なく、安倍首相自身の「説明」が「詰んで」いて「説明不能」であることそれ自体が、総理大臣にとって重大な問題なのである。

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「桜を見る会」問題の本質~安倍首相説明の「詰み」を盤面解説

11月16日の土曜日の朝、【「桜を見る会」前夜祭 安倍首相の「説明」への疑問~「ホテル名義の領収書」の“謎”】で、「桜を見る会」前夜祭に関する法的問題を指摘した。翌週月曜日、安倍首相の「ぶら下がり」会見で「説明」したことに対して、【「ホテル主催夕食会」なら、安倍首相・事務所関係者の会費は支払われたのか】【最終盤を迎えた「桜を見る会」安倍首相“詰将棋”、「決定的な一手」は】と、さらに問題を指摘し続けたところ、安倍首相は、それ以降、「ぶら下がり会見」での説明は一切行わなくなった。それに代わって、菅義緯官房長官が、連日、内閣委員会での答弁や、定例会見での質問への対応を行っているが、菅氏の「説明」は完全に「破綻」している。それは、「桜を見る会」前夜祭に関して、安倍首相が「説明不能」の状態に陥ったということであり、将棋に例えれば、完全に「詰んだ」と言える。

 安倍首相の「桜を見る会」前夜祭に関する「説明」がなぜ詰んだと言えるのか。「将棋の盤面」の喩えで考えてみよう。

「桜を見る会」追及が始まった時点での盤面

 まず、「桜を見る会」についての追及が始まり、前夜祭の問題に及んだ時点の盤面が《盤面1》(著者作成、以下同様)である。

《盤面1》

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 「5八」に位置する安倍首相の「玉(ぎょく:王将)」を守る駒として、「3七」の位置に安倍後援会の「金」(斜め後方以外の場所に1マス動かすことができる駒)、「7六」の位置にホテルニューオータニの「銀」(左右と後方以外の場所に1マス動かすことができる駒)という「二つの駒」があった。

 安倍後援会が、安倍首相の指示どおりに動くのは当然であり、ホテルニューオータニも、絶大な政治権力を持つ安倍首相にとっては、動かすことが容易な「駒」だったであろう。

 当初は、前夜祭の夕食パーティーの1人5000円という会費が安過ぎるのではないか、実際にはもっと高く、その差額を安倍後援会が補填しているのではないか、そうだとすると、安倍首相の地元の支援者が多数参加している夕食会は、有権者に対する利益供与(公選法違反)に当たるのではないか、が問題にされた。

 この段階で、安倍首相が強く意識したのは、「公選法違反」の問題であった。直近で、同じ有権者に対する利益供与の問題で、菅原一秀氏が、就任間もなく経済産業大臣を辞任していたこともあって、公選法問題は、総理大臣辞任につながりかねない重大リスクであった。《盤面1》上の「敵の駒」としては、敵陣「2二」の位置にある「飛車」(縦横どこまででも動かせる駒)であった。

 しかし、「桜を見る会」前夜祭に関するリスクはそれだけではなかった。政治団体である安倍後援会が深く関わっていることは明らかであり、それについて、収支が発生していれば、政治資金収支報告書に記載しなければならない。しかし、その収支報告書には、過去に、「桜を見る会」前夜祭の収支が記載されたことはなく、収支の記載義務があれば、もろに政治資金規正法違反となる。《盤面1》で言えば「6二」の「香車」(きょうしゃ:前方にどこまでも走る駒)であった。

 そして、盤面の中央に位置する駒が、マスコミやネット上の安倍政権に対する批判の言論の「金」であり、これには、私自身も含まれる。

 つまり、《盤面1》の上で、「安倍王将」を守る駒が「後援会」(金)、ホテルニューオータニ(銀)、攻める方が、「公選法違反」(飛車)と「政治資金規正法違反」(香車)、そして、それらを背景とする言論(金)という構図だった。

安倍首相にとって最大の「悪手」だった「6七玉」

 そこからの盤面の動きを示したのが《盤面2》だ。

 まず、野党側の追及は、ホテルニューオータニの鶴の間でのパーティーは最低でも「一人11000円」とされていることなどから、前夜祭の夕食パーティーが有権者への利益供与の公選法違反に当たるのではないかという指摘だった。「2二飛車」は「2八飛車成り」で、一気に、「3七金」の安倍後援会に迫った。これによって「飛車」は「龍」(もともとの飛車の動きに加えて、斜め前方と斜め後方に1マス動かせる駒)となる。

《盤面2》

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 そこで、安倍首相側の意識は、公選法違反の「2八龍」の方に集中した。この局面で、安倍首相は、後援会側に動くことによる公選法違反のリスクを恐れ、反対のホテルニューオータニ側に都合の良い説明をさせる方針をとった。

 11月15日、「ぶら下がり会見」で

「すべての費用は参加者の自己負担。旅費・宿泊費は、各参加者が旅行代理店に支払いし、夕食会費用については、安倍事務所職員が1人5000円を集金してホテル名義の領収書を手交。集金した現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた。」

