河井案里氏有罪判決、極限まで追い詰められた克行氏、公判での真相供述で“大逆転”を!

2019年7月の参院選広島選挙区をめぐる公職選挙法違反(買収)の罪で起訴されていた参院議員・河井案里氏に対して、昨日1月21日、東京地裁で、判決が言い渡された。

検察の求刑「懲役1年6月」に対して、「懲役1年4月・執行猶予5年」という判決だった。

「執行猶予5年」というのは、「実刑ギリギリの執行猶予」を意味する。地元議員5人に現金を渡した起訴事実のうち、4人については公選法違反が認められて有罪、1人については無罪とされたが、その理由も、夫の河井克行氏(元法務大臣)が案里氏とは別の人物を通じて現金供与したことについて「共謀」したとする起訴について、「共謀」が否定されたものだ。

克行氏は、当初は、案里氏と併合起訴され、同じ公判で審理されていたが、昨年10月に弁護人を全員解任し、それによって公判審理ができなくなったため、公判が分離され、別々に裁判が行われている。

案里氏に対する判決は、克行氏の裁判に決定的な影響を与える。同じ裁判体の判断であり、克行氏の事件も、案里氏の判決で公選法違反を認めたのと同様に判断されることになると考えられるからだ。

このままであれば、合計100人に対する合計2901万円の現金供与の罪で起訴されている克行氏は、そのほとんどについて有罪、量刑も3年以上、執行猶予はつかず「実刑」になることは確実だ。

 この事件については、昨年4月に【河井前法相“本格捜査”で、安倍政権「倒壊」か】で最初に取り上げ、初公判が開かれた昨年9月には、【“崖っぷち”河井前法相「逆転の一打」と“安倍首相の体調”の微妙な関係】で、克行氏の罪状認否、検察の冒頭陳述、克行氏の弁護人冒頭陳述に基づいて解説した。

初公判で、克行氏の弁護人は、「党勢拡大・地盤培養のための寄附として行われたもので、投票及び票の取りまとめのための現金供与ではなかった」として無罪を主張した。

確かに、検察が、現金受領者側について刑事立件すらしていないという、公選法違反の刑事実務からは考えられない対応を行っていることは、現金受領者の証言の信用性を揺るがすもので、検察の主張・立証の重大な「弱点」だ。

また、供与金額の3分の2以上を占める「県議会議員・市町議会議員・首長らへの現金供与」は、供与の時期が選挙から離れたものが多く、選挙活動ではなく政治活動に関する寄附であるとの弁解も、一定の合理性がある。

少なくとも、従来の検察の実務では、選挙から離れた時期の供与は、買収罪では起訴して来なかったのであり、公選法違反の成否の判断は微妙だと考えられた。

しかし、実際の現金供与の際のやり取りには「党勢拡大・地盤培養」についての具体的な言葉があるわけではないため、克行氏の主張は認められず、起訴事実のほとんどが有罪となる可能性が高い。「統括主宰者」に対する法定刑の上限である4年程度の求刑が行われ(併合罪加重で6年まで可能ではあるが)、判決は、3年か3年6月の実刑ということになる可能性が高いというのが、上記記事で述べた克行氏公判の見通しだった。

今回の案里氏の判決は、克行氏の起訴事実の「県議会議員・市町議会議員・首長らへの現金供与」と同様の事実に対して公選法違反をあっさりと認めたもので、これによって、克行氏の無罪主張が認められる可能性は皆無に近くなったと言える。

克行氏が実刑判決を回避する唯一の方策は、公判審理の最後に行われる被告人質問で、「多額の現金買収を行うことにした経緯とその資金」の真相について、包み隠さず、真実を供述することだ。

「安倍政権継承」新総裁にとって“重大リスク”となる河井前法相公判【後編】》で述べたように、安倍氏には、溝手氏に対する積年の恨みがあり、安倍氏にとっては、溝手氏が野党と2議席を分け合う楽な選挙で当選し、参議院議長になってしまう事態は何としても避けたかったはずだ。また、菅氏は菅氏で、案里氏を出馬させ、岸田派の重鎮である溝手氏を落選させれば、安倍首相後継争いで岸田氏に対する優位を強烈にアピールできる。そういう意味で、安倍・菅両氏には、案里氏を2人目の候補として出馬させて当選させ、溝手氏を落選させようとする十分な動機があった。

「急遽、案里氏を参院選の候補として自民党で公認したものの、自民党広島県連が組織を挙げて支援する溝手氏が圧倒的に有利だったため、その極めて厳しい状況を打開するためには、現金を配布して案里氏の地盤培養を図るしかないとの認識を、克行氏が、安倍氏・菅氏と共有し、自民党本部からの巨額の選挙資金を原資として、現金配布を行った」という私の推測に、何がしかの真実があるのであれば、克行氏にとって、その真実を、勇気を持って公判で供述することが、実刑を回避する唯一の手段だ。

もし、克行氏が真実を話せば、克行氏を厳しく処罰すべきとの声は沈静化し、むしろ、真相を供述したことを評価して、寛大な判決を期待する声が高まることも考えられる。それは、自らの裁判での執行猶予に向けての「大逆転」になるとともに、日本の政治にも大きな影響を与える。

日本の政治状況は、安倍氏・菅氏の政治権力が盤石のように思えた昨年9月の初公判の時とは大きく異なっているということを、克行氏は認識すべきだ。

安倍氏は首相を辞任、その後、検察捜査で明らかになった「桜を見る会」前夜祭をめぐる虚偽答弁と、その合理的な説明が全くできない惨状に、政治家としての信頼は地に堕ちている。

その安倍氏の後継として首相になった菅氏も、コロナ感染対策に絡んで失態が続き、首相として絶望的な答弁能力・説明能力も露わになり、政権発足当時の高支持率も崩落に近い状況で、政権は危機的な状況に至っている。

克行氏は、実刑判決によって政治生命が終焉し、「憲政史上最悪の法務大臣」の汚名に甘んじるのか、それとも、日本政治を激変させる「公判での真相告白」で歴史に名を残すのか、岐路にあるといえる。

案里氏判決で、このままでは実刑を免れる可能性は皆無となり、極限まで追い詰められた克行氏にとっては、本当に、最後の最後のチャンスである。

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緊急事態宣言拡大、菅首相発言が「絶対にアカン」理由

毎年恒例の正月番組に「芸能人格付けチェック!」という人気番組がある。

著名芸能人の出演者が、味覚や音感などの「格付けチェック」に挑み、間違える度に、一流→二流→三流→そっくりさん、そして、最後には「映す価値なし」とランクがどんどん下がっていく番組だ。

その中で、例えば、超高級和牛を見分ける「格付けチェック」で、豚肉を選んでしまった場合など、「絶対にアカン」という選択肢があり、それを選ぶと、その芸能人は画面から消える。

2021年の年明けからまだ半月だが、その間に、政治家の「絶対にアカン」が相次いでいる。

吉川元農水大臣の“大臣室での現金収賄”

1月15日には、吉川貴盛元農水大臣が、収賄の事実で在宅起訴された。2018年10月から2019年9月まで第4次安倍改造内閣で農林水産大臣を務めていたが、大臣在任中の18年11月21日に都内のホテルで200万円、19年3月26日に大臣室で200万円、8月2日に大臣室で100万円を受け取ったとのことだ。

大臣就任前から業界からの要請を受け、政治献金を受けていたとしても、大臣に就任した以上、「職務に関連する政治献金は、賄賂に当たる」として拒絶するのが当然だ。それを、こともあろうに、大臣室で現金を受け取ったというのは、唖然とするような話だ。

「安倍一強」と言われる政治状況が長期化する中で、大臣室で業者から現金を受け取った甘利明元経済再生担当大臣が、刑事責任を問われることなく、事件が有耶無耶にされたまま自民党の要職に返り咲いていることなどから、大臣としての当然の規範意識も緊張感も失ったということであろう。

まさに政治家として「絶対アカン」ということは間違いない。

菅首相「福岡県」を「静岡県」に言い間違え

吉川氏が、既に議員も辞職しており「過去の人」になりつつあるので、その刑事事件は、現在の国民に与える影響は大きくない。それとは異なり、まさに現在、コロナ感染で緊急事態宣言が出され、国民生活に大きな影響を与えている状況下で、「絶対にアカン」のが、菅義偉首相の発言だ。

1月13日の午後、菅首相は、総理大臣官邸で第52回新型コロナウイルス感染症対策本部会議を開催し、新型コロナウイルス感染症への対応について議論を行い、その結果を踏まえて、緊急事態宣言に7府県を追加し、対象地域を11都府県に拡大することを明らかにした。

この際の首相発言は、生中継のカメラの前で行われ、宣言が拡大される府県にとっては、それが、初めて公に明らかにされた瞬間だった。

そこで、菅総理は、拡大の対象府県を、

大阪府、京都府、兵庫県、愛知県、岐阜県、静岡県、栃木県

と発言した。

この「静岡県」というのは、実は、「福岡県」の誤りで、会議直後に、西村康稔新型コロナ対策担当大臣が訂正した。

菅首相は、今回のコロナ感染急拡大の中で、緊急事態宣言の発出が遅れたのではないかとの指摘に対して、

「緊急事態宣言は対象地域の国民の生活に重大な影響を及ぼすから慎重に判断してきた」

と何回も繰り返して説明してきた。その重大な影響を及ぼす緊急事態宣言の拡大を公表する際に、その対象の府県を言い間違える、というのが、総理大臣として絶対にあってはならない「言い間違え」であり、まさに、「格付けチェック」であれば、「絶対にアカン」とされて、ただちに、画面から消えてなくなるような「大チョンボ」というべきだ。

「福岡県」を「静岡県」と間違えたことに関して、「福岡」も「静岡」も同じ「岡」がつく県名なので、単に言い間違えただけであるかのように思える。そうだとすれば、あまりに軽率であり、一流政治家の総理大臣として「絶対アカン」のレベルだ。

しかし、本当に単なる「言い間違え」なのだろうか。

「静岡県との言い間違え」の背景

むしろ、菅総理の頭の中には、「静岡県」が、対象地域の候補として強く刻み込まれていたのではないだろうか。

そう考える理由の一つが、東京都から大阪府までの東海道新幹線が通る太平洋側のエリアでは静岡県地域だけが空白になっていることだ。その静岡県でも、このところクラスターが多発し、感染が拡大しており、ちょうど、宣言の対象地域拡大の前日の12日に、感染ステージが「3」に引き上げられている。そういう意味では、静岡県が対象地域となることも十分に考えられるところだった。それだけに、「言い間違え」の影響は大きい。

そして、もう一つ、菅総理にとって、「静岡県」には個人的動機がある。

静岡県の川勝平太知事が、昨年秋、日本学術会議の新会員候補6人の任命拒否問題を巡って「菅義偉首相の教養レベルが図らずも露見した」などと発言し、その後、発言を撤回して陳謝したことがあった。この川勝知事の発言に対して、就任直後に、自身の学歴に関してプライドを傷つけられた菅首相が、相当強い個人的な反感を持ったであろうことは想像に難くない。

そういうこともあって、菅首相の頭の中に「静岡県」が刻み込まれていて、対策本部での「言い間違え」につながったということも考えられる。

 いずれにしても、菅首相の「静岡県」の「言い間違え」は首相として「絶対アカン」のレベルというべきだ。

官邸会見での「国民皆保険」発言

そして、その「言い間違え」の直後、菅首相は、総理官邸で開かれた「緊急事態宣言7府県に拡大」についての記者会見の最後に、ジャーナリスト神保哲生氏の質問に対して、「国民皆保険」に言及し、物議をかもすことになった。

会見は、冒頭の発言に続いて質疑に入ったが、菅首相は、ほとんどの質問に「原稿棒読み」で答えていた。つまり、質問内容が予め提示されていたということだ。

そして、最後に、クラブ外の会見参加者の神保氏が、

日本は人口あたりの病床数は世界一多い国、感染者数はアメリカの100分の1くらいなのに、医療が逼迫して、緊急事態を迎えているという状況について、政治が法制度を変えれば、変えられるのではないか。

