2026年7月上旬、吉松源昭県議が記者会見を開き、「議長就任前に自民党県議団幹部から約2000万円を要求されて支払った」「県民の税金も県職員もカツアゲされている」と述べたことを発端とする、福岡県議会の「金銭授受問題」は、9月17日、県弁護士会の推薦に基づく第三者委員会委員5人と調査担当弁護士8人の計13人の弁護士の選任議案が可決されて正式発足したことで新たな局面を迎えることになった。
18日の記者会見には委員5人が出席し、森山大輔委員長が、第三者委員会の独立性について
「日弁連のガイドラインに基づいて、委託者である県議会とは独立した、利害関係を有していないという立場で調査を行う。報告書の内容を事前に開示する、あるいはその内容について要望を受ける、そういうことは一切しません」
と明言する一方、
「報道によると供述が激しく対立している。事実の調査、ヒアリング、資料の提出はすべて任意の協力ベースですので、相当困難、ハードルの高い調査のテーマになっていると覚悟しています」
と調査の限界も率直に認めたうえ、
「相手方に対して説得していく。検事・弁護士・裁判官の仕事も似ていて、相手の話を聞いて真実をつかみ取っていく」
と事実解明に向けての決意を述べた。
上記会見を報道で知った私は、
《森山大輔弁護士は、特捜経験豊富な元検事として、私が最も信頼し実務能力を高く評価する弁護士。角川歴彦氏の控訴審弁護でも私が主任弁護人、副主任が森山弁護士。今回の第三者委員会の委員長としても最適任だと思う。》
とX投稿した。
本稿では、この投稿について少し詳しく説明するとともに、今回の第三者委員会の特性、設置経緯、今後の調査のポイントなどについて、多くの第三者委員会に関わり第三者委員会のあり方を検討してきた立場から解説することとしたい。
オウム自動小銃密造事件での森山検事とのコラボ
森山大輔氏との出会いは、東京地検公安部でのオウム自動小銃大量密造事件の捜査であった。私が主任検察官として捜査を総括し、森山検事は主犯者の取調べを担当し、総括補佐も担ってくれた。
1995年5月16日の麻原彰晃逮捕後、地下鉄サリン事件などが次々と立件される中で、東京地検公安部が担当することになったのが自動小銃大量密造事件だった。オウム真理教は、ジェノサイドによる日本征服のための武装化を計画していた。毒ガス開発と並行し、自動小銃AK74を日本で密造することを企て、麻原から1000丁の製造を指示されたのが教団幹部の広瀬健一と横山真人だった。
オウム幹部の村井秀夫らが見本としてロシアから持ち込んだAK-74と5.45mm弾を基に広瀬・横山が中心となって設計を進め、1993年4月に、第7サティアン等に工作機械を多数設置して銃器工場を整備し、1995年1月1日には試作品1丁を完成させた。これほどの短期間で本格的自動小銃の製造を完遂したことは、当時のオウムの組織力を示すものだった。
オウムの最終目標は、「1000丁の自動小銃と100万発の銃弾を製造し、主要都市で同時多発的にサリンを散布してハルマゲドンを惹起、その混乱に乗じて首都圏中枢でクーデターを起こし、オウム国家を建国すること」にあった。
1995年3月に強制捜査が行われたため、自動小銃の大量製造には至らなかったが、捜査が数か月遅れていれば、ジェノサイドが実行されていた可能性がある。
当時、武器等製造法違反の事例は、暴力団による手製の改造拳銃の密造程度で、軍用武器を本格的に量産しようと「武器製造事業」を違法に行った事件は本邦初であり、捜査には多くの困難があった。
「1丁の試作」ではなく「1000丁の密造の未遂」と構成するためには、量産が現実的に可能なレベルに達していたことを立証しなければならない。そのためには、殺傷能力を持つ自動小銃を構成する銃身、銃床、撃鉄、弾倉のそれぞれの製造上の技術的ハードルと、その克服のプロセスの解明が必要だった。そこで、捜査班から、銃身・銃床・撃鉄・弾倉それぞれに担当検事を指名して、製造上の問題点を把握させた。
同年7月初め、勾留中の幹部に加え、上九一色村で修行中の信者ら約30人が逮捕・送致され、応援検事を含む十数名の捜査班で取り調べを行った。主犯格の広瀬を担当した森山検事の取調べに対して、広瀬は、製造計画とその実行上の諸問題がどのように克服されたのかを詳細に説明したことで、事実解明は大きく進展した。