と説明し、18日の「ぶら下がり」会見でも、

「安倍事務所にも後援会にも、一切、入金はなく出金もない。旅費や宿泊費は各参加者が直接支払いを行い、食事代についても領収書を発行していない。」

と述べた。

 そして、安倍首相は、ホテルニューオータニ側が、1人5000円という会費の設定を行い、自ら参加者から会費を徴収したものだとして、「安倍後援会側に収支が発生しない」という説明をすることで、説明責任を、後援会ではなく、すべてホテルニューオータニ側に押しつけようとした。

 夕食パーティーの参加費の価格設定も会費の徴収もすべてホテル側が行うという、「ホテル主催の宴会」であるかのように説明したのである。そうすれば、安倍後援会は一切関与せず、収支も発生しないことになる。つまり、「3七金」の安倍後援会ではなく、「7六銀」のニューオータニの方に寄ろうとし、「6七玉」という手を指したのである。

 しかし、それが、安倍首相にとって、致命的な「悪手」(あくしゅ:形勢が悪化するような指し手)であったことは盤面上も明らかだ。

 18日の夜、私は、【「ホテル主催夕食会」なら、安倍首相・事務所関係者の会費は支払われたのか】と題する記事を出した。安倍首相が説明するとおり、ホテル側が会費の設定を行い、自ら参加者から会費を徴収するのであれば、安倍首相夫妻、安倍事務所、後援会関係者からも当然会費を徴収しなければならない。支払った場合は、安倍後援会としての支出が発生するので、後援会に政治資金収支報告書に記載がないことが政治資金規正法違反となる。逆に、支払っていない場合には「無銭飲食」になる。もちろん、その「無銭飲食」は、ホテル側が「被害届」を出さなければ「事件」にはならないが、それは、ホテル側が「無銭飲食」を見過ごし、その分の支払を免除することで、ホテルニューオータニという企業が、安倍後援会に企業団体献金を行ったことになる。

 安倍首相には、違法にならない「説明」の余地はない。

 「6六金」という「王手」(おうて:次に相手玉を取ることができる状態)だった。政治資金規正法違反の「6二香車」が効いており(玉で「金」を取ろうとしても、前方に一直線に動ける香車にとられてしまう)ので、「6六金」の王手で、完全に「詰み」なのである。

ニューオータニにとって最悪の「詰み」の盤面

 こうした、安倍首相が、致命的な「悪手」を打ったことの結末は、単なる「詰み」にとどまらない。

 翌11月19日朝に、私が出した記事【最終盤を迎えた「桜を見る会」安倍首相“詰将棋”、「決定的な一手」は】では、安倍首相が、ホテルニューオータニ側に便宜を図ってもらったような説明をすると、ホテルニューオータニが、安倍首相の職務権限による「何らかの見返り」を期待する関係にあった疑いが生じると指摘した。実際に、安倍首相が長を務める内閣府は、皇位継承に関連する行事に関して、都内の有名ホテルに多額の発注を行っており、ホテルニューオータニも、今年10月23日に、約1億7000万円の予算で開催された内閣総理大臣夫妻晩餐会を内閣府から受注し、「桜を見る会」前夜祭と同じ「鶴の間」で晩餐会が開催されている。

 ホテル側が、前夜祭の夕食パーティーで、参加していた安倍首相夫妻や事務所関係者から徴収すべき参加費を徴収しなかったとすると「利益の供与」であり、それは、安倍首相とホテルニューオータニとの「癒着・腐敗」の疑い、極端に言えば、贈収賄の疑いさえ生じさせることになる。

 《盤面3》が、安倍首相の「詰み」の最終の盤面である。「安倍王将」と「ニューオータニ銀」とがくっついて「癒着した」形での「詰み」という最悪の盤面となっている。

《盤面3》

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このような盤面のまま長期間放置されることは、日本の一流ホテルであるホテルニューオータニにとって、耐え難いことなのではないだろうか。今のところは、安倍政権が揺るがないとの前提で、「安倍王将」と「くっついた状態」に甘んじているのであるが、もし、安倍内閣が危うくなってきたと認識した場合には、企業のコンプライアンスという観点からの決断を迫られることになるだろう。

「桜を見る会」問題に関わった経緯とその後の展開

 私がこの問題に最初に関心を持ったのは、11月15日の夕方、【山口県からご一行、桜を見る会へ 首相夫妻と記念撮影も】と題する朝日のネット記事を見た時だった。

 それまでも、「桜を見る会」や前夜祭の問題について、野党が国会で追及していることは知っていた。しかし、私自身、2013年と2014年に、総務省年金業務監視委員会の委員長として「桜を見る会」に招待されて参加した際、広大な新宿御苑の中に大勢の人が集まっていて、飲食物もほとんどなく、ほとんど「儀礼」に近い「質素な会」という認識を持っていた。誰が招かれようと、特に騒ぐような問題ではないし、前夜祭の会費5000円が安過ぎるというのも、ホテル側の裁量の範囲内で価格設定されたと言われれば、選挙区内の有権者への利益供与を立証することも難しいだろうと思っていた。