現在の医療法では病床の転換は病院にお願いするしかないが、医療法を改正することは政府のアジェンダに入ってないのか。

軽症者でも厳重に扱わなくてはいけない感染症法の改正を行うつもりはないのか。

との趣旨の質問を行った。

この質問については、事前の質問提示がなかったようだ。菅首相は、言い淀みながら、それまでの政府の対応について説明した後、医療体制の問題について、以下のような発言をした。

そして、感染症法については先ほど申し上げましたけども、そういう法律改正は行うわけであります。

それと同時に医療法について、今のままで、結果的にいいのかどうか、国民皆保険、そして、多くの皆さんが、その診察を受けられる今の仕組みを続けていく中で今回のコロナがあって、そうしたことも含めてですね、もう一度、検証していく必要があるというふうに思ってます。

それによって必要であれば、そこは改正するというのは当然のことだと思います。

意味が不明瞭だが、「国民皆保険で多くの国民が診察を受けられる今の仕組みを含めて、もう一度検証していく必要があると思っている。必要であれば、そこは改正をするというのは当然のこと」という趣旨のように読み取れる。 

コロナ感染者、死者が世界で最多のアメリカに関して、医療保険がないことがその原因の一つだと以前から指摘されてきた。

医療保険をもたない国民が約2750万人(人口の8.5%)に上り、新型コロナウイルス感染が疑われる症状がでても、病院に行くことをためらう人の率が14%、低所得者や非白人になるとその率は22%(5人に1人)に上るとの報道もある。ファウチ国立アレルギー感染症研究所所長は2020年5月12日の議会証言で、自宅で亡くなる人など統計外の死者が多数いると述べている。

そういう医療保険がないアメリカで死者が爆発的に増えているというのに、コロナ感染に対する緊急事態宣言拡大の記者会見で、日本の医療制度について質問された時に、「国民皆保険制度を含めて検証する、必要であれば改正する」という趣旨で発言したとすれば、感染が急拡大して多くの国民が不安に思っている中で、あまりに無神経だ。

翌日、加藤勝信官房長官は、菅首相の発言について、

皆保険制度という根幹をしっかりと守っていく中でどう考えていくのか検証、検討していきたいという趣旨で言ったと思う。

と説明した。

もし、加藤官房長官の説明のとおりだとすると、菅首相の発言は、あまりに不正確で、極めて重要な事項に関わる首相として最低限の「説明能力」すらないということになる。

「国民皆保険」発言の背景として考えられること

それだけではない。この発言も、単なる無神経で軽率な発言というだけでは済まされない、菅首相の脳裏に刻み込まれた「国民皆保険制度への問題意識」が背景となった可能性がある。

神保氏の質問で「医療法の改正」と言っているのは、病院・診療所等の医療機関の開設・管理についての都道府県への報告義務等について定める法律である医療法を改正して、国や自治体の権限でコロナ病床を増やすことを強制することができないか、ということだ。

医療機関の設置について、医療者側の自主的判断と都道府県への報告を中心にしている医療法の枠組みに、国や都道府県側の強制力を持たせることは、医療体制の根幹に関わる問題なので軽々に行えることではない。質問に対する首相の回答としては、「そのような意見があることは承知しているが、医療法の枠組みにも関わる問題なので慎重に検討しつつ、コロナ感染拡大に対する医療体制の確保に万全を期していきたい。」というような答えをするのが通常であろう。

ところが、菅首相は、そこで、こともあろうに「国民皆保険」の問題を持ち出したのだ。

それが、単に、その質問だけ原稿なく自分の言葉で答えなくてはならなくなって、支離滅裂なことを言っている中で、たまたま日本の医療制度の根幹である「国民皆保険」という言葉が出てきてしまったということであれば、「答弁能力」「説明能力」の問題だということになる(それも「絶対アカン」のレベルだが)。

しかし、この発言も、そのような単純な話のようには思えない。

国民皆保険制度をめぐる利害

「国民皆保険」という日本の制度の下では、国民誰もが、いかなる場合でも医療機関を受診でき、医療者側には応召義務があるため、医療提供を拒否できない。誰しもが保険医療の範囲で、等しく一定レベルの医療の提供を受けられることを保障するものだ。

しかし、一方で、自己負担をしてでも高度の医療を受けたいと思う富裕層にとっては、そのメリットはあまりなく、むしろ、保険診療と保険外診療を併用する混合診療については原則として全額が患者の自己負担になることなどに対して不満が根強い。

アメリカの例を考えれば、コロナ感染によって国民の命が危険に晒されている状況においては、「国民皆保険」は、国民全体の命を守る砦と言ってもよいだろう。しかし、一方で、競争原理・個人責任の徹底を中心とする新自由主義の立場から、「貧乏人の命」と、「経済社会で活躍する富裕者の命」とは価値が異なるという考え方をすると、今の日本で、人口当たりの感染者がアメリカより遥かに少ないのに医療崩壊の危機に瀕するのは、「国民皆保険」の制度の下で、限られた医療資源が多くの貧者に提供されていることが原因だという考え方が出てくるのかもしれない。

菅首相のこれまでの政治思想、そして、日本では「新自由主義の教祖」のような存在である竹中平蔵氏らと親しいことなどからすると、日本が「医療崩壊」の危機に至り、緊急事態宣言を出さざるを得なくなっていることに対して、「国民皆保険」に根本的な原因があるような考え方が頭の中に刻み込まれていて、それが、思わず、口から出てしまったということかもしれない。

しかし、菅首相の発言の背景にそのような考え方があるとすれば、今、コロナ感染で国民の命が危険に晒されている状況での国のトップの発言として、絶対に容認することはできない。

日本の医療には様々な問題があり、それが、現在のコロナ感染急拡大の状況で露呈していることは確かだ。神保氏が問いかけた「医療法の改正」のほかに、新型コロナ特措法31条に基づき医療関係者に対して「医療を行うよう要請」すべきとの意見もある。そのような法律の活用や法改正については精一杯検討すべきだ。ところが、いきなり「国民皆保険」という言葉が出てくる菅総理の頭の中は、一体どうなっているのだろうか。

少なくとも、政府の対応を考える上で、絶対に疎かにしてはならないことは、

富める者も、貧しい者も、等しく、その命と健康と暮らしが最大限に尊重される

ということだ。この危機的な状況における日本政府のトップは、そういう考え方でなければならない。

宣言対象地域拡大の官邸記者会見での菅首相の発言は、単なる「答弁能力」「説明能力」の問題ではない。現在の危機的状況の日本を率いる政治家として失格だ。「絶対にアカン」とされて、ただちに画面(官邸)から消えるのが当然だと思う。

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安倍前首相「説明」に残る“重大な疑問”、限りなく「意図的虚偽答弁」に近い

 コロナに明け、コロナに暮れたように思える昨年は、一方で、首相の国会での「虚偽答弁」に始まり、その「虚偽答弁」についての「国会説明」で終わった年でもあった。

 新型コロナ感染対策や東京五輪開催をめぐって、多くの失敗を繰り返してきた安倍政権が終焉、それを受けての自民党総裁選では、安倍政権に一貫して批判的だった石破茂元幹事長「排除」が至上命題とされ、菅氏の圧勝に終わった。菅政権に移行した後も、安倍政権時代の説明責任軽視の姿勢は基本的に変わるところはなく、菅首相も、就任直後から、「説明責任」を果たしていない(果たす「言語能力」もない)ことに国民は失望し、内閣支持率も急落している。

 安倍内閣から菅内閣に引き継がれた「説明責任無視」の姿勢は、一極集中の政治権力に擦り寄る政治家の集りの自民党の「宿痾」であり、その根本にあるのが、「桜を見る会問題」をめぐる安倍前首相の「虚偽答弁問題」だと言える。

 一昨年末から昨年の年初にかけて、マスコミや野党から「桜を見る会問題」での追及を受け、安倍首相が行った説明について、私は、公選法違反・政治資金規正法違反の疑惑との関連で「完全に詰んでいる」と指摘してきた(【「桜を見る会」前夜祭、安倍首相説明の「詰み」を盤面解説】)。

 議院内閣制は、総理大臣を中心とする内閣が、国会で真摯に誠実に答弁することが前提とされている。その総理大臣の答弁が、重要な事項について「説明不能」の状況に陥ったのであれば、職を辞することになるのが当然だ。ところが、安倍氏は、「説明にならない説明」を繰り返したため、「全国の法律家による告発」という形で公選法違反等の犯罪の嫌疑が現実化した。

 しかし、安倍首相在任中に、検察捜査の動きが表面化することはなく、当時、「官邸の守護神」とも言われた黒川弘務東京高検検事長の存在との関係も取り沙汰された。そして、安倍首相が国会で「桜を見る会問題」で追及を受けている最中の1月末、検察庁法に違反する閣議決定によって黒川検事長の定年が延長され、さらに、それを正当化するためとしか思えない検察庁法改正法案が国会に提出されたことに対して、ネット世論を中心とする国民の猛烈な批判が沸き起こり、法改正は断念に追い込まれた。

 もともと安倍氏の説明は、検察捜査によらずとも、国会の国政調査権でホテルニューオータニから明細書や領収書を提出させれば容易に判明していたはずの明白な「虚偽」だった。ところが、上記の経過で、検察は安倍首相辞任後になってようやく捜査に動き出し、「虚偽答弁」が明らかになるのに1年近くを要した。

 その「虚偽答弁」について、昨年末、安倍氏は「国会での説明」を行ったが、全く説明にはなっておらず、多くの疑問が残ったままだ。

 安倍氏の「説明」について、それが意味するものと、なお残る疑問点、問題点を、改めて整理しておこう。

 第一に、「虚偽答弁」について、そのように答弁した理由について、安倍氏が説明未了の重要な点がある。それは、繰り返し指摘してきた「ホテルとの契約主体」の問題だ。

安倍氏は、国会答弁で、「安倍晋三後援会は夕食会を主催したが、契約主体は個々の参加者だった」と説明していた。それについて、私は、当時から、「『桜を見る会』前夜祭に関して、安倍首相が『説明不能』の状態に陥ったということである。」と指摘していた【前記記事】。

 今回、総理主催「桜を見る会問題」追及本部の今年1月5日付けの質問状に対して、安倍事務所は、上記の契約主体に関する答弁を「事実と異なる答弁」の一つとして回答した。

 そこで問題になるのは「契約主体が個々の参加者だなどという荒唐無稽な説明を、誰が考えたのか」という点である。

 その点については、安倍氏は、「秘書から事実に反する説明を受けた」とは言っていない。「契約主体は個々の参加者」という説明は、安倍氏自身が、公選法違反・政治資金規正法違反を免れる「言い訳」として苦し紛れに作り出したものなのかもしれない。

 ホテルとの契約主体についての虚偽答弁について、安倍氏に十分な説明を求めれば、意図的な虚偽答弁が否定できなくなるはずだ。

 第二に、安倍氏の説明には致命的な弱点(もう一歩追及されると意図的なウソだったことがばれる点)があるということだ。

 前夜祭の費用の補填は、秘書が、自分が預けていた個人の金から無断で拠出していたと説明し、その費用補填が公選法による「寄附の禁止」(199条の2第1項)に該当しないのかという点について、安倍氏は、補填分は「会場費」の実費を負担したもので、同項が「寄附」から除外する「政治教育集会に関する必要やむを得ない実費の補償」に該当するので、違法ではないと説明している。

 しかし、この説明には重大な疑問がある。

 一つは、そもそも、「桜を見る会」前夜祭が、「政治教育集会に関する」ものと言えるのかという点だ。単なる地元有権者との懇親の場であり「政治教育集会」とは程遠いものであろう。

