リオ五輪招致をめぐるBOC会長逮捕の容疑は、東京五輪招致疑惑と“全く同じ構図”

昨年、開催されたリオデジャネイロオリンピックの招致をめぐって、ブラジルの捜査当局は、5日、開催都市を決める投票権を持つ委員の票の買収に関与した疑いが強まったとして、ブラジル・オリンピック委員会(BOC)のカルロス・ヌズマン会長を逮捕したことが、マスコミで報じられている。

NHKのニュースによると、ブラジルの捜査当局は、先月、リオデジャネイロへの招致が決まった2009年のIOC(国際オリンピック委員会)の総会の直前に、IOCの当時の委員で開催都市を決める投票権を持つセネガル出身のラミン・ディアク氏の息子の会社と息子名義の2つの口座に、ブラジル人の有力な実業家の関連会社から合わせて200万ドルが振り込まれていたと発表していた。捜査当局は、ヌズマン会長が、「贈賄側のブラジル人実業家と収賄側のディアク氏との仲介役を担っていた」として、自宅を捜索するなど捜査を進めてきた結果、2009年のIOC総会の直後、ディアク氏の息子からヌズマン会長に対して、銀行口座に金を振り込むよう催促する電子メールが送られていたことなどから、票の買収に関与した疑いが強まったとして、5日、逮捕したとのことだ。

これを受けて、「IOCは捜査に全面的に協力を申し出ている。新たな事実がわかれば暫定的な措置も検討する」との声明を発表した。IOCの倫理委員会は、疑惑が報じられた昨年からフランス検察当局の捜査に協力し、さらに内部調査を継続していると強調。ブラジル当局にも情報提供を求めていることを改めて説明した(毎日)。

この「ラミン・ディアク氏の息子の会社」については、昨年(2016年)5月、フランス検察当局が、“日本の銀行から2013年7月と10月に、国際陸上競技連盟(IAAF)前会長のラミン・ディアク氏の息子に関係するシンガポールの銀行口座に、「東京2020年五輪招致」という名目で約2億2300万円の送金があったことを把握した”との声明を発表し、日本でも、東京オリンピック招致をめぐる疑惑が国会で取り上げられ、日本オリンピック委員会(JOC)竹田会長が参考人招致されるなど重大な問題となった。

この問題については、私は、ブログ記事【東京五輪招致をめぐる不正支払疑惑、政府・JOCの対応への重大な疑問】で詳しく述べている。フランス検察当局の声明によれば、“送金は2020年五輪開催地を決定する時期にあまりに近いタイミングであることから、開催地決定に関して権限・影響力を持つIOC委員を買収する目的で行われた不正な支払いだった疑いがある”とのことであり、JOC側に、そのような不正な支払いの意図があったのに、それが秘匿されていたのだとすれば、JOCが組織的に開催地決定をめぐる不正を行ったことになり、東京五輪招致をめぐって、極めて深刻かつ重大な事態となる。

この問題に関しては、その後、JOCが、第三者による外部調査チームを設置し、昨年9月1日に、「招致委員会側の対応に問題はなかった」とする調査報告書が公表されたが、それが、根拠もない「お墨付き」を与えるだけのものであることは、日経BizGate【第三者委員会が果たすべき役割と世の中の「誤解」】で、以下のように指摘した。

フランスで捜査が進行中であり、今後起訴される可能性があるという段階で、国内で行える調査だけで結論を示したということになるが、その調査はあまりに不十分で、根拠となる客観的な資料もほとんど示されていない。

この報告書では、「招致委員会がコンサルタントに対して支払った金額には妥当性があるため、不正な支払いとは認められない」と述べているが、そもそも金額の妥当性に関する客観的な資料は何ら示されていない。世界陸上北京大会を実現させた実績を持つ有能なコンサルタントだというが、果たして本当に彼の働きによって同大会が実現したのかという点について全く裏が取れていない。

また、招致が成功した理由や原因、コンサルティング契約に当たって半分以上の金額を成功報酬に回した理由も、何1つ具体的に示されていない。そのような契約が「適正だった」と判断することなど、現時点ではできないはずだ。

結局のところ、疑惑に対して納得のいく説明を行えるだけの客観的な資料が全くない状態で、専門家だとか中立的な第三者などによる何らかのお墨付きを得ることで、説明を可能にしようとした、ということでしかない。

今回、BOC会長が逮捕された容疑は、リオオリンピック招致をめぐって、「IOCの当時の委員で開催都市を決める投票権を持つセネガル出身のラミン・ディアク氏の息子の会社と息子名義の口座に、約200万ドルが振り込まれていた」というもので、東京オリンピック招致をめぐる疑惑と全く同じ構図で、金額までほぼ同じだ。