 ところが、上記記事によると、「桜を見る会」の開場は午前8時半なのに、安倍後援会関係者は、午前7時ごろ、新宿御苑に向けて貸し切りバスでホテルを出発。「現地に着くと、手荷物検査もなくすぐに会場内に入れ、バラずしの弁当や焼き鳥などが振る舞われ、これらは繰り返し並べば何度ももらえた、酒やジュースなどは飲み放題だった」と書かれている。

 一体この待遇の違いは何だろう。本来、各界での功績、功労のあった人を慰労するというのが開催の趣旨のはずなのに、その趣旨に反し、安倍首相の地元の支持者・支援者の歓待を目的としているのではないか、という疑問を持った。

 その疑問をツイートしたところ、次のような返信があった。

郷原弁護士のツイートにしてはキレが悪いように思う。食べものにありつけなかったなどの思い出だけでなく、今回の件が法的に問題があるのかないのか分析してほしい。

 確かにその通りである。「食べ物にありつけなかったこと」はどうでも良い。開催の趣旨に反して、公金で安倍首相の地元の有権者を歓待することが目的になっているのであれば、何らかの法的な問題があるはずである。検察実務経験を有する法律家の私が行うべきことは、報道や安倍首相の説明から、法的な問題点の検討を行うことだと思った。

 それ以降、私は、立て続けに3つの記事を出し、公選法と政治資金規正法の関連から安倍首相の追及を行った。その結果、安倍首相の説明は、あっという間に「詰み」に至り、「桜を見る会」前夜祭について「説明不能」の状況に追い込まれたのである。

 安倍首相は、それ以降、前夜祭について、本会議の代表質問で、それまでの説明を繰り返した(前夜祭が「後援会主催」であることは認めた)以外は説明を全く行っていないし、野党側から衆参両院での予算委員会の開催を求められても、与党側が絶対に応じない。しかし、参議院規則38条は、委員の3分の1以上の要求があったとき「委員長は委員会を開かなければならない」と規定しており、少なくとも参議院で野党側の予算委員会開催要求に応じないことは違法となる。

 総理大臣という職にある以上、国会での答弁、記者会見でのマスコミ対応を行うことは不可欠なはずだ。しかし、説明が「詰んでいる」安倍首相には、それができない。このまま、予算委員会も開かず、記者会見も行わず、野党やマスコミから追及から逃げ続けることで、果たして、総理大臣という、日本という国の「王将」の立場を維持できるのだろうか。

「桜を見る会」問題は「安倍政権の支配構造の本質」に関わる問題

 「桜を見る会」の問題について、安倍支持者側からは、「政治が取り組むべき重要な課題が山積しているのに、なぜ『桜を見る会』などというくだらないことで大騒ぎしているのか。」というような声が聞かれる。確かに、一つの「行事」の問題だし、国費が投じられていると言っても予算の規模としてはそれ程大きくはない。しかし、この問題には、安倍政権による、日本の行政組織の支配構図と、安倍首相の「身内びいき」の姿勢という安倍政権の本質的な問題が端的に表れている。そして何より重要なことは、これまで「違法なことはやっていない」という安倍首相の唯一の「言い訳」が通用しなくなっていることである

 なぜ、本来、各界で功労・功績があった人達を慰労することを目的としているのに、功労者として招待された人間に対する接遇に気を遣うことはほとんどなく、一方で、安倍後援会関係者は、開場時刻前に何台ものバスで乗り付けて、ふんだんな飲食やお土産までふるまわれるのか。そこには、これまで、森友・加計学園問題でもしばしば問題とされてきた、安倍一強体制の下での「権力者への忖度」が影響しているのであろう。

 運営の実務を行う内閣府や官邸の職員には、「桜を見る会」が、安倍後援会側の意向で「地元有権者歓待行事」と化していることに違和感を覚えても、異を唱えることなどできない。傍若無人に大型バスで開場に乗り込んでくる安倍後援会側の行動を黙認するしかなかったのであろう。開催経費が予算を超えて膨張していったのも、後援会の招待者が増え、地元の参加者に十分な飲食の提供など歓待をしようとする要求に抵抗できなかった結果であり、内閣府等の職員達は、各界の功労・功績者の慰労という本来の目的との関係は気になりつつも、実際にはそれを考える余裕はなかったのであろう。

 そして、何と言っても、安倍首相の最大の「敗因」は、身内中の身内である「安倍後援会」側の「説明」によるのではなく、ホテルニューオータニという日本を代表するホテルを経営する企業の側に「説明」を押し付けようとしたことだ。森友問題では財務省に、加計学園問題では内閣府に「説明」を押し付けて、自らは「違法なことはやっていない」という言い分を通してきた。しかし、今回の問題では、安倍首相は、「身内」である安倍後援会を何とかして守ろうとした。その結果、「説明」を押し付け、泥をかぶってもらおうとしたのが、高いモラルが求められる一流ホテルのホテルニューオータニであったところに、森友・加計問題との最大の違いがあった。