 もう一つは、この費用補填が「必要やむを得ない実費の補償」と言えるのかという点だ。安倍氏は、飲食代金の5000円が参加者個人の負担で、安倍氏側は「会場費」だけを補填したかのように説明しているが、果たしてそうなのかどうかは、ホテル側の明細書等の資料を確認する必要がある。通常は、ホテル側が、飲食費・会場代のほか、様々な費用を積み上げて総額を計算し、その総額のうち、参加者の会費としての負担分と、主催者側の補填分とを振り分けるということで、補填する金額が決まるはずだ。

 そうであれば、補填分は、飲食代・会場費を含めた「前夜祭費用総額の一部」を負担したということであり、「必要やむを得ない実費の補償」には当たらないということになる。

 安倍氏が、国会での説明で、ホテルの明細書が存在していることを認めながら、「事務所にはない、ホテルは『営業の秘密』を理由に提出を拒んでいる」という理由で、明細書の提示を頑なに拒んでいるのは、この点について真実を隠そうとしていることが疑われる。

 つまり、安倍氏は、現在も、さらにウソを重ねている疑いが十分にあるのである。

 第三に、最も重要な点は、安倍氏が国会で説明したとおりであるとしても、「意図的な虚偽答弁」に限りなく近い、ということである。

 安倍氏にとって、前夜祭の費用の補填を繰り返し否定していたのに、実際には多額の補填が行われていたことについて、「費用補填を認識していなかった」と説明し、そのように認識していた理由について、野党の追及が始まった後に、自分の執務室から東京の安倍事務所の責任者に電話をかけて「5000円の会費で全てまかなっていたんだね」と確認し、その後「会場代も含めてだね」と確認した、と説明した。

 しかし、前夜祭の問題について、国会での追及が始まった後に、安倍氏から、電話でそのように言われて、「同意」を求められた秘書が、「そうではありません。5000円以外に別に支払をしています。」と答えることなどできようはずもない。安倍氏の聞き方は、どのような費用がかかったのか、収支は発生したのかなどについて「事実を聞き出す」ものではない。「すべての費用は参加者の自己負担」と決めつけ、秘書側が、それに反する事実を説明できないよう抑え込んでいるだけだ。安倍氏の説明のとおりだとしても、そもそも「真実を答弁しようとする姿勢」がなく、意図的な「虚偽答弁」に限りなく近いものだ。

 このように、安倍前首相の説明には多くの疑問があり、しかも、説明のとおりだとしても「意図的な虚偽答弁」に限りなく近い。国会でのこの問題を徹底追及すべきだ。

 「ウソの構図」が放置されたまま、今後も、安倍氏やその支配下、影響下にある政治家が日本の政治を動かすことは決して許してはならない。政治に最低限の信頼を取り戻すためには、引き続き、安倍氏側や関係先に説明と資料提出を求め、ウソの中身をすべて明らかにするとともに、首相の「虚偽答弁」の動機と経過を詳細に明らかにしていくことが不可欠だ。

 そして、忘れてはならないのは、昨年末に、凡そ説明にならない説明を終えた後、安倍氏が、「次の選挙で信を問いたい」などと抜け抜けと語ったことだ。

 安倍氏が言っていることは、要するに、「『説明責任』など糞くらえだ。地元の有権者は、そんなこととは関係なく、無条件に自分を支持してくれる。だから、9回の選挙はすべて圧勝してきた」ということなのだ。完全に、地元の有権者をバカにしている。

 安倍氏が、首相の虚偽答弁という「憲政史上の汚点」を残し、納得できる説明も行わないまま、次の選挙で再び「圧勝」すれば、「虚偽答弁」の背景にある、日本の政治を支配してきた「ウソの構図」が放置されたまま、今後も、「説明責任を果たさないウソの政治」が横行することになる。

 今年の秋までに行われる衆議院議員選挙で、安倍氏の選挙区である山口4区(下関市・長門市)の有権者に、首相の「虚偽答弁」について、その中身の詳細と、その問題点、疑問点が理解されるようにすること、その有権者一人ひとりが問題を正しく理解した上で、選挙での選択が行われるよう、下関市・長門市の有権者の人達に、国民全体の声が届くようにすることが、今年の重要な課題というべきだ。

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一層巧妙化する安倍前首相の「ウソ」~「桜」虚偽答弁問題、第三者による事実解明を

「桜を見る会」前夜祭における費用補填をめぐる問題で、東京地検特捜部は、12月21日に安倍晋三前首相本人の事情聴取を行い、同月24日に不起訴処分とし、地元山口の実務を取り仕切っていた配川博之公設第一秘書を、収支報告書不記載罪で略式起訴した。

安倍氏は、24日夕刻に、議員会館で、平河クラブ(自民党本部内と衆議院内にある記者クラブ。平河クラブに所属する記者は、主に自民党・公明党の取材を担当。)加盟社の記者24人を集めて「会見」を開き、前夜祭における費用補填の事実について「説明」を行い、翌25日には、衆参両院の議院運営理事会で、それまで118回も繰り返してきた国会での「虚偽答弁」を「正す」ために、与野党議員の質問に答えた。

記者向け「弁明会」と時間が著しく制約された国会質疑

24日の「会見」は、フリーランスなどのクラブ外記者は排除し、気心の知れたクラブ加盟社の記者だけの質問に答えたもので、しかも、「会場の借り上げ時間」などという全く理由にもならない理由で時間が1時間に制限されるなど、疑問に十分に答えるものとは到底言えないもので、「記者会見」というより、「弁明会」に近いものであった。

また、国会での与野党議員の質疑も、時間が、各院で与野党議員合わせて1時間と限定され、最大でも質問者一人当たり15分という極めて短いものだった。

しかも、与党議員からは、それまでの安倍氏の長期政権による実績の礼賛が長々と行われたり(自民党高橋克法参議院議員)、日本維新の会からは、「安倍先生の説明を信じている」などと、「追及」とは真逆の質問も行われ、それらも含めて衆参両院で合計2時間であり、「首相の虚偽答弁」が発覚した安倍氏に対して十分な「追及」を行う場とは到底言えないものだった。

特に、日本維新の会の遠藤議員の「質問」は信じ難いものだった。総理大臣が国会で度重なる虚偽答弁を行ってきたことについて安倍氏の説明を聞き問い質す場であるはずなのに、「政治資金規正法の欠陥の問題」を持ち出し、「政治資金規正法の大改革を安倍先生がリーダーシップをとってやってもらいたい」などと言いだした。

政治資金規正法が、献金の政治団体等への帰属を前提に、収支報告を義務付けるものであるが故に、政治家本人への「闇献金」が処罰困難であることなど、構造的な問題があることは、私もかねてから指摘してきた。しかし、今回の事件では、そのような「献金の帰属」が問題になったわけではない。また、もう一つの欠陥と言われているのは、会計責任者に義務が集中しているという問題だが、今回は、安倍晋三後援会の代表者であって会計責任者ではない公設秘書が起訴の対象とされており、会計責任者に義務が集中し政治家本人に責任が及ばないことが問題になったわけでもない。(不記載罪ではなく、虚偽記入罪を適用すれば「会計責任者への責任の集中」が回避できることは、【「安倍前首相聴取」が“被疑者取調べ”でなければならない理由】で述べた通り。)

今回の事件とは直接関係がないのに、政治資金規正法の欠陥が今回の問題につながったかのように問題をすり替えて、虚偽答弁には全く触れずに安倍氏にエールを送る姿勢には唖然とした。日本維新の会という政党の「疑似与党」としての性格が端的に表れたものと言える。

では、このようなクラブ加盟社を集めた「弁明会」や、衆参両院で極めて短時間の質問に対して行われた安倍氏の「説明」の内容はどのようなものであったか。

安倍氏は、国会での虚偽答弁を始め、この問題についての「説明」において、その都度、行われている批判・批判を意識して、説明内容を変えたり、加えたりしてウソを塗り固めてきたが、今回の一連の説明でも、その姿勢は全く変わっていない。それどころか、今回の説明では、ウソが一層巧妙になっていると言える。

まず、1年余り前から国会等で「虚偽答弁」を繰り返していた「説明内容」を振り返ってみよう。

2019年11月15日の官邸「ぶら下がり会見」

前夜祭の費用補填疑惑について国会での追及が行われた直後の昨年11月15日夜、安倍氏は、総理大臣官邸で、記者団との「ぶら下がり会見」で、

すべての費用は参加者の自己負担。旅費・宿泊費は、各参加者が旅行代理店に支払いし、夕食会費用については、安倍事務所職員が一人5000円を集金してホテル名義の領収書を手交。集金した現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた。

収支報告書への記載は、収支が発生して初めて記入義務が生じる。ホテルが領収書を出し、そこで入ったお金をそのままホテルに渡していれば、収支は発生しないため、政治資金規正法上の違反にはあたらない。

と、説明した。

夕食会の参加費の価格設定も会費の徴収もすべてホテル側が行うという、「ホテル主催の宴会」であるかのように言って、安倍後援会の「収支が発生しない」というのが、安倍氏のすべての「説明」の始まりであった。

これに対して、私は、【「ホテル主催夕食会」なら、安倍首相・事務所関係者の会費は支払われたのか】と題する記事を出し、安倍首相が説明するとおり、ホテル側が会費の設定を行い、自ら参加者から会費を徴収するのであれば、その立食パーティーに参加した「安倍首相夫妻」、「後援会関係者」らからも会費を徴収するのが当然であり、会費を支払った場合は、安倍事務所側に支出が発生するので、後援会に政治資金収支報告書に記載がないことが政治資金規正法違反となると指摘した。

参議院本会議代表質問での安倍首相の答弁

安倍氏は、その後、12月2日の参議院本会議の代表質問において、首相として、以下の答弁を行った。

夕食会には、私は妻とともにゲストとして参加し、挨拶を行ったほか、参加者との写真撮影に応じた後、すぐに会場を後にしております。事務所や後援会の職員は写真撮影や集金等を行ったのみです。このようなことから、会費の支払はしておりません。

ちなみに、私と妻や事務所等の職員は夕食会場で飲食を行っておりません。

いずれにしても、夕食会の費用については、ホテル側との合意に基づき、夕食会場入口の受付において安倍事務所の職員が一人5000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払がなされたものと承知しております。

このように、同夕食会に関して、安倍晋三後援会としての収入、支出は一切ないことから、政治資金収支報告書への記載は必要ないものと認識しております。

夕食会の価格設定については、私の事務所の職員がホテル側と各種段取りを相談する中で、出席者の大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえ、会場費も含めて800人規模、一人当たり5000円とすることでホテル側が設定したものであります。

私の事務所に確認を行った結果、ホテル側との相談過程においてホテル側から明細書等の発行はなく、加えて、ホテル側としては営業の秘密に関わることから公開を前提とした資料提供には応じかねることであったと報告を受けております。

安倍首相の国会での虚偽答弁は、この参議院代表質問から始まり、それ以降、118回にもわたって繰り返されていくのである。

しかし、そもそも、立食パーティーについて、主催者が会費徴収に関与せず、ホテル側が直接参加者から会費を徴収するなどということがあり得ないことは、常識で考えれば明らかな話だ。

また、もし、立食パーティーで、ホテル側が参加者から会費を徴収するのであれば、飲食をするかしないかにかかわらず参加者全員から徴収するのが当然だ。安倍首相夫妻は、雛壇に立って乾杯の挨拶をする際に、ホテルスタッフからグラスを受け取っているのであり、それだけ見てもホテルからサービスの提供を受けているのであるから、「私と妻は飲食をしていないから会費を支払わなくてよかった」というのは明らかなウソだ。

つまり、安倍首相の虚偽答弁というのは、答弁の内容自体から明らかだったのであり、その約1年後に、東京地検特捜部の捜査で、ホテルニューオータニから前夜祭に関する資料が提出され、安倍氏側が前夜祭の費用800万円以上を補填していた事実が明らかになったためにウソが判明したという話ではないのである。