IOCの倫理委員会は、「疑惑が報じられた昨年からフランス検察当局の捜査に協力し、さらに内部調査を継続している」としているが、その調査は、当然、東京オリンピックをめぐる疑惑にも向けられているだろうし、IOCの声明の「新たな事実がわかれば暫定的な措置も検討する」の中の「暫定的な措置」には、東京オリンピックについての措置も含まれる可能性があるだろう。

JOCは、「その場しのぎ」的に、第三者委員会を設置し、その報告書による根拠もない「お墨付き」を得て問題を先送りした。それが、今後の展開如何では、開催まで3年を切った現時点で、“本当に東京オリンピックを開催してよいのか”という深刻な問題に直面することにつながる可能性がある。

今後のBOC会長逮捕をめぐるブラジル当局の動き、オリンピック招致疑惑をめぐるIOCと倫理委員会の動きには注目する必要がある。

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大島衆議院議長は、内閣不信任案「採決動議」にどう対応するのか

安倍首相が、明日、臨時国会冒頭で行うことを明言した衆議院解散について、ジャーナリストのまさのあつこ氏が、【野党は臨時国会冒頭に、内閣不信任案を提出できるのか?】という大変興味深い分析を行っている。

まさの氏は、「臨時国会冒頭での内閣不信任案採決の動議」が出された場合の展開について、以下のように述べている。

臨時国会冒頭に、天皇の書く「解散詔書」を内閣総務官が国会まで持ってくる。

それを菅義偉官房長官に渡し、官房長官がそれを向大野新治事務総長に渡し、事務総長がそれを大島理森衆議院議長に渡して、議長が読み上げると「解散」となる、という流れが予想される。

この読み上げの前に、野党が内閣不信任決議案を提出し、読み上げの最中に、「内閣不信任案を採決する」動議を出した場合、「議場内交渉」となり、議院運営委員会の場で議論される。

内閣不信任案が採決にかれば与党はそれを否決するしかなく、内閣が信任されれば解散はできなくなって困るので、与野党の交渉が難航したり、議場が騒然としたりしても、最終的には、与党側の「数の力」採決に至らない可能性が高い。

また、内閣不信任案を採決する動議が出され、それが採決されないまま、議長が衆議院解散の詔書を読み上げて解散になった場合は、そのことが、衆議院の議事録に残ることになる。

その上で、まさの氏は、以下の指摘を行っている。

今回の解散は、

1)憲法第53条(いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない)に基づいて6月22日から求められていた臨時国会を、安倍内閣が開こうとせず、

2)その安倍内閣総理大臣が、「森友学園への国有地売却の件、加計学園による獣医学部の新設、防衛省の日報問題など、様々な問題が指摘され、国民の皆様から大きな不信を招く結果」を「深く反省」すると8月3日に会見をして、

3)その脈略とは関係がない「仕事師内閣」というネーミングで内閣改造を行い、

4)3カ月も放置した臨時国会を開催するかと思えば、会見を開いて、「消費税の使い道」と「緊迫する北朝鮮情勢」という、本来は「解散」「選挙」を経ずに対応できることを理由に解散すると説明した。

5)しかも、所信表明演説の要求にも、予算委員会や党首討論の要求にも応じていない。

 そのような経緯を辿った解散について、

議運や国会対策委員会が、所信表明の要求や内閣不信任案の提出を認めないのであれば、少なくとも、大島衆議院議長は、それらの動議の提出を受け止め、実現する度量を見せるべきではないか。

というのが、まさの氏の意見である。

臨時国会冒頭解散が既定方針とされている中で、内閣不信任案採決の動議がどの段階で、どのような形で出せるのか、仮に不信任案が採決に持ち込まれ否決された場合に、7条解散についても、「信任されれば解散できない」ということになるのか、など疑問な点はあるが、いずれにしても、7条によって不当極まりない解散が行われることへの対抗策として、意味のある方法だと思われる。

私は、直近のブログ記事(【“憲政史上最低・最悪の解散”を行おうとする「愚」~河野外相、野田総務相は閣議で賛成するのか】)で、今回、安倍首相が行おうとしていると報じられた解散は、本来、憲法69条に基づく場合にのみ認めるのが憲法の趣旨であるのに、7条の国事行為として行うことが既成事実化していることに乗じて、「大義」が存在しないどころか、国会での疑惑追及を回避し、野党側の選挙準備の遅れを衝いて国民の政治選択の機会を奪い、それによって、北朝鮮情勢緊迫化の下での政治的空白を生じさせるなど、まさに「不義のかたまり」というべき解散であり、憲法が内閣に認めている解散権を大きく逸脱した「最低・最悪の解散」だと批判した。