 「桜を見る会」自体も、その前夜祭も、全体として、安倍首相の地元の有権者に対する、過度の接遇であることを否定する余地はない。問題はそれが、誰が誰の負担で行われたかである。「桜を見る会」は、内閣府等の担当職員の「権力者への忖度」によって国の負担で行われ、前夜祭は、安倍後援会又はホテルニューオータニ側が、自己の負担で行ったということになる。安倍後援会が負担することは、選挙区内の有権者に対する利益供与として公選法違反だが、その違法性のレベルは、同じ公選法違反でも、特定の選挙の当選を得る目的の買収と比較すれば、法定刑も低く、それほど重大なものとはいえない。一方で、内閣府からの受注業者であるホテルニューオータニからの利益供与、つまり寄附を受けることの政治資金規正法上の違法性(企業団体献金の禁止)は、「贈収賄」の疑いすら生じさせるものなのであり、その違法性の程度は比較にならないほど大きいといえよう。

 このような、「桜を見る会」をめぐる“基本的な構造”を、安倍首相自身が全く理解できていないところに、根本的な原因がある。

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「桜を見る会」安倍首相“詰将棋”、最終盤での「決定的な一手」は

先週金曜日の夕刻、安倍首相が、官邸での「ぶら下がり会見」で、

夕食会費用については、安倍事務所職員が一人5000円を集金してホテル名義の領収書を手交。集金した現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた。

と説明したことについて、土曜日(11月16日)の記事【「桜を見る会」前夜祭 安倍首相の「説明」への疑問~「ホテル名義の領収書」の“謎”】で、

「ホテル名義の領収書」が渡されたのであれば、その領収書の額面の金額に見合う支払いが、安倍事務所職員からホテル側に前もって行われたはずだ。

と指摘した。

週明け月曜日の朝、安倍首相は、再び「ぶら下がり会見」に応じた。

(毎日)「国会対応は党に任せている」桜を見る会 改めて首相釈明、主なやりとり】によると、安倍首相は、「領収書」に関して、

桜を見る会の前日の夕食パーティーについて、安倍事務所も後援会にも、一切入金、出金はございません。領収書を発行していないし、領収書を受け取ってもいない。

と答えた。

そして、その後、この点に関して、以下のようなやり取りがあった。

記者:領収書のことだが。

首相:ちょっとすみません、時間がありませんので、最後の質問にしてもらえますか。

記者:安倍事務所の方が受付で領収書を渡していたとのことだが、ホテル側から領収書をもらうためには先に支払いをしないといけないという指摘がある。先にホテル側に支払ったということは一切ないのか。

首相:それはありません。

記者:総理、一つだけ。

首相:ちょっとすみません、これ最後にしていただけますか。

 「先にホテル側に支払ったということは」という記者の質問に対して、安倍首相は「それはありません」と答えたものの、それに続く質問を、「これ最後に」で打ち切った。

 そして、この「ぶら下がり」で、安倍首相が、夕食パーティーについて、「安倍事務所も後援会にも、一切入金、出金はございません。領収書を発行していないし、領収書を受け取ってもいない」と述べた点について、私は、昨日夜の記事【「ホテル主催夕食会」なら、安倍首相・事務所関係者の会費は支払われたのか】で、以下のような指摘を行った。

ホテル側が主催する立食の夕食会であれば、安倍首相夫妻や事務所関係者、来賓も、参加者の人数に含まれる。これらの人達も、すべて自分で夕食会費を支払ったのだろうか。もし、後援会が支払っているとすれば、その分、その「桜を見る会」前夜祭に関する安倍後援会側の「支出」が発生する。支払っていなければ、安倍首相や関係者は「無銭飲食」をしたことになる。

 昨日の「ぶら下がり会見」を打ち切る直前の質問については、改めて、「本当に、支払っていないのに『ホテル名義の領収書』を受領したのか。事務所に確認したのか」という質問を受けることになるだろう。もし、安倍事務所側が本当に支払っていないとすると、ホテルニューオータニは、「支払を受けないで領収書を前渡しした」という重大なコンプライアンス上の問題を抱えることになる。

 安倍首相は、夕食パーティーが「ホテル主催」であったかのような説明を続けるのだろうか。そうなると、「ホテル主催の夕食パーティーなら安倍首相や事務所関係者の支払はどうなったのか」との新たな疑問に、どう答えるのであろうか。前日の「安倍事務所も後援会にも、一切入金、出金はございません」という答えを撤回することなく、説明をすることが可能なのだろうか。

 加計学園問題では、(安倍首相への「忖度」で利益を受けたことが疑われた)安倍首相の親友の加計孝太郎氏が、「説明」から逃げ続けた。

 森友問題では、(安倍首相の意向を「忖度」した疑いがある)財務省が、「説明」の矢面に立たされ、自殺者まで出た。「忖度」される立場だった安倍首相は、直接の「説明」から逃げることができた。

 しかし、今回の「桜を見る会」の前夜祭パーティー問題は、安倍首相と、その後援会が直接の当事者である。安倍首相は、「説明」から逃げることができない。盤面の展開が殊の外早いのはそのためだ。