安倍氏秘書の「大罪」の指摘と、それをすり抜ける巧妙な「説明」

私は、「秘書が、実際には費用を補填しているのに、その事実を秘匿し、安倍氏に報告していなかったので、安倍氏は費用補填の事実を知らなかった」というのが安倍氏側の言い分だと報じられていたことに関して、2020年12月23日に出した記事【安倍氏秘書「独断で虚偽説明」なら、“総理に虚偽答弁させた大悪人”か】で、「公設秘書が独断で安倍氏に虚偽説明をして国会で虚偽答弁させた」ということであれば、総理大臣としての重大な汚点となる虚偽答弁をさせた秘書は「大罪」を犯したということであり、安倍氏はその秘書に対して「激怒」するのが当然であること、「前夜祭の費用補填を独断で行い、それを収支報告書に記載せず、安倍氏から質問されても虚偽説明をして安倍首相に国会で虚偽答弁させ、その後に、今年春、2019年分の安倍晋三後援会の収支報告書を提出するに当たって、独断で前夜会の収支不記載のまま提出した」ということであれば、不記載罪の情状として最悪であり、総額が3000万円程度であっても、罰金刑で済まされるわけがないことなどを指摘していた。

24日の「弁明会」と25日の国会での実際の安倍氏の説明は、

実際に費用補填を行っていたのは、略式請求された地元の配川公設第一秘書ではなく、東京事務所の責任者の秘書であり、安倍氏に対して、費用補填はしていないと虚偽の説明を行っていたのも、その東京事務所の秘書だった。その秘書から、地元の配川秘書への連絡が不十分だったために、配川秘書は、費用補填の事実を明確に認識していなかったが、夕食会について何らかの費用は発生していて記載すべきことを認識していたのに記載しなかったということで、不記載の刑事責任を問われた

というものだった。

この説明のとおりだとすると、安倍氏に虚偽説明をして、総理大臣として国会で虚偽答弁させるという「大罪」を犯したのは、配川公設秘書ではなく、東京事務所の責任者の秘書だったことになる。

その東京事務所の秘書は、安倍後援会とは直接の関係がなく、その政治資金収支報告に関わっていないので、刑事責任を問われることはなく、氏名も明らかにされていない。そのような、ホテル側との交渉等をすべて行っていた東京事務所の秘書が、安倍氏に、費用補填の事実も、ホテル側とのやり取りもすべて秘匿し、国会で虚偽答弁をさせたことになるのである。

しかし、東京事務所の秘書には、安倍氏に虚偽報告をして、国会で虚偽答弁させる動機があるとは思えない。後援会の代表の配川氏のように、前夜祭の収支を政治資金収支報告書に記載していない、という自らの犯罪の発覚を免れるために安倍氏に虚偽説明を行う動機もない。安倍氏に説明を求められれば、ありのままに報告したはずだ。

安倍氏の説明には根本的な疑問があるが、その秘書の名前すら明らかになっていないので、その説明の真偽を確かめようがない。そのような説明で押し通してしまえば、安倍氏の虚偽答弁は虚偽の認識なく行ったもので、その原因となった「秘書の安倍氏への虚偽報告」という「大罪」も誰が行ったのかあいまいにされてしまうことになる。

安倍氏の説明の通りであれば「森友学園問題と共通する『虚構の構図』」

前夜祭夕食会に関する、ホテル側との交渉や支払を担当していたのが、東京事務所の責任者の秘書だとすると、7年以上にわたる首相在任期間において、森友・加計学園問題などで国会で追及を受けた時に繰り返してきたのと同様の「虚構の構図」で、秘書が安倍氏に対して真実の報告ができない状況に追い込まれていた可能性もある。

安倍氏は、24日の「弁明会」で、秘書とのやり取りについて、

私は『5000円の会費で全てまかなっていたんだね』ということを確認し、『そうです』と答えた責任者でございますが、その後も『会場代も含めてだね』ということも確認したんですが、『それはそうです』というふうに答えていた

と述べ、25日の国会での質疑でも、福山哲郎議員の質問に対して、

昨年11月、この問題が国会で取り上げられるようになってから、自分の執務室から電話で秘書に確認した

と説明をしている。

つまり、安倍氏の説明のとおりだとしても、この件についての秘書とのやり取りは、前夜祭について、電話で「5000円の会費で全てまかなっていたんだね」と「確認」し、その後、「会場代も含めてだね」と「確認」したに過ぎない。安倍事務所や後援会としてどのような費用がかかったのか、収支は発生したのかなど、問題とされていることについて「事実を聞き出す」ものでは全くないのである。

安倍首相から、「5000円の会費で全てまかなっていたんだね」と「同意」を求められれば、秘書の方から、「そうではありません。5000円以外に別に支払をしています。」とは、とても言えない。真実がどうであるかとは関わりなく、安倍氏は「すべての費用は参加者の自己負担」と決めつけ、その秘書側が、事実を説明することを抑え込もうとしているに等しい。そのような権力者の安倍氏の意向に、秘書としては従うしかない。

それは、森友学園問題などでも繰り返されてきた、「忖度の構図」と全く変わらない。

森友学園問題では、

私と妻は一切関わっていない。関わっていたら、総理大臣も、議員もやめる

という国会答弁を行ったことが起点となって、佐川宣寿理財局長以下が、その首相答弁が事実であることを前提に動かざるを得なくなった結果、近畿財務局では、決裁文書の改ざんまで行われ、赤木氏の自殺という痛ましい出来事にまで至った。

安倍氏の説明のとおりだとすれば、それと同じ構図が、今回の安倍氏と秘書の関係において生じていたということなのである。

明細書に関する安倍氏の説明の「大ウソ」

安倍氏は、2019年11月15日以降、「主催者の後援会に収支は発生しないため、政治資金規正法上の違反にはあたらない。」という説明を繰り返してきた。それは、安倍氏が勝手に決めつけたことであり、それが事実に反することの認識がなかったとは思えない。それは、24日の「弁明会」での「明細書」についての以下のやり取りからも明らかだ(産経「桜を見る会 安倍首相の説明詳報」による)。

(記者)国会では明細書はないと…

(安倍)明細書がないのは、事務所にないということです。明細書がないということは、私が答えられるわけないのであって、ホテルにあるかないかということであって、普通は明細書はあるんだろうと。 しかし明細書は、今お答えしたのは、明細書がないというのは、私の事務所には明細書が残っていないということであるのと、秘書が明細書を見たという認識がないということを申し上げている。明細書がないということを申し上げたことはない というところだと思います

(記者)なぜホテルに確認しなかったのか

(安倍)いや、だから、その確認というのはですね、確認というのは、明細書を出してもらいたいということですから、明細書は営業の秘密にかかるから、公開を前提とする上において明細書を出すことはできないというふうにお答えをしていると。明細書がないということではなくて、というふうにお答えをしているという ことです

全く支離滅裂である。

そして、25日の国会で、立憲民主党の辻元清美議員が、領収書と明細書がなければ政治資金収支報告書の細かい修正はできないとして、自ら再発行をホテルに求め国会に提出するよう要求したが、安倍氏は、

検察側は明細書等をしっかり把握したうえで今回の判断をしているのであろうと思います。明細書のなかがどうあれ、検察側の判断は変わらない。私たちがことさら明細書を隠さないといけない立場ではない

などと述べて応じようとしなかった。

検察の捜査は、刑事処分のために行われるものであり、不起訴に終わったからと言って、政治的・社会的に問題がなかったことが確認されるわけではないし、刑事事件とは別個に事実を解明する必要性が否定されるわけではない。「検察が、明細書の内容を把握した上で、不起訴の判断をしたので、明細書を隠す理由がない」というのは、国会での説明責任を、不起訴という司法上の判断を盾にとって免れようとするもので、到底許されるものではない。

このような苦し紛れの言い訳までして、明細書の提出を拒むのは、明細書を提示した場合は、安倍事務所側とホテルニューオータニ側との前夜祭についての交渉経過がすべて明らかになり、安倍氏の説明が当初から明白な虚偽であったことが否定できなくなるからとしか考えられない。

費用補填の原資についての苦し紛れの「弁明」

24日の「弁明会」で、記者からの最初の質問は、前夜祭の費用の補填の原資を問うものだった。これに対する安倍氏の説明によって、安倍氏の政治資金の処理に重大な問題があることが明らかになった。

安倍氏は、以下のように説明した。

私のいわば預金からおろしたものを、例えば食費、会合費、交通費、宿泊費、私的なものですね。私だけじゃなくて妻のものもそうなんですが、公租公課等も含めてそうした支出一般について事務所に請求書がまいります。そして事務所で支払いを行いますので、そうした手持ち資金としてですね、事務所に私が合わせているものの中から、支出をしたということであります。

要するに、安倍事務所では、安倍氏の個人預金から一定金額を預かって、安倍夫妻の個人的な支出についても支払をしており、そのような個人預金から、後援会が主催する前夜祭の費用補填の資金を捻出したということなのである。

安倍氏がそのような説明をしたのは、もし、費用補填の原資が、資金管理団体「晋和会」から支出されたとすると、晋和会の収支報告書に記載しなければならかったということになり、それを記載していないことについて、安倍氏自身が代表になっている政治団体の政治資金収支報告書不記載罪が成立することになるからであろう。それを避けるためには、安倍氏の個人資産から「立替え」をしたと説明せざるを得なかったのである。

しかし、安倍氏の個人資産が補填の原資だと説明すると、もし、それを安倍氏が了承していた場合には、安倍氏自らが公職選挙法の寄附の禁止に違反することになりかねない。そこで、補填は、秘書が無断で行ったと弁解するとともに、もう一つ、補填の正当化事由として「会場費の支出は、有権者に対する寄附に当たらない」という理屈を、自民党議員の質問の助けを借りて出してきた。

自民党高橋克法参議院議員の質問で、

会場費等の計上についてはっきりしたガイドラインがない。そのことも一因だと思う。それをしっかりと整備するべきだと思うが、考え方を伺いたい

と質問され、

総務省の見解で会場費等は寄附に当たらない

などと答えた。

安倍氏は、前夜祭の会費5000円は飲食費の実費で、それ以外の費用補填は(国会答弁時は認識していなかったが、)「会場費等」だったというような説明をした。

これは、公選法の「公職の候補者等の寄附の禁止」(199条の2第1項)では、

「専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会に関し必要やむを得ない実費の補償」

として行われるものが除外されているから、会場費の負担であれば、公選法の寄附の禁止には触れないと言いたいのだろう。

しかし、桜を見る会の前夜祭は、「政治教育のための集会」ではないことは明らかで、このような寄附の除外規定は問題にならない。また、安倍氏が提示を拒んできたホテル発行の明細書を見れば、費用の補填が、会場費だけではないことが明らかになるものと思われる。

このような全く的はずれの「会場費」の話を、わざわざ自民党の質問者が持ち出し、総務省の見解にまで言及して「寄附に当たらない」と言っているのは、個人資金が原資となった費用補填であることで公選法違反が生じることを避けようとする「苦し紛れの弁明」と言わざるを得ない。

政治資金と個人資金の一体化という重大な問題

安倍氏の説明は、前夜祭をめぐる費用補填について何とかして法律違反をすり抜けようと腐心したのであろうが、その結果、安倍氏に関連する政治資金の処理に関する重大な問題が明らかになった。

つまり、安倍事務所で、安倍氏の個人預金から一定金額を預かって、安倍夫妻の個人的な支出の支払をしていたということは、事務所で扱う政治資金と個人の資金とが一体化し、最終的に、政治資金としての支出と個人の支出とに振り分けるというやり方がとられていたことになる。

しかも、そのようなやり方によって、前夜祭の費用補填については、合計800万円もの費用を、後援会として費用負担すべきところを、資金の拠出者の安倍氏が認識しないまま、個人資金で負担していたということなのである。

ということは、安倍氏については、政治資金と個人の資金の区別すらついておらず、どんぶり勘定になっていたということであり、逆に、政治資金が個人的用途に使われる可能性も十分にあるということだ。これは、「昭和」の時代の政治家の政治資金処理であり、政治資金の透明化が強く求められる21世紀においては、全くあり得ないことだ。