この事件は、私が検事時代に関わった警察送致事件では最大かつ最困難な事件だった。私が事件の捜査の組み立てを行い、解明すべき最も重要な点を、森山検事が取調べで解明してくれた。オウム真理教という高度知能集団による「違法武器製造事業」の解明ができたことは、「郷原=森山コラボ」の成果だったといえるだろう。
それぞれ検察を退職し、弁護士に
森山検事は、その後、在ベルギーEU日本政府代表部一等書記官としての出向、東京地検特捜部への在籍の後、2005年3月末に退官し、福岡県弁護士会に登録し、弁護士として活躍している。
私も、長崎地検次席検事で自民党長崎県連事件の捜査指揮を行ったのを最後に捜査の現場からは離れ、その後、法務総合研究所総括研究官、法科大学院派遣検察官を経て、2006年3月末に退官した。
既に弁護士になっていた森山氏には、最初の頃、私が仕事を紹介したことはあったが、一緒に弁護士としての業務を行ったことはなかった。それが今回、初めて実現したのが、東京五輪・パラリンピックのスポンサー選定をめぐる贈賄罪に問われ、一貫して無実を訴える角川歴彦氏の刑事控訴審弁護だった。
昨年7月に、私が悪性リンパ腫ステージⅣと診断され緊急入院した際、森山氏から見舞いのメールをもらったことを契機に、その後、メールのやり取りが続いていた。今年1月に角川氏が一審有罪判決を受けた後、控訴審の依頼を受けた私は、悪性リンパ腫は寛解したとは言え、抗がん剤治療終了直後でもあり、実務能力が高く信頼できる弁護士に加わってもらわなければ受任は困難だと考え、角川氏に提案したのが、福岡の森山弁護士への弁護の依頼だった。角川氏からの直接の依頼もあり、森山弁護士は、福岡で様々な案件で忙殺されている中で受任を決断してくれた。
今回、福岡県議会の第三者委員会委員長として森山弁護士が、「相当困難、ハードルの高い調査」と覚悟を語ったうえ、「相手の話を聞いて真実をつかみ取っていく」との言葉に、私は1995年7月のオウム自動小銃事件の熱い夏を思い出した。
あのとき森山検事が、広瀬の取調べで、自動小銃の製造における技術的問題点の克服の詳細を引き出してくれた。それは、既にサリン事件への関与を自白し、おそらく死刑を覚悟していてであろう広瀬という一人の人間と森山検事が正面から対峙した結果である。広瀬は、「もう麻原には帰依できません」という心境に至り、森山検事に洗いざらい真実を話してくれたのである。
第三者委員会とのかかわり
私は、「第三者委員会」の草分け的なものと言える、消費期限切れ原料使用問題を受けての「不二家信頼回復対策会議」で議長を務めたのをはじめ、キリンHDのメルシャン問題第三者委員会、田辺三菱製薬メドウェイ問題第三者委員会等の多数の第三者委員会委員長を務め、九州電力やらせメール問題第三者委員会では、原発立地地域の自治体首長等の有力者との不透明な関係が根本原因だとする委員会報告書を取りまとめ、第三者委員会の指摘の受け入れを拒否した会社側と対立した経験もある。(【第三者委員会は企業を変えられるか~九州電力「やらせメール」問題の深層】)
最近では、第三者委員会を設置するケースが増えた関係か、会社側や調査対象者側から、調査及び報告書の内容に不合理な点があるとして検討や対応を依頼され、報告書の問題を指摘し、対応を求める活動を行った事例も複数ある。
このように様々な立場で第三者委員会に関わってきた経験から、「第三者委員会の在り方」について分析検討を行い、日経bizgate《郷原弁護士のコンプライアンス指南塾》などで詳細に解説してきた。(【企業の不祥事対応における第三者委員会の活用(1)第三者委設置の判断と人選】【(2)調査事項、調査手法、報告書確定のプロセス】【(3)費用・報酬額、全体総括】)
私の「第三者委員会」に関する経験と知見に基づいて、福岡県議会の第三者委員会について、公表されていることを基に、今回の第三者委員会の特性、委員、調査員の選任プロセス、委員会及び調査の費用、調査手法などについて述べることとしたい。
本件第三者委員会の設置経緯と目的
第三者委員会は、企業や官公庁、地方自治体などの組織において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等が発生した場合、不祥事によって失墜した社会的信頼を回復するため、企業等から独立した委員のみをもって構成され、調査を行い、調査結果を報告し、公表する委員会である。