 官邸で「番記者」に囲まれて、慌ただしく都合の良いことだけを述べる、ということを繰り返してきた安倍首相だが、その表情には、徐々に「余裕のなさ」が目立ってきている。それは、この問題をめぐる「詰将棋」が、“最終盤”に差し掛かっていることを示しているようにも思える。

 安倍首相や後援会が、ニューオータニ側に「値引き」や「領収書前渡し」の便宜を図ってもらったことを強調し続けると、さらに「決定的な一手」となる質問が待ち構えている。

 それは、ホテルニューオータニが、安倍首相の職務権限による「何らかの見返り」を期待する関係にあったのではないか、ということだ。

 具体的には、次のような質問だ。

ホテルニューオータニに対して、「首相官邸や内閣府からの発注」は行われていないのか。

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「ホテル側主催」であれば、安倍首相・後援会関係者は会費を支払ったのか

 安倍首相は、本日(18日)午前10時ごろ、総理大臣官邸に入る際、記者団の取材に応じ、「懇親会などについて証拠を示して説明すべきだという指摘が出ている。」と問われたのに対し、「安倍事務所にも後援会にも、一切、入金はなく出金もない。旅費や宿泊費は各参加者が直接支払いを行い、食事代についても領収書を発行していない。」と述べたとのことだ(NHK)。

 15日の「ぶら下がり会見」では、「安倍事務所職員が1人5000円を集金してホテル名義の領収書を手交した」と説明していた。そうであれば「ホテル名義の領収書」が事前に安倍事務所側にわたっていたことになる。ニューオータニのような一流ホテルが、支払いを受けてもいないのに領収書を発行して交付することはあり得ないのではないかというのが、前の記事【「桜を見る会」前夜祭 安倍首相の「説明」への疑問~「ホテル名義の領収書」の“謎”】での指摘だが、その点について安倍首相は答えていない。

 安倍首相の説明によると、夕食会は、ホテル側が主催し、ほとんどが宿泊者であることを考慮して、夕食会費を1人5000円と決め、個別にそれを集金したもので、安倍事務所側は、会費を集金して領収書を交付するという事務を手伝う以外は関与していないということになるが、懇親会に出席した参加者全員が、個別に、(安倍事務所職員を通してかもしれないが)1人5000円の飲食費をホテル側に支払ったということになると、その夕食会費を支払うべき「参加者」には、安倍首相夫妻や事務所関係者、来賓も含まれるはずだ。ホテル側が主催する立食の夕食会であれば、これらの人達も、夕食会に参加する以上、飲食をしようとしまいと、参加者の人数に含まれるのは当然だ。

 これらの人達も、すべて自分で夕食会費を支払ったのだろうか。もし、後援会が支払っているとすれば、その分、その「桜を見る会」前夜祭に関する安倍後援会側の「支出」が発生する。支払っていなければ、安倍首相や関係者は「無銭飲食」をしたことになる。

 この疑問に、安倍首相は、どう答えるのであろうか。

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“桜を見る会前夜祭”安倍首相の「ホテル名義の領収書」説明への疑問

今年の「桜を見る会」の前日にホテルニューオータニで開かれた前夜祭について、安倍首相は、昨日、「すべての費用は参加者の自己負担。旅費・宿泊費は、各参加者が旅行代理店に支払いし、夕食会費用については、安倍事務所職員が1人5000円を集金してホテル名義の領収書を手交。集金した現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた。」と説明し、少なくとも2017年分までの安倍総理に関係する政治団体の収支報告書に“前夜祭”の収支について記載がないことについては「収支報告書への記載は、収支が発生して初めて記入義務が生じる。ホテルが領収書を出し、そこで入ったお金をそのままホテルに渡していれば、収支は発生しないため、政治資金規正法上の違反にはあたらない。」と述べたそうだ(テレ朝ニュース)。

この「説明」には、いくつかの疑問と問題点がある。

「ホテル名義の領収書」と代金支払いの関係

最大の問題は、安倍事務所職員が参加者から集金して「ホテル名義の領収書」を渡したとされている点だ。

少なくとも、ニューオータニほどのホテルが、実際に金銭を受領していないのに「ホテル名義の領収書」を渡すことはあり得ない。「ホテル名義の領収書」が渡されたのであれば、その領収書の額面の金額に見合う支払が、安倍事務所職員からホテル側に前もって行われたはずだ。

会の参加者の人数が予め確定しているのであれば、その確定額を安倍事務所側が「立て替え」、ホテル側に支払って、その金額に見合う領収書を受け取って参加費と引き換えに参加者に渡したということもあり得るだろう。しかし、前夜祭は、「自由参加」の立食の会であり、予め参加の申込みが行われているわけではないはずだ。そうなると、安倍事務所職員が、予め金額を確定してホテル側に支払い、その分の「ホテル名義の領収書」を受け取るということはできないのが通常だろう。