前夜祭の費用負担に関連する安倍氏の説明は、ひたすら、自らの犯罪・違法行為の疑いをすり抜けようと、なりふり構わず、巧妙に説明を組み立てたのであろうが、それが、かえって、安倍氏という政治家にとっての根本的な問題を露呈することになった。

このような「巧妙なウソ」で、総理大臣の国会での度重なる虚偽答弁が見過ごされてよいわけがない。自民党として、中立的・客観的立場の第三者による調査を実施して、事実を明らかにすること以外に、この「憲政史上最悪の総理大臣の虚偽答弁」の問題で失われた信頼を回復する手立てはない。

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刑事裁判での「証拠開示のデジタル化」は喫緊の課題

政府は、社会全体の効率化とコスト抑制を図ると共に、一人ひとりに対しても公平かつ迅速に、最適なサービスの提供を可能にする「行政のデジタル化」を進めることで、官民一体となったデータ流通の促進を促す方針を打ち出している。各省庁のデジタル化を推進する司令塔となる専門機関として、来年春には「デジタル庁」が創設されることが決定されている。

その「デジタル化」という面で最も遅れている分野の一つが刑事裁判の分野だ。

刑事裁判では、警察、検察が集めた証拠は、検察官が保管している。検察官が裁判で起訴事実を立証するために請求する証拠や、弁護人が弁護活動のために必要となる証拠を弁護人に提供する手続が証拠開示だ。

その手続は、これまで、検察官が、弁護士に検察庁まで来させて証拠を自分でコピーさせるという「アナログ」のやり方で行われてきた。その際に弁護士が使える業者も限られており、1枚40円といった高額の費用がかかることもあった。

開示証拠は、特に、金融商品取引法違反、脱税などの経済事件では、膨大な量になる場合が多い。それをすべてコピーするための費用が数十万、数百万円に上ることもある。

国選弁護事件の場合には、コピー代のかなりの部分を国が補填する。そのため、年間で1億円以上の税金が使われている。

私選弁護事件では、開示記録のコピー代はすべて被告人の負担となる。コピー代を節約するために弁護士か事務員が検察庁に出かけていって、書類をファイルに綴じたまま1ページずつデジカメで撮影することは可能だが、この場合、時間と労力が相当なものとなる。遠隔地の裁判所の事件の場合はなおさらだ。

私が弁護人として検察と戦う事件の多くは経済事件などで、開示証拠の量も膨大だ。しかも、裁判所は東京とは限らない。遠隔地の裁判所の事件での開示証拠の写しを迅速に入手するのは容易ではない。

証拠開示を受けて、証拠の写しを精査するというのは、刑事裁判に向けての弁護活動の出発点であり、そこに膨大なコストないし労力がかかるという現実は、弁護活動を制約し、「公正で迅速な裁判を受ける権利」をも侵害することになりかねない。

刑事事件など自分には関係ないことだと思っている人が多い。しかし、そういう人が、突然、特捜捜査の対象とされ、人生が変わってしまうことになる。そのような一般人が犯罪の嫌疑を受ける事件の多くが経済事犯であり、検察官が開示する証拠は膨大な量に上る。現状のままでは、開示証拠の謄写にかかる費用が弁護活動の妨げになるのである。

刑事事件の弁護を行う弁護士はもちろん、多くの国民が関心を持つべき問題だと思う。

刑事弁護に積極的に取り組んできた弁護士有志が、刑事事件の証拠を電子データ化して交付するよう求める、内閣府特命担当大臣(規制改革)河野太郎、法務大臣上川陽子、検事総長林眞琴あての要望書を取りまとめ、11月11日から賛同者を募る署名活動を行っている。( https://www.change-discovery.org/

刑事事件の証拠は、捜査権限によって証拠収集を行った警察、検察が独占すべきものではない。刑事訴訟の目的である「実体的真実の解明」のためには、警察、検察が収集した証拠を、弁護人の立場からも十分に検討し、裁判での主張立証に活用することが不可欠だ。

刑事事件の証拠開示を効率的かつ経済的に行うための「証拠開示のデジタル化」は、今、日本政府が重要な政策課題として進めようとしている「行政のデジタル化」の喫緊の課題である。

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安倍氏公設秘書は、虚偽説明をして首相に「虚偽答弁」をさせた「大罪」を負うのか?

 「桜を見る会」前夜祭における費用補填をめぐる問題で、東京地検特捜部が安倍晋三前首相本人から事情聴取する方向で「調整している」と報じられ、安倍氏が、衆院議員会館の事務所前で記者団に「聞いていない」と語ったと伝えられた時点で【「安倍前首相聴取」が“被疑者取調べ”でなければならない理由】と題する記事を投稿した。そこでは、その「調整」が、単なる時期の問題だけではなく、「被疑者としての取調べ」なのか、「参考人」としての事実確認」なのかが、聴取を行うことの意味自体に関わる重大な問題であることを指摘した。

 12月21日に安倍氏の聴取が行われたこと、安倍氏の公設第一秘書が略式起訴の見通し、安倍氏は不起訴の見通しであることが、昨日、マスコミ各社で報じられた。

 この報道では、

「政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発された安倍氏本人から任意で事情聴取した」

とされ、刑事処分についての「不起訴」という言葉も使われており、それらからすれば、「被疑者としての取調べ」のように思われる。

 しかし、安倍氏に対して、黙秘権を告知した上で、その嫌疑について問い質すという本来の意味の「被疑者としての取調べ」が行われたのかどうか、この点は、検察への国民の信頼に関わる問題であるだけに、マスコミ各社は、検察当局からの十分な確認を行う必要がある。

【前記記事】でも述べたように、安倍氏が、国会で数限りなく吐き続けてきた「虚言」は、誰が考えてもウソだとわかる、子供じみたものだ。被疑者の取調べにおいて、安倍氏が、「費用の補填は知らなかった」などと弁解をしても、その不合理性、矛盾点を衝く「追及」を行って、「嘘」であることを認めさせることは、まともな特捜検事であれば、「いともたやすいこと」のように思える。

 そこで、改めて確認する必要があるのは、安倍氏の聴取に関して行われていたとされる「調整」の中身だ。安倍氏を、単独で「特捜検事による追及」にさらすということであれば、真実を供述させられるリスクが極めて大きい。そこで、最初から、リスクをなくした上での「事情聴取」にするよう「調整」が行われたのではないか。

 前首相だから、不合理な弁解に対しても、最初から追及すらしないという「大甘な」取扱いをしたとすれば、国民は到底納得しないであろう。

 いずれにせよ、この「桜を見る会」前夜祭問題についての検察の捜査が終結し、刑事処分が決着すれば、安倍氏は、これまで、国会で「虚偽答弁」を重ねてきたことについて、国会で説明を行うことになる。

 自民党内には、それを「非公開での安倍氏からの一方的な説明」で終わらせようとする動きがあるようだが、全く論外だ。国会の公開の場で、野党の質問に対して堂々と虚偽答弁をしていたのであるから、同様に、国会の公開の場で、野党の質問に対して、虚偽答弁についての弁明を行うのが当然だ。

 しかし、安倍氏の説明が、たちどころに破綻することは必至だ。

 もし、安倍氏が、費用補填を知らなかったとすると、実際には費用補填をしていたのに、安倍氏に対しては費用補填していないとの虚偽説明が行われていたことになる。それを、公設第一秘書が独断で行ったというのだろうか。

 もし、そうだとすれば、毎年、「桜を見る会」の前夜祭で費用を補填していたのに、政治資金収支報告書に記載しないという「犯罪」を独断で行っていた秘書が、それについて安倍氏から説明を求められ、自己の犯罪発覚を免れるために虚偽説明をし、総理大臣に国会で数えきれない程の回数の虚偽答弁をさせたことになる。国会議員の公設秘書としてあるまじき行いをした大悪人であり、「憲政史上、最低・最悪の公設秘書」だったことになる。

 そうであれば、その秘書を、国会で証人喚問、最低でも、参考人招致をして、なぜ、そのような、総理大臣に虚偽答弁させるという、秘書にあるまじき行為に及んだのかを説明させるのが当然だ(一般的には、議員秘書には直接説明を求めないというのがルールのようだが、それは、秘書が議員の指示に忠実に従うことが前提であり、独断で総理大臣に虚偽説明をして国会で虚偽答弁をさせた秘書の場合には、そのようなルールは適用されない)。

 もちろん、虚偽説明をされたことを知った、「被害者」の安倍氏は、総理大臣としての重大な汚点となる虚偽答弁をさせた秘書に対して、「激怒」するのが当然だ。厳正な対応をすることになるはずだ。

 公設秘書の身分はもともと極めて不安定なもので、当該国会議員が「解職届」を議長に提出するだけで、ただちに解雇される。公務員でありながら、公務員一般に適用される「懲戒免職」もない。それだけに、もし、独断で「虚偽説明」をして総理大臣に国会で虚偽答弁させたのであれば、そのような重大な職務義務違反をした公設秘書に対して、安倍氏はどのような対応をするのであろうか。

 しかし、以上のことは、すべて「公設秘書が独断で安倍氏に虚偽説明をして国会で虚偽答弁させた」ということが前提だ。

 問題は、果たして、その前提自体が正しいのかどうかだ。

 そういう前提であれば、そもそも、公設秘書の処分も、略式起訴・罰金で済まされるはずはない。前夜祭の費用補填を独断で行い、それについて収支報告書不記載の罪を犯し、費用補填について安倍氏から質問されても虚偽説明をして安倍首相に国会で虚偽答弁させ、その後に、今年春に、安倍晋三後援会の収支報告書を提出に当たって、独断で、重ねて不記載の報告書を、安倍氏に無断で提出したということであり、犯罪の情状として最悪である。犯罪の隠蔽のために重ねて不記載罪を犯したのであれば、その総額が3000万円程度であっても、罰金刑で済まされるわけがない。

 逆に言えば、もし、略式起訴で罰金刑で済まされるのであれば、検察も、収支報告書の不記載罪は、秘書の独断の「単独犯」ではないと判断していると見ることもできる。

 私は、昨年11月の記事【「桜を見る会」前夜祭、安倍首相説明の「詰み」を盤面解説】で、「桜を見る会」問題に関して、違法行為を否定する説明が「詰んでいる」として、安倍首相が「説明不能」の状況に陥っていることを指摘した。それ以降、安倍首相は、「詰み」に「詰み」に、「詰み」を重ねてきた。検察を巻き込み、公設秘書を「大悪人」に仕立て上げ、さらに嘘を重ねるのであろうか。

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菅内閣に代わる“救国内閣”の実現を

 今年2月に新型コロナ感染が始まって以降、想定外のことが多発してきたこの世の中だが、それにしても、これだけ「唖然とするような出来事」が連続的に起こるとは、思わなかった。
 

 先週土曜日に、ニコニコ生放送のネット番組に出演した菅義偉首相は、「ガースーです」と、コロナ感染拡大、医療崩壊の危険が報じられて、全国民に危機感が拡がりつつある状況に凡そ相応しくない、あまりにクダラナイ、冗談めいた挨拶をした後、分科会がGo To停止を求めていることについて聞かれて「それは考えていない」と明言した。しかし、その2日後の今週月曜日、「年末年始の期間、全国で一斉にGo To停止」を突然発表。国交省等関係官庁、旅行・観光業界の関係者や政府内部が大混乱に陥っていた最中に、二階幹事長ら自民党幹部、福岡ソフトバンクホークスの王貞治会長、俳優の杉良太郎氏などと開いた「8人の忘年会」に参加していたのとのことだ。


  12月に入って感染が急拡大しても、「Go Toはコロナ感染の原因になっていない」と強弁し続けていたが、その理由は、「Go Toによる感染者が200名余りしかいない」という話で、そんな旅行業者等からの自主申告の数字でGo Toと感染との因果関係などわかるわけもないことは、あまりに当然で、議論の余地すらない。