そして、9月25日の記者会見で安倍首相自身が明らかにした解散の理由は、「消費税増税の使途の変更」「北朝鮮問題への対応」ということだったが、2年も先の消費税増税について、今、国民に意見を聞いても、そもそも、最終的に消費税増税を判断するのは1年以上先であり、その時点で、そもそも消費税増税ができる経済状況かどうかもわからない(これまでも、安倍首相は、経済状況を理由に消費税増税延期を繰り返してきたこととも矛盾する。)。北朝鮮への対応についても、国会での議論は全く行われていない。

今回安倍首相が挙げたような点は、まず、国会で議論を行い、その議論において対立があって、国民に信を問う必要がある場合に、初めて国民の意見を聞くことが問題になる話だ。臨時国会の冒頭での解散というのは、そのような国会での議論をすべて回避して、直接国民に判断してもらおうという「直接民主制」のような考え方であり、議院内閣制をとる我が国において凡そ解散の理由になるものではない。

これに対する対抗策として、野党が内閣不信任案を提出するのであれば、「憲法の規定に反して、国会での疑惑追及を回避し、野党側の選挙準備の遅れを衝いて国民の政治選択の機会を奪い、それによって、北朝鮮情勢緊迫化の下での政治的空白を生じさせる解散を強行しようとしている内閣は信任できない」という理由にすべきであろう。

このような不信任案提出、臨時国会冒頭での解散詔書読み上げ時の不信任案採決の動議が出される事態になった場合、内閣不信任案が可決された場合の解散を明文で規定する「憲法69条による解散」と、「7条の国事行為による解散」のどちらが優先するかが問題になる。

戦後、既成事実化してきた「7条解散」については、「苫米地事件」で最高裁が意見審査を回避したこともあり、69条解散との関係に関する判断に直面することがなかったが、上記の事態になれば、採決を求める動議は、「69条による解散」に結びつく可能性のある内閣不信任案を棚上げにして、7条による解散を強行して良いのか、という憲法問題を提起することになる。本会議での動議の取扱いを判断するのは、大島衆議院議長である。

安倍首相の何ら「大義」のない「最低・最悪の解散」による政治の混乱に乗じて、小池百合子東京都知事は、その解散表明直前に、それまで「小池新党の先兵」のように立ちまわっていた若狭勝、細野豪志両氏の面子を潰す形で、突然の「新党代表就任表明」を行い、与野党の国会議員は大混乱に陥っている。崩壊寸前の民進党議員だけではなく、小池氏を中心に反自民勢力が結集した場合に、総選挙で戦死する恐れが現実化してきた与党議員にまで混乱は拡大し、国会全体が騒然とした状態になりつつある。

東京都知事として、豊洲市場への移転問題で都民に大きな損失を生じさせ、オリンピックの準備も停滞させるなど、「東京大改革」どころか、「都政大混乱」を生じさせただけの小池氏が、また空虚な「希望」イメージだけの新党代表宣言を行ったことで、国政までもが混乱状態に陥っている政治状況は、北朝鮮情勢が一層深刻化する中、国民にとって不幸なことである。しかし、このような状況のきっかけを作ったのは、紛れもなく、「大義」もなく弊害だらけの身勝手な解散を仕掛けた安倍首相である。

「最低・最悪の衆議院解散」を、敢えて行って政権を維持しようとしたのが安倍首相であるが、「臨時国会冒頭での内閣不信任案採決の動議提出」という事態になった場合に、大島理森衆議院議長が、7条による解散詔書読み上げを強行すれば、憲法69条が定める解散の手続に違反する「違憲の解散」を強行した、「最低・最悪の衆議院議長」という汚名を、自ら憲政史に残すことになるのである。

一方、大島議長の判断で、不信任案採決の動議が議論されることになれば、現行憲法の枠組みに関する極めて重要な問題を国会で議論する決断をした衆議院議長として、「憲政史上初めて実質的に重要な判断をした議長」としての名を歴史に残すことになる。

衆議院議長は、参議院議長とともに立法府を司る三権の長であり、立法機関の長として内閣総理大臣(行政)、最高裁判所長官(司法)と並ぶ三権の長の一角である。与党第一党議員から選出されるが、その地位は党派を超えたものでなければならないことから、会派を離脱し、無所属となって議長を務めるのが慣例となっている。

もし、野党から内閣不信任案が出された場合には、大島衆議院議長は、三権の長の一角として地位の重さを自覚し、適切な対応を行うべきである。

 

 