安倍首相の「説明」にある「ホテル名義の領収書」というのが、ホテルニューオータニの正式の領収書であったとすると、安倍事務所側で、「参加者数」を決めて、一人当たりの領収書の金額に「参加者数」を乗じた金額をホテル側に支払って、その人数分の「ホテル名義の領収書」を受領し、参加費の支払と引き換えに参加者に渡したということしか考えられない。

そうなると、そこで前提とされた「参加者数」が、実際の「想定参加者数」と一致していたのかどうか、ということが重大な問題となる。「ホテル名義の領収書」を受け取る際の支払いの前提となった「参加者数」よりも、実際に5000円の参加費を支払った人が少なかった場合、その差額は、安倍事務所側が負担し、安倍事務所には、その分の「ホテル名義の領収書」が残ったということになる。この場合、一人分の「ホテル名義の領収書」の金額と、1人当たり参加費の支払額は一致するが、安倍事務所のホテルへの支払額の総額と、参加者から受け取った参加費の総額は一致しない。

ホテル側に実際に支払われたパーティーの費用の総額が明らかになっていないので、「ホテル名義の領収書」が一枚5000円だったとしても、一体、何枚の領収書が安倍事務所側に渡されたのかが判断できない。

また、ホテルへの支払いが一人当たり5000円では到底足りず、その差額を安倍事務所側で補填しようと考え、「想定参加者数」を大幅に水増しし、実際に参加した人からの支払いとの差額を安倍事務所ないし安倍後援会側が負担したという可能性もある

仮に、そのようなことが行われたとすると、公選法上、政治資金規正法上、どのような問題が生じるのか。

公職選挙法上の問題

まず、公選法199条の2が禁止する「公職の候補者等の寄附の禁止」に当たるか。

確かに、前夜祭の飲食の提供について、ホテル側が、一人当たりの価格設定を「5000円」としていて、その金額と一致する5000円の会費が支払われていれば、金額が釣り合っているので「寄附」には当たらないようにも思える。

しかし、もし、その「5000円」が、実際の参加者を大幅に上回る「想定参加者」を前提に設定されたものであり、実際に提供される飲食費の一人当たりの金額が「5000円」を大幅に上回っていたとすれば、その「超過金額」の分の「寄附」をする意思があり、実際寄附が行われたことになる。

その場合、安倍事務所側が、ホテルへの参加費総額を支払って「ホテル名義の領収書」を受領した際に前提とした参加者数が、実際に想定していた参加者数に見合ったものであったかについての事実確認を行う必要がある。

政治資金規正法上の問題

政治資金規正法上は、安倍首相の「収支は発生しないため、政治資金規正法上の違反にはあたらない」との「説明」は、全く通る余地がない。

「桜を見る会」のツアーは、安倍晋三後援会名義で参加を呼び掛けていることからしても、政治団体である同後援会の活動の一環として行われていることは否定できない。その後援会の事務を行う安倍事務所側が「想定参加者数」でホテル側に支払いをしたとすれば、それ自体が、政治団体としての安倍晋三後援会の「支出」であり、その後、実際に参加者から「一人5000円」で受領した参加費の総額が「収入」となる。この「支出」と「収入」の両方を、政治資金収支報告書に記載すべきであることは言うまでもない。

この場合、安倍晋三後援会の政治資金収支報告書への不記載ないし虚偽記入の政治資金規正法違反が成立することになる。

一流ホテルのニューオータニであれば、「代金を受領しないまま、ホテル名義の領収書を安倍事務所側に大量に渡すことはあり得ないだろうし、参加者数が確定しないのに、一人当たりの参加費を「5000円」として領収書を交付し、参加者が想定より少なかった場合のリスクをホテル側が負担するということも考え難い。

安倍首相自身が「説明」に用いた「ホテル名義の領収書」が、この「桜を見る会」の前夜祭をめぐる問題の事実解明の“鍵”となるかもしれない。

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服役後5年“不屈の闘志”で司法試験合格した佐藤真言氏を阻む「不条理の壁」

2011年、東京地検特捜部に「震災復興融資詐欺事件」で逮捕・起訴され、実刑判決を受けて服役した経営コンサルタントの佐藤真言氏が、今年の司法試験に合格した。5年前には服役していた佐藤氏が、予備試験を経て司法試験合格まで5年という「超短期合格」を果たすまでの経緯が、産経新聞の記事【元受刑者のコンサルが司法試験合格 「負け犬」から奮起】で紹介されている。

産経新聞記事では、「『負け犬』からの奮起」という言葉が使われているが、決して、佐藤氏は、「負け犬」などではない。経営コンサルタントとしての役割を果たし、社会に貢献していたのに、特捜部の全くの見立て違いの捜査によって逮捕され、引き返すことをしない検察によって、起訴された、まさに“被害者”だった。

佐藤氏を「悪質経営コンサル」と誤認した特捜部

きっかけとなったのは、2010年に、元銀行員の経営コンサルタントAが国税局の査察で摘発されたことだった。Aは、銀行に在職時に、大口の融資話をまとめてはリベートを吸い上げて巨額の利益を得、しかも、その融資先会社は殆ど営業実体がないにもかかわらず虚偽の決算報告書で優良企業のように見せかけていた。東京地検特捜部がAを詐欺で逮捕し、立件された事件だけでも被害額は15億円に上った。