 そういう子供じみた言い訳までして、Go Toに固執していた菅首相が、突然「Go To全国一斉停止」を言い出した原因が、週末の世論調査での内閣支持率の急落にあることは誰の目にも明らかだ。要するに、感染拡大がどうなろうとGo Toは維持したいが、政権がもたなくなるのは絶対に嫌だということで、前言を、あっと言う間にひっくり返したのだ。


そして、その態度の急変に、国民が呆れ果てているところに、8人という大人数での会食。「感染対策は、国民がやるもので、我々政権の中枢にいる権力者は関係ない」ということなのだろうか。


 こんなような菅首相の行動に対して、与党公明党からも苦言が呈され、多くの国民は呆れ果てている。


 政府のトップ首相がこういう馬鹿げたことをやっている状況で、国民は、まともに感染対策を取り組むことなどできるだろうか。精神的にも体力的にもギリギリの状態で、急増するコロナ患者の医療に当たっている医療関係者は、気力を維持できるだろうか。 


 重大な問題は、菅首相の権力基盤である二階幹事長との関係が影響しているのか、Go Toトラベルの実施に関して、頑なな態度を取り続け、それを急転直下変更して困難を招いている菅首相の下で、感染対策と経済の両立という面で適切な対応がとれないのではないかということだ。


 今、絶対不可欠なことは、
(1)コロナ禍において地方の事業者を救済する措置として、Go Toが本当に唯一の手段なのか(事業者に対する給付金の支給に切り替えるべきではないか)の検討
(2)Go Toなどの「人の移動拡大措置」が、感染拡大に与える影響の客観的分析(旅行による体調の変化の全体的把握)を行った上で、Go Toの実施と停止の客観的な基準を明確化する
(3)国民の多くが、開催を疑問視している東京五輪について、どの時点で、どのような状況になったら開催の断念を決断するのかの判断基準の明確化
などだが、少なくとも、これらは、Go Toと東京五輪開催に異常にこだわった菅政権の下では行い得なかった。


 このような当然検討すべきことを検討した上で適切な政策を実行していくことは、菅内閣のままでは困難だ。


 そもそも、このような菅政権を誕生させたのが、今年9月の自民党総裁選であり、そこで、菅氏は、圧倒的多数の支持を集め、一方で、徹底して排除されたのが、安倍政権に批判的な立場を貫いてきた石破茂氏だ。そこで誕生した菅政権が、現在のような惨憺たる状況に陥っているという現実に、自民党議員全員が向き合うべきだ。


 少なくとも、今の国会の勢力分野のままで、野党中心の政権はあり得ない。また、このようなコロナ禍で解散総選挙をやることも考えにくい。とてもできない。


 国会で多数を占める自民党の国会議員一人ひとりが、責任をもってこの危機的な状況に立ち向かえる政権の在り方を考えるべきだ。


 この国を、ここまでダメにしてきたのは、安倍政権と、それを継承した菅政権だ。心ある自民党議員が集まって、緊急の政策の検討を行うとともに、それを実現できない菅首相の退陣を求め、今の政権をリセットして、国民の信頼を得て現在の困難な状況に立ち向かうことができる「救国内閣」を作るしかないのではないか。

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安倍前首相“被疑者取調べ”、秘書事件“公判審理”で、国会議員「投了」か

安倍晋三前首相側が「桜を見る会」前日に主催した夕食会をめぐり、参加費で賄えなかった費用計900万円余りを補填したとされる問題で、東京地検特捜部は臨時国会が5日の会期末で閉会した後、安倍氏本人から事情聴取する方向で「調整している」と報じられている(共同、12月3日)。

そして、この聴取要請について、安倍氏は、同日以降、何回か記者団の取材に応じ、「聞いていない」と述べている。「衆院議員会館の事務所前で記者団に語った。」と報じられている(読売、同日)。

特捜部が、安倍氏に任意聴取の要請を行ったことは既に報じられていたが、その聴取に関して「調整している」というのは何を意味するのか、それを安倍首相が「聞いていない」と答えたのはどういうことなのだろうか。

もちろん、この「桜を見る会」に関しては、数々の虚偽答弁を重ねてきた安倍氏である。「聞いていない」という話も、そのまま信用することなどできない。しかし、何も答えないか、「ノーコメント」で通せばよいのに、事務所前で、記者団にわざわざ「聞いていない」と答えたというのは、それなりの意味があると考えるべきであろう。

特捜部の任意聴取の要請に対して、安倍氏側が、聴取には応じる前提で、「日程」だけを調整しているとは考えられない。聴取に応じるのであれば、その判断が安倍氏の知らないところで行われるとは考えられない。

「調整」というのが、特捜部と安倍氏側との間で、「日程」だけではなく、何らかの「条件面での交渉」が行われていたとすると、その調整がついた段階で、安倍氏側に、正式に、聴取要請が伝えられる、ということも考えられないわけではない。

もちろん、この場合も、その調整の過程も、安倍氏にとっては重大な問題なので、その経過が報告されるのは当然であり、「全く聞いていない」ということはあり得ない。「正式に聴取の要請を受けたとは聞いていない」という趣旨であろう。

では、この「条件面での交渉」というのは、どういうことだろうか。

安倍氏側の代理人の弁護士からは、特捜部に対して、聴取は、あくまで参考人としての「事実確認」であり、被疑者としての取調べや黙秘権告知は行わない(聴取には弁護士が同席する)との条件を提示しているのではなかろうか。

聴取が、「被疑者としての取調べ」という意味合いを持つものか否かは、そもそも、この任意聴取が、どのような犯罪事実に関して、どの程度本人の「嫌疑」について行われるのかに関係する。

「桜を見る会」前夜祭には収支が発生していること、それが安倍氏に関連する政治団体の政治資金収支報告書に記載すべきところが記載されていなかったことについて、安倍氏が認識していた疑いが濃厚だ。

収支を記載してなかった犯罪事実が、どのような政治資金規正法違反として構成されているのかによって、安倍氏の嫌疑の程度、被疑者としての取調べになるのか、参考人としての聴取になるのかも異なってくる。

安倍氏のこれまでの発言・答弁の経過からして、補填の事実を知らなかったとは到底考えられないことは、私が、再三にわたって指摘してきたとおりだ。

1年余り前、この問題が国会で取り上げられて表面化した後、私は、ヤフーニュース等で、安倍首相の官邸での「ぶら下がり」の説明に明らかに不合理な点があることを指摘し続けた。その決定版と言えるのが、11月18日の【「ホテル主催夕食会」なら、安倍首相・事務所関係者の会費は支払われたのか】である。

ここで指摘しているように、当時の安倍氏の「説明」というのは、

安倍事務所にも後援会にも、一切、入金はなく出金もない。旅費や宿泊費は各参加者が直接支払いを行い、食事代についても領収書を発行していない。

というものだった。

このような説明が全く成り立たないことは誰でもわかることである。説明している安倍氏本人も、そう説明しないと「その収支を記載しなかった政治資金規正法を否定できなくなる」ということで、凡そ通るとは思えない「言い訳」であることがわかった上で、そのような説明をしていたはずだ。

そして、安倍首相の説明によると、夕食会は、ホテル側が主催し、夕食会費を1人5000円と決め、個別にそれを集金したもので、懇親会に出席した参加者全員が、個別に、1人5000円の飲食費をホテル側に支払ったことになる。その夕食会費を支払うべき「参加者」には、安倍首相夫妻や事務所関係者、来賓も含まれるはずだ。

もし、後援会が支払っているとすれば、その分、その「桜を見る会」前夜祭に関する安倍後援会側の「支出」が発生する。支払っていなければ、安倍首相や関係者は「無銭飲食」をしたことになる。

12月2日の参議院本会議での代表質問で、「安倍首相夫妻、事務所、後援会関係者は、夕食会の参加費をホテルに支払ったのか」という社民党の吉田忠男議員が行った質問に対して、安倍氏は、首相として答弁に立ち、

「私と妻や事務所等の職員は夕食会場で飲食を行っておりません」

と発言した。

しかし、前夜祭の夕食会に参加した安倍氏は、開会に当たって、雛壇に立ち乾杯の挨拶を行った。その際、ホテルのスタッフから、乾杯の飲み物のグラスを受け取り、「御唱和願います。」と言って乾杯の発声をし、グラスに口を付けた。それは、ホテルの飲食物の提供のサービスを受けたことに他ならない。

少なくとも、「私は夕食会場で飲食を行っておりません」というのが、「明らかな嘘」であることは、安倍氏自身、認識していなかったはずはない。なぜ、そういう嘘をつかなければならないのか。そうしないと、それまでの説明が嘘であったことを認めざるを得なくなるからである。

さらに決定的なのは、昨年の「桜を見る会」前夜祭についての収支を記載した政治資金収支報告書の提出時期が、今年の国会等での追及の後だということである。

2019年分の政治資金収支報告書の提出時期は、今年3月末日(コロナ禍で5月末に延期)だった。

前夜祭問題で、安倍氏が、野党、マスコミから厳しい追及を受けた後であり、その収支報告書上、前夜祭の収支をどのように処理するかは、安倍氏にとって極めて重大な問題であり、収支報告書提出の際に、安倍氏自身がホテル側から事実確認の結果を確かめることなく、前夜祭の収支を記載しない収支報告書を提出することは考えられない。

そういう意味で、安倍氏には、主催者の安倍晋三後援会の政治資金収支報告書に「桜を見る会」前夜祭の収支を記載すべきであることを認識していたのに、除外して提出したことについて犯罪の嫌疑が濃厚である。被疑者として、聴取に当たって「黙秘権の告知」を行った上で聴取するのが当然だ。

もし、安倍氏が、被疑者としてではなく、「事実確認のための参考人聴取」で行われるとすれば、それは、秘書を政治資金規正法違反で略式起訴して事件を幕引きさせるためのセレモニーだということになるが、そのような「形だけの聴取」は、安倍氏側から「秘書が虚偽説明をしており、補填の事実は知らなかった」との上申書を提出させるのと実質的に変わらない。

前首相にそのような取扱いを行うことは、国民として、到底納得できることではない。

しかし、この件についての安倍氏の秘書の略式起訴の見通しについての記事の中に、しきりに「収支の不記載」という言葉が出てくることからすると、検察が、安倍氏の秘書に政治資金規正法25条1項2号の「記載すべき事項の記載をしなかった」、つまり「不記載罪」を適用しようとしている可能性がある。

確かに、前夜祭の収支が、前夜祭の主催者であった安倍晋三後援会に帰属するものなのであれば、同後援会の政治収支報告書に記載すべき事項だったのに記載しなかった不記載罪が成立することは確かである。

この場合、記載義務があるのは会計責任者又は、その事務担当者であり、それら身分のある人だけが主体となる「身分犯」だ。収支報告書への記載の有無を実質的に決定する立場で不記載を会計責任者等に指示したのであれば、「身分なき共犯」として処罰する余地はあるが、会計責任者等以外の者が、記載すべき事項を記載しないことを認識していただけでは、原則として犯罪は成立しない。

もし、不記載罪を適用するのであれば、安倍氏は、前夜祭の収支を認識し、それを記載しない収支報告書を提出することを容認していた疑いが濃厚であっても、犯罪の嫌疑がないということになり、被疑者ではなく、参考人聴取で済ますことの説明が容易になる。

しかし、これまで、検察は、例えば、「政治資金の寄附」を受けているのに、それを記載しなかったというような違反について、不記載罪が成立する場合であっても、その不記載が、その収支報告書の全体的な収支の総額に影響するとして、収支の総額等についての「虚偽記入罪」を適用することが多かった。「虚偽記入罪」であれば、身分犯ではなく「何人についても犯罪が成立する」という判例がある。

実質的には不記載罪であっても、虚偽記入罪と構成することで犯罪の成立範囲を拡張してきたので、実際に、不記載罪で起訴した事例は少ない(日歯連闇献金事件では、平成研の会長代行であった村岡兼蔵氏が、会計責任者とともに不記載罪で起訴されている)。