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“憲政史上最低・最悪の解散”を行おうとする「愚」~河野外相、野田総務相は閣議で賛成するのか

安倍晋三首相が、9月28日の臨時国会冒頭にも衆院を解散する方針を固めたと報じられている。国会審議で、森友問題、加計問題で厳しい追及を受けるのが必至であり、民進党に離党者が相次ぐなど混乱が続いている状況で、小池百合子東京都知事の側近らによる新党結成の動きや選挙準備が進まないうちに解散するのが得策と判断したとのことだ。

2014年11月の解散の際にも、ブログ【現時点での衆議院解散は憲法上重大な問題】で、以下のように指摘した。

①憲法45条が衆議院の任期は4年と定め、69条がその例外としての内閣不信任案可決に対抗する衆議院解散を認めているのであるから、解散は69条の場合に限定され、7条の国事行為としての衆議院解散は、単に、解散の手続を定めているだけというのが素直な解釈である。

②1952年の第2回目の衆議院解散が、初めて69条によらず天皇の国事行為を定めた7条によって行われ、解散の違憲性が争われた苫米地訴訟では、最高裁判所は、いわゆる「統治行為論」を採用して、違憲審査を回避した。

③先進諸外国では、内閣に無制約の解散権を認めている国はほとんどなく、日本と同じ議院内閣制のドイツでも、内閣による解散は、議会で不信任案が可決された場合に限られている。法制度上は内閣に自由な解散権が認められているイギリスにおいても、2011年に「議会任期固定法」が成立し、「下院の3分の2以上の多数の賛成」が必要とされ、首相による解散権の行使が制約されている(イギリスで今年4月にメイ首相が行った下院の解散は、首相の判断はほとんど全会一致(賛成522票、反対13票)で承認された。)。

④議院内閣制の下では、「内閣」は「議会(国会)」の信任によって存立しているのであるから、自らの信任の根拠である「議会」を、内閣不信任の意思を表明していないのに解散させるのは、自らの存在基盤を失わせる行為に等しい。

⑤69条の場合以外に、憲法7条に基づく衆議院解散が認められる理由とされたのは、重大な政治的課題が新たに生じた場合や、政府・与党が基本政策を根本的に変更しようとする場合など、民意を問う特別の必要がある場合があり得るということであり、内閣による無制限の解散が認められると解されてきたわけではない。

このような、現行憲法上の内閣の解散権の解釈と従来の運用からすると、安倍首相が、「臨時国会冒頭解散」を行うことは、憲法が内閣に認めている解散権を大きく逸脱したものと言わざるを得ない。

それに加え、安倍首相は、通常国会閉会時に、加計学園問題で「丁寧に説明する」と約束したにもかかわらず、憲法53条の「衆参いずれかの4分の1以上の議員から臨時国会召集の要求があれば内閣はその召集を決定しなければならない」との規定に基づく野党の臨時国会の召集要求を無視し、8月3日に内閣を改造し、第3次安倍内閣を発足させた。これも、憲法の趣旨に著しく反するものである。

その内閣改造では、「仕事人内閣」と称して、河野太郎氏の外相、野田聖子氏の総務大臣など、自民党内では安倍首相には批判的とも思える議員を起用したことで、内閣支持率は何とか回復基調に転じたのである。それらの閣僚に、ほとんど「仕事」をさせることもなく、北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返して軍事的緊張が高まっている時期に、敢えて衆議院解散・総選挙を行って「政治的空白」を生じさせるというのである。

安倍首相は、「集団的自衛権」を認める安全保障関連法を強引な国会審議で成立させたが、まさに、北朝鮮情勢が緊迫化し、同法制に基づく自衛権行使の是非を議論すべき状況になる現実的危険が生じている中で、自衛隊派遣を承認する国会を無機能化させるというのは、「国民に対する裏切り」以外の何物でもない。

解散には「大義」が必要だと言われるが、今回、もし、解散が行われるとすれば、「大義」が存在しないどころか、国会での疑惑追及を回避し、野党側の選挙準備の遅れを衝いて国民の政治選択の機会を奪い、それによって、北朝鮮情勢緊迫化の下での政治的空白を生じさせるなど、まさに「不義のかたまり」というべき解散である。

政府は、北朝鮮のミサイル発射のたびに、日本の領空の遥か上空を通過することがわかっていても、早朝からJアラートを発動し、国民の警戒心を煽っているが、安倍首相が衆議院を解散して政治的空白を生じさせた場合、これに乗じて、北朝鮮が、領空ぎりぎりにミサイルを飛ばして、日本政府の対応を試すような事態も考えられないわけではない。