この巨額詐欺事件の元銀行員Aと、「元銀行員の中小企業向け経営コンサルタント」というところだけ共通していた佐藤氏を、特捜部は「粉飾決算の指南役」として捜査の対象とした。佐藤氏を、Aと同様の「悪質コンサル」と見た特捜部は、佐藤氏の自宅を捜索、捜索に赴いた係官は、佐藤氏の住まいのあまりの質素さに驚く。札束も、隠し財産も全くない。佐藤氏への取調べが始まり、その説明から、特捜部の見立てが完全に誤っていたことが明らかになっていくが、特捜部は、引き返そうとはしなかった。

佐藤氏の顧客の会社のほとんどは、リーマンショックによる不況で経営が悪化し、倒産の危険にさらされている状況で、佐藤氏の経営再建に向けての助言・指導を受けていた。売上や在庫を若干水増しして、決算内容を債務超過に至らない最低限のレベルに維持しながら、銀行融資の返済を続けている会社ばかりだった。融資する金融機関の側も、厳しい経営状況を把握しており、決算書の内容を厳密に突き詰めることなく融資継続の是非を判断しているという状況だった。

検察改革で追い込まれた特捜部の「起死回生」のための事件

特捜部は、その顧客会社のうちの一社が「東日本大震災復興緊急保証制度」に基づく保証融資を受けていたことをとらえ、「悪徳コンサルタント会社が実質破綻の中小企業を利用して震災復興の保証制度を食い物にした」という構図で組み立てて、佐藤氏とその会社の社長を逮捕した。

この事件の立件には、当時、検察不祥事を受けた検察改革で縮小されようとしていた特捜部の組織としての思惑があった。2011年4月に「検察の再生に向けての取組み」が公表され、取調べの可視化の試行など様々な施策が打ち出され、その一環として、特捜部の特殊直告班(主として政界汚職事件など特捜部の独自捜査を担当する部門)が縮小し、一班体制とされることになっていた。それに伴い、廃止されることになった「特捜部特殊直告2班」が、「起死回生の一打」を狙って手掛けたのがこの事件であった。

顧客会社は、社長の突然の逮捕で、銀行融資がストップ、会社は破産に追い込まれ、取引先の零細業者も連鎖倒産した。詐欺に問われた信用協会の保証付き融資も、結果的に、返済不能となった。

会社の倒産は、検察の強制捜査のためだった。しかし、会社が倒産し、銀行融資が結果的に返済不能となってしまったため、融資した銀行は、検察官から「粉飾決算を見過ごしたのか」と言われ被害届を出すよう求められれば、出さざるを得ない。被害弁償ができない1億円を超える詐欺事件となれば、執行猶予はつかない。佐藤氏は、懲役2年4月の実刑判決を受けて、服役した。

佐藤氏は、「貸し渋り」「貸し剥がし」が横行する中小企業金融の実態に幻滅して大手銀行を退職、経営コンサルタントとして中小企業経営者に寄り添い、経営改善の支援に懸命の努力をしていた。

普通に聞けば、「銀行から融資名目で1億円を騙し取って実刑判決を受けた」というと、「詐欺師」であったかのように思うだろう。しかし、佐藤氏が詐欺罪に問われた事実は、それとは全く異なる。

佐藤氏は、経営コンサルタントとして苦しい経営状況の中小企業が、金融機関からの融資の継続によって経営を立て直すことに尽力してきた。「粉飾」も佐藤氏が指導して始めさせたわけではなく、決して「粉飾」を指南したわけではない。

金融機関から融資を騙し取る「融資詐欺」の「詐欺師」の典型は、美濃加茂市長事件の贈賄供述者だ。会社の実体もなく、売上も全くないのに、関係機関の代表者印等を偽造、受注証明書・契約書等の公文書・私文書を偽造して、多くの地方自治体・医療機関等から浄水装置を受注しているかのように装ったり、送金元の名義を偽って代金が入金されたように見せかけたりして、事業の実体がないのにあるように偽装して、金融機関から融資金を騙し取っていた。それが、典型的な犯罪としての「融資詐欺」であり、佐藤氏の事件の発端となった経営コンサルタントAの詐欺も同様だ。

佐藤氏の行為は、融資を受けた会社の会計の「紛飾」が否定できるわけではないので、関与が否定できなければ、形式的には詐欺罪が成立することになる。しかし、検察が中小企業の金融取引の実情をわきまえていれば、凡そ、詐欺罪で立件して起訴するようなことではないことはわかったはずだ。

佐藤氏の事件を取り上げた著書・ブログ

7年前、石塚健司氏の著書【四〇〇万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日】(講談社)で初めてこの事件のことを知り、懸命に中小企業の経営改善に取り組む経営者と、それを必死に支える経営コンサルタントという、2人の「ひたむきに生きている善良な市民」が東京地検特捜部の非道な捜査・起訴に踏みつぶされたことに、衝撃と憤りを覚えて書いたのが【「正義を失った検察」の脅威にさらされる「400万中小企業」】。