そういう実務からすると、今回の安倍氏後援会の政治資金収支報告書の問題を「不記載罪」ととらえることには、安倍氏の聴取を被疑者としてではなく、参考人聴取で済まそうとの意図もがあるのかもしれない。

しかし、少なくとも、虚偽記入罪も成立する余地があり、それを視野に入れれば、安倍氏にも犯罪の嫌疑は十分にあるのであるから、やはり、黙秘権を告知した上で、被疑者としての取調べを行うべきだ。

安倍氏の秘書については、政治資金規正法違反で略式起訴の予定とされている。もし、簡易裁判所に略式起訴され、簡裁判事が、そのまま略式命令を出せば、事件は書面だけの審理で終わることになる。

しかし、国会でもマスコミでもこれだけ大きく取り上げられ、社会的関心が高い問題であるだけに、非公開の書面審理で終わらせることが適切とは思えない。

電通の違法残業事件では、東京地検は法人としての同社を労働基準法違反罪で略式起訴したが、東京簡裁は略式手続を「不相当」とし、公判が開かれた。

安倍氏の秘書が略式起訴された場合、担当した簡裁判事が、書面審理だけで済ますとは思えない。公判が開かれる可能性が高いと考えられる。

辞任したばかりの前首相が、検察に、政治資金規正法違反の被疑者として取調べを受けることの意味は大きい。

これまで、マスコミには虚偽説明、国会では虚偽答弁を繰り返してきた安倍氏も、いよいよ、国会議員「投了」ということにならざるを得ないのではなかろうか。

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「桜を見る会」前夜祭問題、2020年版“盤面解説” 安倍前首相「詰み」の結末

昨年の今頃、安倍晋三前首相が、「桜を見る会」の前日に都内のホテルで開催された「前夜祭」に関する公選法違反、政治資金規正法違反の疑いについて、官邸での「ぶら下がり会見」等で対応したが、その説明には重大な疑問が生じていた。

私は、2019年11月27日に投稿した【「桜を見る会」前夜祭、安倍首相説明の「詰み」を盤面解説】で、「桜を見る会」問題に関する安倍首相の「説明」の問題点を全体的に解説し、これらの違法行為を否定する安倍首相の説明が「詰んでいる」と表現して、この問題についての安倍首相が「説明不能」の状況に陥っていることを指摘した。

約1年を経過した11月23日、読売新聞のスクープにより、この問題に関して、東京地検特捜部が関係先を捜査していることが明らかになり、同日夜には、NHKが、前首相側が会費800万円以上を補填していたことを示す領収書の存在をスクープした。

これらの報道を受け、「前夜祭」としての夕食会について、安倍氏周辺は

「(政治資金)収支報告書に記載すべきだったという事実を担当秘書は知っていた」

と語り、政治資金収支報告書への不記載だったとの認識を示したと報じられている。

本日(11月25日)付け朝日新聞によると、

その理由について、秘書は、2013年から始まった夕食会の開催当初から記載していなかったため、例年その手法を継続していたと説明しているという。

一方、安倍氏が首相時代の国会答弁で、夕食会の費用の一部を負担した事実を重ねて否定していたことについて安倍氏周辺は「当時、秘書が安倍首相に虚偽の説明をしていた」と説明。安倍氏は昨年、国会答弁に先立って秘書に「事務所が(一部を)支出していることはないか」と確認していたという。その際、秘書は「払っていない」と虚偽の説明をしたとしている。

とのことだ。

1年前、安倍氏は、この前夜祭についての説明不能の状態に陥り、将棋で言えば、完全に「詰んでいる」のに「投了」せず、そのまま首相の座に居座り続けた。

そして、年が明けてから、1月末には、東京高検黒川検事長の定年後の勤務延長を、検察庁法に違反し過去の国会答弁にも反するにもかかわらず閣議決定し、さらに、その違法な定年後勤務延長の「辻褄合わせ」としか思えない「検察庁法改正案」で、内閣が検察幹部の定年延長で人事に介入することを可能にしようとして、国民全体から厳しい批判を浴びた。

その間、深刻化していた新型コロナ感染に関しても、突然の全国の学校を臨時休校要請、目前に迫っていた東京五輪開催を自らの政治的レガシーのために「1年後」に延期、「アベノマスク」の配布、一律10万円給付をめぐる混乱など、時の内閣として最低最悪の失態を繰り返した。

一方で、2019年7月の参議院選挙に関する公選法違反事件で河井前法相が逮捕されたことに関しても、党本部からの1億5000万円の選挙資金の提供が買収資金に与えられた疑いが浮上するなど、更に批判が高まり窮地に追い込まれた安倍氏は、8月末に、持病の悪化を理由に突然、首相辞任表明を行った。

今回、検察捜査によって「安倍前首相の答弁」が客観的に虚偽であったことが明らかになったのであるが、それについて、安倍氏側は、「秘書が虚偽説明をしていた」という、信じ難い「子供じみた言い訳」をしているというのだ。

7年以上にわたって続いた「戦後最長の第二次安倍内閣」が、実は、このような「嘘に嘘を重ねただけの『虚構内閣』」だったのではないかという深刻な疑問を抱かざるを得ない。

今回の検察捜査と関連する動きを踏まえて、昨年の「盤面解説」を更新し、

《2020年版「桜を見る会」前夜祭問題盤面解説》

として、この問題を改めて解説することとしたい(なお、昨年の「盤面解説」には、一部「詰将棋」としての誤りがあったので、その点は修正した。)。

「桜を見る会」追及が始まった時点での盤面

 まず、「桜を見る会」についての追及が始まり、前夜祭の問題に及んだ時点の盤面が《盤面1》(盤面は著者作成、以下同様)である。

《盤面1》

画像

 「5八」に位置する安倍首相の「玉(ぎょく:王将)」を守る駒として、「3七」の位置に安倍後援会の「金」(斜め後方以外の場所に1マス動かすことができる駒)、「7六」の位置にホテルニューオータニの「銀」(左右と後方以外の場所に1マス動かすことができる駒)という「二つの駒」があった。

 安倍後援会が、安倍首相の指示どおりに動くのは当然であり、ホテルニューオータニも、絶大な政治権力を持つ安倍首相にとっては、動かすことが容易な「駒」だったであろう。

 当初は、「前夜祭」としての夕食会の1人5000円という会費が安過ぎるのではないか、実際にはもっと高く、その差額を安倍後援会が補填しているのではないか、そうだとすると、安倍首相の地元の支援者が多数参加している夕食会は、「有権者に対する利益供与」(公選法違反)に当たるのではないか、が問題にされた。

 この段階で、安倍首相が強く意識したのは、「公選法違反」の問題であった。直近で、同じ有権者に対する利益供与の問題で、菅原一秀氏が、就任間もなく経済産業大臣を辞任していたこともあって、公選法問題は、総理大臣辞任につながりかねない重大リスクであった。《盤面1》上の「敵の駒」としては、敵陣「2二」の位置にある「飛車」(縦横どこまででも動かせる駒)であった。

 しかし、「桜を見る会」の「前夜祭」に関するリスクはそれだけではなかった。

政治団体である安倍後援会が深く関わっていることは明らかであり、それについて、収支が発生していれば、政治資金収支報告書に記載しなければならない。しかし、その収支報告書には、過去に、「桜を見る会」の「前夜祭」の収支が記載されたことはなく、収支の記載義務があるので、もろに政治資金規正法違反となる。

《盤面1》で言えば「9三」の「角」(前後左右の斜め方向にどこまでも動かせる駒)であった(昨年の盤面では、「6二」の「香車」としていたが、これは、「詰将棋」的に誤りだったので変更)。

 そして、盤面の中央に位置する駒が、マスコミやネット上の安倍政権に対する批判の言論の「金」であり、これには、私自身も含まれる。

 つまり、《盤面1》の上で、「安倍王将」を守る駒が「後援会」(金)、ホテルニューオータニ(銀)、

攻める方が、「公選法違反」(飛車)と「政治資金規正法違反」(角)、そして、それらを背景とする言論(金)という構図だった。

安倍首相にとって最大の「悪手」だった「6七玉」

 そこからの盤面の動きを示したのが《盤面2》だ。

 まず、野党側の追及は、「ホテルニューオータニの鶴の間でのパーティーは最低でも一人11000円」とされていることなどから、前夜祭の夕食パーティーが有権者への利益供与の公選法違反に当たるのではないかという指摘だった。

「2二飛車」は「2八飛車成り」で、一気に、「3七金」の安倍後援会に迫った。これによって「飛車」は「龍」(もともとの飛車の動きに加えて、斜め前方と斜め後方に1マス動かせる駒)となる。

《盤面2》

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 そこで、安倍首相側の意識は、「公選法違反」の「2八龍」の方に集中した。

この局面で、安倍首相は、後援会側に動くことによる公選法違反のリスクを恐れ、反対のホテルニューオータニ側に都合の良い説明をさせる方針をとった。

 2019年11月15日、安倍首相はぶら下がり会見で

すべての費用は参加者の自己負担。旅費・宿泊費は、各参加者が旅行代理店に支払いし、夕食会費用については、安倍事務所職員が1人5000円を集金してホテル名義の領収書を手交。集金した現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた。

と説明し、18日のぶら下がり会見でも、

安倍事務所にも後援会にも、一切、入金はなく出金もない。旅費や宿泊費は各参加者が直接支払いを行い、食事代についても領収書を発行していない。

と述べた。

 そして、安倍首相は、ホテルニューオータニ側が、1人5000円という会費の設定を行い、自ら参加者から会費を徴収したものだとして、「安倍後援会側に収支が発生しない」という説明をすることで、説明責任を、後援会ではなく、すべてホテルニューオータニ側に押しつけようとした。

 夕食会の参加費の価格設定も会費の徴収もすべてホテル側が行うという、「ホテル主催の宴会」であるかのように説明したのである。そうすれば、安倍後援会は一切関与せず、収支も発生しないことになる。

つまり、「3七金」の安倍後援会ではなく、「7六銀」のニューオータニの方に寄ろうとし、「6七玉」という手を指したのである。

 しかし、それが、安倍首相にとって、致命的な「悪手」(あくしゅ:形勢が悪化するような指し手)であったことは盤面上も明らかだ。

18日の夜、私は、【「ホテル主催夕食会」なら、安倍首相・事務所関係者の会費は支払われたのか】と題する記事を出した。

安倍首相が説明するとおり、ホテル側が会費の設定を行い、自ら参加者から会費を徴収するのであれば、その立食パーティーに参加した「安倍首相夫妻」、「後援会関係者」らからも会費を徴収するのが当然だ。会費を支払った場合は、安倍事務所側に支出が発生するので、後援会に政治資金収支報告書に記載がないことが政治資金規正法違反となる。逆に、会費を支払っていない場合には、「無銭飲食」になる。

これは、「ホテル主催夕食会だったのなら、安倍首相夫妻らは参加費を支払ったのか」という「6六金」の「王手」(おうて:次に相手玉を取ることができる状態)で「詰み」という盤面であった。

政治資金規正法違反の「9三角」が効いている(玉で「金」を取ろうとしても、前後左右の斜めにどこまででも動く「角」にとられてしまう)ので、「6六金」の王手で、完全に「詰み」なのである。

「虚偽答弁」で逃げきった安倍氏

ところが、安倍氏は、その後、12月2日の参議院本会議の代表質問においても、以下のような、「驚くべき答弁」を行った。

夕食会には、私は妻とともにゲストとして参加し、挨拶を行ったほか、参加者との写真撮影に応じた後、すぐに会場を後にしております。事務所や後援会の職員は写真撮影や集金等を行ったのみです。このようなことから、会費の支払はしておりません。

ちなみに、私と妻や事務所等の職員は夕食会場で飲食を行っておりません。

いずれにしても、夕食会の費用については、ホテル側との合意に基づき、夕食会場入口の受付において安倍事務所の職員が一人5000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払がなされたものと承知しております。