その設置の経緯には二つのパターンがある。
一つは、当該組織が不祥事を認めてトップが謝罪会見等を行い、それに伴い第三者委員会の設置を発表するパターンである。この場合、不祥事の存在自体には争いはなく、委員会が行うことは、詳細な事実解明、原因分析、再発防止策の提言等である。
もう一つは、不祥事が指摘されているものの、その存否をめぐって争いがあり、その争いに決着をつけるために第三者委員会が設置されるパターンである。これには、不祥事の疑いが表面化している場合と、第三者委員会の設置によって初めて正面化する場合とがある。比較的小規模の上場企業などでは、問題が表面化しておらず、企業が批判を受ける前に、内部の対立抗争が背景となって、設置の是非についての検討や議論が不十分なまま、第三者委員会の設置が決定され、それ自体で企業に重大なダメージが生じることもある。
上記【解説(1)】(2頁)でも述べているように、第三者委員会の設置をめぐる議論は、設置すべきとの意見が「正義」、設置への反対が「不正義」という図式でとらえられやすいが、そのように単純化できるものではない。当事者の組織の性格、事案の内容等に応じて慎重に判断されるべきである。
不祥事の存否をめぐって争いがある場合の第三者委員会の設置は、第三者委員会の調査報告書が公表されても、その評価をめぐってさらに対立が深刻化することもある。斎藤元彦知事のパワハラをめぐって設置された兵庫県の第三者委員会がその典型例である(一方、山中竹春市長のパワハラをめぐって設置された横浜市の第三者委員会は、山中氏が調査報告書を受け入れ辞職したことで、一旦は決着がついたように見えるが、市長選で山中氏が出馬して当選するようなことがあれば兵庫県と同様に対立が再燃する可能性もある)。
今回の福岡県議会の問題は、吉松県議の告発によって金銭授受という「不祥事」が表面化した事例であるが、疑惑の当事者はその事実を全面否定し、現在も「不祥事」の存否をめぐって激しい対立が続いている。方針が変遷した末に、県議会は第三者委員会の設置を決定したが、いずれにせよ、第三者調査の対象として最困難事案であることは、委員長の森山弁護士が会見で述べているとおりだ。
このような場合、第三者委員会の委員構成、調査体制、調査実施方法等が、調査の目的実現のために十分なものか否か、委員会調査に対してステークホルダーの信頼が得られているのかなどが重要となる
第三者委員会の委員の選任、調査体制の構築については、【前掲解説(1)】(2頁)でも述べている。企業不祥事の場合、一般的に、第三者委員会の設置を決定する会社執行部が委員長・委員の人選を行うことになるが、会社経営陣が自らの判断で適切な人物を選定することは困難であり、何らかの形で外部者のサポートを受けて選任することになることが多い。また、調査体制の構築に関しても、本来、調査の主体は第三者委員会であり、第三者委員会が調査方針を決定し、必要に応じて調査補助者を選定し、調査補助者に具体的な調査を指示するのが原則のはずだが、依頼者と関係の深い法律事務所が調査補助者の弁護士を多数送り込み、実質的に調査を主導することで、調査の中立性、客観性に疑念が生じるケースもある。
ここで重要なことは、どのような候補者の中からどのような観点で行ったのかの説明責任が果たせるよう、適切なプロセスを経て人選を行うことである。「依頼者と利害関係が全くない」というだけでは説明が十分とは言えない。
福岡県議会の第三者委員会については、第三者委員会設置に関して、2026年8月17日に、第三者委員会の設置と、外部の専門家(弁護士)を活用して調査を行うという大枠を定めた議員提出第2号議案「地方自治法第100条の2の規定に基づく専門的知見の活用について」が可決され、 9月17日には、調査を実施するにあたり、担当する専門家を具体的に明記するために提出された議員提出第3号議案「地方自治法第100条の2の規定に基づく専門的知見の活用についての議決内容の一部変更について」が可決され、委員5名および調査担当弁護士8名、計13名の体制が正式に決定・承認された。
その5名の委員の中での互選によって委員長に森山弁護士が選任され、委員には、元福岡地裁所長の片山昭人弁護士が含まれている。