その後、2人と会って、じっくり話を聞き、改めて、特捜部という権力機関が、このような普通の市民に襲い掛かることの恐ろしさを、私自身の検事時代の経験も含めて書いたのが【特捜検察が「普通の市民」に牙をむくとき】だ。

その後、控訴審でも一審の実刑判決がそのまま維持され、上告したものの、絶望的な状況に追い込まれた佐藤氏自身が、自らの著書【粉飾】(毎日新聞社)を公刊した際に書いたのが【佐藤真言氏の著書『粉飾』で明らかになった「特捜OB大物弁護士」の正体】だ。佐藤氏の著書の中で明らかにされている「特捜OB大物弁護士」は、高額の私選弁護費用を請求しながら、佐藤氏の弁護人として行うべきであった主張を全く行わないどころか、無意味に300万円もの「贖罪寄附」を行わせるなど、最低の弁護活動であり、それが、佐藤氏を「実刑判決の確定」という最悪の事態に追い込むことになった。

私の検察問題への関与を変えた“佐藤氏事件の衝撃”

佐藤氏の事件の衝撃は、その後の私の検察問題への関与の仕方を変えることになった。

私は、2006年に弁護士登録をしたものの、仕事の中心は、組織のコンプライアンスに関するもので、講演や不祥事対応、第三者調査等が中心だった。登録後の数年間は、裁判所に行ったことすらなかった。検察の在り方は、以前から厳しく批判していたが、検察の実務経験を持つ有識者としての、外側からの評論がほとんどだった。大阪地検の証拠改ざん問題等の検察不祥事からの信頼回復のために法務省に設置された「検察の在り方検討会議」に委員として加わったのも、その延長上だった。

しかし、佐藤氏の事件を知り、その巻き添えで逮捕された顧客会社の社長の控訴審の弁護を受任し(執行猶予とはならなかったが、懲役2年4月から2年に減刑)、私は、「やはり弁護人として法廷で検察と戦うべきだ」と強く思うようになった。実際の刑事裁判のフィールドで、検察官と真剣勝負をすることで、初めて、検察の在り方に具体的な影響を与え、佐藤氏のような人を出さないようにすることにも貢献できると考えた。

それ以降、弁護人として戦ってきた事件が、ブログでも紹介してきた「美濃加茂市長事件」「青梅談合事件」「国立循環器病研究センター事件」「福田多宏氏法人税法違反事件」などだ。そういう意味で、佐藤氏の事件は、私の「検察権力との戦い」の原動力になった事件だといえる。

これらの事件に共通するのが、「検察官が判断を誤り、処罰すべきではない人間を処罰する方向に暴走し、引き返すことができない構図」であった。

夢に向かって懸命の努力を続ける佐藤氏に立ちはだかる「不条理の壁」

佐藤氏は、私と最初に会った時に、「刑務所に入ることになっても、出てきて10年たったら法曹資格がとれると聞いています。私のような目に遭わされる人が出ないように、弁護士になりたい。」と話していた。その佐藤氏は、服役後、その夢に向かって、懸命の努力を続け、今年9月、司法試験合格という快挙を成し遂げた。経営コンサルタントの仕事を続けながら、予備試験を2回目で合格、1回の司法試験で、一気に最終合格にこぎつけた。

「“謂れなき刑事事件”で苦しめられる人を弁護人として救いたい」という思いが原動力となった佐藤氏の不屈の闘志と集中力が、どれほど凄まじいものであったか。

しかし、産経記事でも書かれているように、佐藤氏は、司法試験の超短期合格という快挙を成し遂げたにもかかわらず、「禁錮以上の刑を受けた」という欠格事由のため、実際に法曹資格を得るのは容易ではない。刑を受け終わって10年経過すると刑が消滅するので、佐藤氏の場合、あと5年余りで形式的には要件を充たすことになる。しかし、法曹資格取得のためには司法研修所に入所する必要があるが、その入所に関しては明確な規定がなく、裁量に委ねられている。佐藤氏が実際に入所できるのが何時になるかはわからない。法務省に、今後のことを聞き行った際、担当官から「悪知恵を付けてまた詐欺をやるのか」というようなことを言われたそうだ。産経記事のツイッターでのコメントにも、一部のそのような趣旨のものがある。

私自身も関わった「検察の在り方検討会議」等による検察改革で追い込まれた特捜部は、中小企業を倒産の危機から救う経営コンサルタントの佐藤氏を、「悪質コンサル」と誤認して逮捕し、引き返すこともなく起訴し、佐藤氏は実刑判決を受けて服役した。その経験から、「『普通の市民』に牙をむく特捜部から市民を守る弁護士になりたい」と願う佐藤氏は、懸命の努力の末、司法試験合格という快挙を遂げた。ところが、その忌まわしい「懲役前科」が、今も、佐藤氏の前に立ちはだかっている。

まさに「不条理の壁」そのものである。

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