このように、同夕食会に関して、安倍晋三後援会としての収入、支出は一切ないことから、政治資金収支報告書への記載は必要ないものと認識しております。

桜を見る会の前日に開催された夕食会についてお尋ねがありました。

夕食会の価格設定については、私の事務所の職員がホテル側と各種段取りを相談する中で、出席者の大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえ、会場費も含めて800人規模、一人当たり5000円とすることでホテル側が設定したものであります。

私の事務所に確認を行った結果、ホテル側との相談過程においてホテル側から明細書等の発行はなく、加えて、ホテル側としては営業の秘密に関わることから公開を前提とした資料提供には応じかねることであったと報告を受けております。

これが、いかに「語るに落ちた答弁」か、説明すら要しないであろう。

そもそも、立食パーティーについて、主催者が一切会費の徴収に関わらず、ホテル側が直接参加者から会費を徴収するなどということがあり得ないことは、常識で考えれば明らかだ。

もし、万が一、立食パーティーで、ホテル側が、参加者から会費を徴収するということであれば、ホテル側は、飲食をするかしないかにかかわらず、参加者全員から徴収するのが当然である。安倍首相夫妻は、雛壇に立って乾杯の挨拶をする際に、ホテルスタッフからグラスを受け取っているのであり、それだけでホテルからサービスの提供を受けていることは明らかだ。

しかし、その後、安部氏は、衆参両院の予算委員会での野党からの追及に対しても、このような「語るに落ちた答弁」で押し通したのである。

2020年11月に明らかになった真実

そして、約1年が経過し、東京地検特捜部の捜査で、ホテルニューオータニから前夜祭に関する資料が提出され、安倍氏側が会費800万円以上を補填した事実を示す領収書の存在及びその領収書が安倍氏の資金管理団体宛てであったことが明らかになった。

つまり、安倍首相が、参議院本会議の代表質問で行った答弁は、丸ごと「大ウソ」だったことが明らかになった。しかも、安倍首相側は、「当時、秘書が安倍首相に虚偽の説明をしていた」などと、さらに「幼稚園児以下の『言い訳』」を重ねているというのである。

このような状況を、改めて「盤面」で表現したのが、以下である。

《盤面2020》

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本来は、昨年12月以降の国会での質疑で、「ホテルが会費を徴収する夕食会だったのなら、安倍首相夫妻らは参加費を支払わなければならないはず。支払わないことが許容されるのなら、ホテルが会費徴収する夕食会ではない」という追及を続ける「6六金」の「王手」で「詰み」だったはずである。ところが、「私と妻や事務所等の職員は夕食会場で飲食を行っておりません」という代表質問への答弁の後、この点の追及は行われないまま終わってしまった。結局、安倍首相批判の言論の「5五金」は、王手として指されることなく「無力化」してしまったのである。

そして、今回明らかになった東京地検特捜部の捜査は、「6七」の「安倍王将」への王手としての「6六金」である。「安倍王将」は、昨年11月に最初にこの問題で追及を受けた時点では、ここに検察の「金」が打たれることは、想定していなかったのかも知れない。

その時点では、「1六」に、「安倍王将」を守る駒として「飛車」が存在していた。それは、「官邸の守護神」と言われた「黒川検事長」の存在である。この「飛車」が効いていれば、「6六金」の特捜部の「一手」はあり得なかった。ところが、その「飛車」は、今年5月の黒川検事長「賭け麻雀」辞任で、消滅してしまった。

この「金」は、「7六銀」のホテルニューオータニに対する攻めにもなっており、その攻めのために、同ホテルは明細書、領収書の控え等を検察に提供し、それによって、安倍氏の資金管理団体による飲食代の補填の事実が明らかになった。破綻した説明による「逃げ切り」の後、無力化していた「批判言論」の「5五金」も、今回の報道を受けて再びその力を増し、安倍氏の往く手を阻んでいる。

どう考えても、「安倍王将」は、ここで「投了」である。首相として国民を欺いた責任をとって議員辞職するのが当然である。

ところが、信じ難いことに、安倍氏は、それでも「投了」せず、「秘書に騙されていた」という「子供じみた言い訳」を、恥ずかしげもなく行おうとしているのである。

安倍氏の認識の根拠は、「秘書の説明」だけではないはずだ。そもそも、安倍氏は、すべてホテル側が参加者から個別に飲食代金を集金した、という常識ではあり得ない説明を行っているのである。そのような説明を、ニューオータニ側と連絡することなく一方的に行うこともあり得ない。その際、飲食代の補填の有無を確認するのが当然で、その時点で補填の事実を把握したはずだ。

ウソに嘘を重ねた「悪夢の第2次安倍内閣」

この「桜を見る会」問題には、安倍政権による、日本の行政組織の支配構図と、安倍首相の「身内びいき」の姿勢という安倍政権の本質的な問題が端的に表れている。

なぜ、本来、各界で功労・功績があった人達を慰労することを目的としているのに、功労者として招待された人間に対する接遇に気を遣うことはほとんどなく、一方で、安倍後援会関係者は、開場時刻前に何台ものバスで乗り付けて、ふんだんな飲食やお土産までふるまわれるのか。

そこには、これまで、森友・加計学園問題でもしばしば問題とされてきた、安倍一強体制の下での「権力者への忖度」が影響していたのであろう。

運営の実務を行う内閣府や官邸の職員には、「桜を見る会」が、安倍後援会側の意向で「地元有権者歓待行事」と化していることに違和感を覚えても、異を唱えることなどできない。傍若無人に大型バスで開場に乗り込んでくる安倍後援会側の行動を黙認するしかなかったのであろう。

開催経費が予算を超えて膨張していったのも、後援会の招待者が増え、地元の参加者に十分な飲食の提供など歓待をしようとする要求に抵抗できなかった結果であり、内閣府等の職員達は、各界の功労・功績者の慰労という本来の目的との関係は気になりつつも、実際にはそれを考える余裕はなかったのであろう。そのような公的行事としての「桜を見る会」の地元有権者歓待のための私物化の延長上に、「前夜祭」での違法行為の問題がある。

何より重要なのは、第二次安倍政権の7年余、このように、誰がどう考えてもおかしなことが問題にされても、ウソに嘘を重ね、「違法なことはやっていない」と開き直るということを繰り返し、それが、官僚や政治家等の周囲の忖度によって正当化されてきたということである。言い訳が破綻しているのに、「語るに落ちた『言い訳』」で国会追及を逃げ切るということを繰り返してきたのである。

安倍氏が、「桜を見る会」前夜祭の説明が破綻しているのに、そのまま首相の座に居座り続けてきた約8か月の間に日本の社会で起きたことを振り返ると、「悪夢」そのものである。

今後、この事件の検察捜査はどうなるのか、特捜部という「金」の動きに注目が集まることになるだろう。

しかし、それ以前の問題として、我々は、安倍首相が、この問題についてどのような説明をしてきたのか、それを当時官房長官であった菅義偉現首相がどのように擁護してきたのかを検証しなければならない。

そして、安倍政権とその流れを継承する現政権が「説明責任」を負う姿勢が完全に欠如した政権であることを、問題の本質としてとらえるべきだろう。

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国内外の感染拡大で絶望的な東京五輪、「開催中止」前提の対応をすべき

今年7月末に出した記事【”東京五輪協賛金追加拠出の是非”を、企業コンプライアンスの観点から考える】で、スポンサー企業が東京五輪に対して協賛金を拠出することに関する企業コンプライアンスの問題について以下の内容を指摘した。

・新型コロナウイルスの感染拡大によって積極的な宣伝活動が難しい上に、大会の簡素化によって期待した宣伝効果は見込めず、追加費用を拠出することのメリットは大幅に縮小しており、新型コロナの直撃を受けて業績が悪化しているスポンサー企業にとって、追加拠出を正当化する理由は見出し難い。

・そして、追加拠出に応じた場合、現時点でも大多数の国民が予想しているとおり、結局、東京五輪開催が「中止」になっても、拠出した費用は返還されない。

・それによって株主の利益が損なわれることが予想できるのに、敢えて拠出を決定したとすれば、会社法上、拠出を決定した取締役が善管注意義務違反に問われ、株主からの代表訴訟で責任を問われる可能性もある。

 このような指摘が認識されているからか、NHKが国内のスポンサー企業にアンケート調査を行った結果(11月14日)、12月末で契約が切れるスポンサー契約を延長するかどうか尋ねたところ、61%に当たる33社が「決めていない」と回答したとのことだ。多くのスポンサー企業が、スポンサー企業として追加拠出するかどうかについて、非常に困難な判断を迫られているようだ。

 【前記記事】で指摘したことは、現状においても全く変わるところはない。むしろ、国内の感染者が急増し、米国、欧州等での感染が急拡大し、再度のロックダウンを行う国もあり、日本でも、全国で感染者が急増して、感染者総数は、連日、最多を更新している。重症者数も4月の第一波を超えようとしているこの状況で、来年夏東京五輪開催を考えること自体が「常識外れ」とも言える。開催を前提にした追加拠出を行うことの企業コンプライアンス上の問題は一層重大となっている。

 こうした中で、IOCのバッハ会長が来日し、国立競技場を視察したり、「人類がウイルスに打ち勝った証として、東京五輪開催を実現する」などと述べる菅首相や小池都知事、大会組織委員会の森会長と会談した。日本のメディアは、これによって、新型コロナウイルスの感染拡大で五輪がやれるかやれないかの空気が出始めている中、IOCと日本側双方が開催の意思を確認したかのように報じている。

 しかし、スポンサー企業が、このようなバッハ会長の動きや発言に惑わされてはならない。東京五輪開催の意思を強調するバッハ会長の意図を、慎重に見極める必要がある。

 その点に関して、先日、BS・TBSの番組で、元東京五輪招致準備担当課長の鈴木知幸氏が注目すべき発言を行った。

 最悪「中止」という選択肢を選ばざるを得なかったときに、IOCが決断したのではないと、WHOに言わせようとしている。バッハは。これはやむを得ないと。WHOがだめだと言っているのだから。これはあまり言われていないんですが、組織委員会はものすごく危機感をもって。WHOにそう言われてしまったら反論のしようもない。

 WHOを使って「中止」という言葉を引き出すというようなことを、僕は腹に持っているのではないか、と思っています。

 IOC側が、開催中止を決定する場合に、「WHOの勧告によって開催は中止せざるを得ない」という理由づけにして責任回避を図ろうとしているというのは、来日して「東京五輪開催の意思」を強調したIOC幹部の意図を考える上で重要な要素だと考えられる。

 米国・欧州の感染急拡大の現状から、主要国には、東京五輪への選手や関係者などを日本に派遣する準備を行う余裕など全くなく、最終的には開催中止の可能性が高いとの認識は、IOC側も当然持っているはずだ。ただ、その「開催中止の判断」についてIOCが責任を負わされないようにするということを最優先に考えているということだろう。

 日本政府や東京五輪組織委員会も、「責任回避」を優先しているという面では同様であろう。

 IOCが開催の意思を示している以上、日本側から開催中止を口にすることはできない。もし、日本側が先に断念したら、開催中止の責任は日本側が負うことになる。

 五輪中止に伴うスポンサー企業等への損害賠償責任がどれだけの金額になるのか、想像がつかないとも言われている。その責任は、IOCも日本側も絶対に負いたくないということだろう。

 そういう「責任回避」合戦のために、実際には開催困難であるのに、開催中止が、明確に決定されることなく、今後、時間が経過していくことになりかねない。

 それが、追加拠出を行った場合のスポンサー企業のみならず、国民全体にも、重大な損失を生じさせることになる。

 このような「責任回避」合戦に惑わされることなく、「東京五輪開催中止」は避けられないという事実を冷静に見極めた対応をとることが必要であろう。それは、スポンサー企業だけでない。開催中止を表向き公言できない政府や、東京都等の自治体も、「開催中止」を念頭においた対応を行うことが必要だ。それを行わないことは日本社会に重大な不利益を与える。「社会の要請に応える」という意味のコンプライアンスに違反することは明らかだ。

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