そのような第三者委員会メンバーについて、県議会での決議に際して、調査担当も含めた13名の氏名がすべて明らかにされ、調査に加わるメンバー全員が、議会の審議を経て決定されている。第三者委員会の設置については県議会議長らの方針は変遷したものの、県議会での審議・議決により、公正かつ透明な第三者委員会設置及びメンバーの選定が確保されていると言える。
なお、事実関係の大枠が明らかになっていて、それに対して評価判断を行うことが中心の事案であれば元地裁所長の片山氏が委員長になることも考え得るところだが、本件は、金銭授受をめぐる激しい対立が続いていて、まさに事実の究明が最大の責務となるのであり、検察官・弁護士としての経験に基づいて森山氏が第三者委員会調査全体を総括していくのが適切であろう。
調査手法、情報提供窓口の設置、匿名アンケートの活用
今回の第三者委員会の調査手法としては、関係者ヒアリング、資料収集・検討、デジタルフォレンジックなどが中心となる。それ以外に、現職議員全員及びそれ以外の関係者を対象にアンケート調査を行うこと、議員等に限らず広く情報収集する情報収集窓口の設置を検討していることを森山委員長が会見で明らかにしている。
金銭授受の告発者によれば、問題は単発的なものではなく、長年にわたって福岡県議会に根差してきた構造的な問題であり、それが事実であれば、既に具体的に指摘されている事実以外の金銭授受や、それに関連する事実を知る人は相当数に上るはずである。
このような場合には、情報提供窓口で得られる供述やアンケートの結果は、ヒアリングによる事実解明の足掛かりを把握する有力な足掛かりとなる。
注意しなければならないのは、アンケート等による匿名供述の調査結果における位置付けである。【前掲解説(2)】(3頁)でも指摘したように、匿名アンケートの自由記述回答などをそのまま調査報告書に記載してマスコミ受けのするフレーズにするような第三者委員会もあったが、そのような調査報告書の事実認定には多くの問題がある。実際に、上記解説で例示したスルガ銀行第三者委員会報告書については訴訟が提起され、委員会の認定事実を一部否定する判決が出されている。
第三者委員会における事実認定においては、客観資料、関係者供述などあらゆる関係する証拠に基づき、対立する供述の信用性を評価することが必要となるのであり、また、匿名供述を事実認定の根拠とすることについては慎重な検討が求められる。それらを適切に行うために証拠収集と事実認定の経験知が重要であることは言うまでもない。
第三者委員会の費用と県民の負担をどう見るか
問題となっているのが、第三者委員会の費用である。福岡県議会が設置した第三者委員会の費用は約1億965万円、すべて県予算(県側は予備費)から支出される。負担者が企業不祥事の場合のように株主ではなく県民であることから、1億円を超える金額に反発が生じているようだ。
しかし、13人の弁護士による6か月余の調査期間を予定していることを考えれば、上記費用の見込みは、直近で行われた横浜市の山中市長のパワハラ問題での第三者調査が3人の弁護士による3か月の調査費用が3200万円だったことと比較しても(横浜市の第三者調査は、ヒアリング、資料検討、アンケート、情報提供窓口の費用のみであるのに対して、福岡県の第三者委員会の調査費用は、デジタルフォレンジック費用も含んでいる。)、相当程度抑えられた予算金額だと思われる。
【前掲解説(3)】(1頁)でも述べたように、第三者委員会の報酬額を時間制で算定することにした場合、ヒアリングや会議に多数の弁護士が参加して、各自が「所要時間」を計上することによって膨大な金額になることもある。そのような大手法律事務所、大手監査法人等によるビジネスと化している第三者委員会調査であれば、同程度の調査で数億円に上る費用がかかることは必至だと言える。
今回の第三者委員会も「ガイドライン準拠」と明示しているので、時間制で報酬が算定されることになる。その場合の総費用は各弁護士の所要時間によることになる。今回の第三者委員会の費用の予算額が相当程度抑制的に設定されているのも、森山委員長のマネジメントを前提にしていると考えられる。
今回の問題は、福岡県議会という地方議会の議長等のポストをめぐる不正な金銭授受の疑いが生じ、長年にわたる県議会の構造的問題を解明する必要があるために第三者委員会が設置されたものである。
県民の間に、「県議会議員が起こした不始末のためにかかる費用をなぜ県民が負担しなければならないのか」という疑問が生じるのも無理からぬ面はある。しかし、そもそも、そのような疑惑を持たれるような県議会議員を選任したのは福岡県民なのである。県民にとって、今回の第三者委員会の費用は、二元代表制の一翼を担う県議会において、公正な民主主義が機能する環境を実現するためのコストと考えるべきではなかろうか。
百条委員会設置をめぐる動きとの関係
地方自治法100条の2に基づく第三者委員会の調査は「任意調査」であることから、それとは別に、出頭拒否や虚偽証言に対する罰則の強制力がある地方自治法100条に基づく「百条委員会」を県議会自身が設置しようとする動きがあると報じられている。
しかし、百条委員会の調査に強制力があると言っても、今回の調査テーマのような機微に触れる問題について、公開の委員会の場で証言を求めることで真相を解明するのはかなり困難だと言わざるを得ない。県知事のパワハラに関して設置された兵庫県議会の百条委員会、市長の経歴詐称問題について設置された伊東市の百条委員会、いずれも事案の真相解明にはほど遠く、対立と混迷を深める結果になったことからも明らかであろう。
極めてハードルが高い調査ではあるが、その困難を克服し、金銭授受、或いはそのような疑惑が生じることの背景となった県議会の構造問題を解明するために、森山委員長を中心とする第三者委員会とその調査チームはベストの体制である。県議会議員や関係者は調査に最大限に協力すべきであり、第三者委員会は、金銭授受問題の真相、背景となった県議会の構造問題の解明に向けて尽力してもらいたい。
角川氏刑事・民事の訴訟での「郷原=森山コラボ」と第三者委員会調査への期待
最後に、角川歴彦氏の刑事・民事の訴訟についても触れておこう。私と森山弁護士の検察実務経験を活用した「渾身の控訴趣意書」は、8月7日に東京高裁に提出し、これから控訴審の審理が始まる。一方、角川氏は、今年6月、刑事事件とは別に、KADOKAWAの「ガバナンス検証委員会」が角川氏に弁解の機会を一切与えずに有罪と決めつけるような調査結果を公表したことについて、名誉毀損と刑事被告人の防御権侵害があったとして社長の夏野剛氏と調査を担当した国廣正弁護士を訴える民事訴訟を提起しており、私と森山弁護士が原告訴訟代理人を務めている(【「オアシス」筆頭株主浮上、KADOKAWA夏野体制の“原罪”と人質司法への加担を問う】)。
その訴訟の第一回口頭弁論で意見陳述を行った角川氏は、「第三者委員会まがい」のガバナンス検証委員会の報告書の公表が、同氏が有罪であるかのような認識を社内や世の中に与え、さらに誤った一審有罪判決が出されることで二重に断罪されたことを訴えた後、以下のように述べた。
どうして、そのようなことが起きたのか、一審判決を受けてメンバーを一新した刑事弁護団の調査によって次第に明らかになってきました。東京地裁の一審判決は、争点設定から誤っていて、法令適用、事実認定、そして有罪の結論に重大な誤りがあることがわかりました。しかも、マスコミの代表取材に応じたことを理由に私を逮捕・勾留し、生命の危機にまで追い込んだ身柄拘束の根拠とされた事実が、今回の贈賄という犯罪を構成するものではなかったことまで明らかになりました。
ここで角川氏が述べている「身柄拘束の根拠とされた事実が、今回の贈賄という犯罪を構成するものではなかった」が、具体的にどういうことなのか、刑事控訴審で検察の重大な問題が徐々に世の中に明らかになっていくことになる。
角川氏と夏野社長・国廣弁護士との民事訴訟では、人質司法に加担して角川氏の人権を著しく侵害した「不祥事調査」の在り方が重要な争点となる。
角川氏をめぐる刑事、民事の訴訟での「郷原=森山コラボ」で、不祥事が多発し信頼を失墜している検察の在り方に対しても、組織の不祥事対応としての「第三者調査」の在り方に対しても、重要な問題提起を行っていくことに、手応えを感じている。
今後、森山委員長を中心に行われる福岡県議会の第三者委員会の調査が、公正な手続で収集した証拠により適正な事実認定を行うという「調査、捜査の本来の在り方」を示すものとなることを期待したい。