総選挙態勢に突入した政府・官邸が、果たして北朝鮮の巧みな戦術に適切に対応できるのであろうか。

国連の北朝鮮制裁決議等で外交努力を懸命に行っているはずの日本の安倍政権が、このような状況で、先進国では殆ど考えられない国会解散を行ったということになると、国際社会の日本政府を見る目も変わってきてしまうのではなかろうか。

一部では、麻生副総理が、安倍首相に、「解散は首相の専権」だと言って解散を勧めたことが早期解散の決断につながったなどと報じられているが、誤解してはならないのは、解散は「内閣」の権限であって、「首相の専権」ではないということだ。「憲法7条の天皇の国事行為による解散」が許されるとしても、その「助言と承認」を行うのは「内閣」であり、「内閣総理大臣」ではない。閣僚全員による「閣議決定」があって初めて、「国事行為としての解散」を天皇に助言・承認することが可能となる。

小泉純一郎首相が、突然の解散を表明した2005年の「郵政解散」においても、解散を決定する閣議で、島村宜伸農水相、麻生太郎総務相、中川昭一経産相、村上誠一郎行政改革担当相の4閣僚が解散に反対する意見を述べ、小泉首相が個別に説得をしたが、島村農水相だけは最後まで解散詔書に関する閣議決定文書への署名を拒否して辞表を提出。小泉首相は辞表を受理せず、島村農水相を罷免、首相自身が農水相を兼務して解散詔書を閣議決定した。この郵政解散には、「国民に郵政民営化の是非を問う」という「大義」はあり、閣議での対立も、郵政民営化の是非をめぐる「政治的意見の相違」だったので、最後まで抵抗した島村農水相の罷免による強行突破が可能だった。

今回、もし、安倍首相が臨時国会冒頭の解散を強行しようとした場合、閣僚全員が賛成するとは到底思えない。特に、安倍首相ともともと距離があった河野外相、野田総務相は、このまま解散ということになれば、安倍内閣支持率回復のための「客寄せパンダ」に使われただけで、大臣としての仕事をまともに行う前に使い捨てられることになる。ましてや、その解散には全く「大義」はない。少なくとも、この二人の閣僚は、解散詔書の閣議決定に賛成するとは思えないし、説得の余地もないはずだ。

もし、河野、野田両大臣が妥協して安倍首相に従い、違憲の疑いすらある、「大義」の全くない解散に、閣僚として賛成したとすれば、二人の「政治家としての将来」にも重大なマイナスになる。

安倍首相としては、反対を押し切って解散を閣議決定するには、郵政解散における島村農水相と同様に、「閣僚の罷免」しかない。しかし、農水相であれば、総選挙までの期間、総理大臣兼任というのも不可能ではないが、現在の緊迫化する北朝鮮情勢の下で、総理大臣が外相を兼任することはあり得ない。どう考えても、今回の解散は「無理筋」である。

もし、安倍首相が解散を強行すれば、“憲政史上最低・最悪の解散”を行った首相として歴史に名を残すことになるだろう。このような時期の解散でしか、政権を維持できないとすると、それ自体が安倍政権が完全に行き詰まっていることを示していると言えよう。

安倍首相が行うべきことは、解散の強行ではなく、潔く自らその職を辞することである。

 

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都民ファーストの会は「秘密結社」か

小池百合子知事による「小池都政」に対しては、昨年来、【「小池劇場」で演じられる「コンプライアンス都政」の危うさ】【「拙速で無理な懲戒処分」に表れた「小池劇場」の“行き詰まり”】【「小池劇場」の”暴走”が招く「地方自治の危機」】などで徹底的に批判を続けてきた。

その小池氏が「都民ファーストの会」の代表に就任して臨んだ東京都議会議員選挙で圧勝した直後に、代表を辞任し、議員でもない小池氏の元秘書の野田数氏が代表に就任したことについては、【“自民歴史的惨敗”の副産物「小池王国」の重大な危険 ~代表辞任は「都民への裏切り」】で厳しく批判した。選挙後に代表を辞任する予定であったのに、敢えてその事実を秘し、選挙後も自らが代表を務める都民ファーストの公認候補ないし推薦候補であるように偽っていたとすると、その「公認・推薦」というのは、実質的には事実ではなかったに等しく、「候補者に対する人・政党その他の団体の推薦・支持に関し虚偽の事項を公にする行為」を「虚偽事項公表罪」として罰する公職選挙法の趣旨にも反する許し難い行為である。

そして、何と、その野田数氏は、9月11日に、就任後僅か2ヶ月余で代表を辞任し、後任には、同じ小池氏の元秘書の荒木千陽氏が就任したとのことだ。

荒木氏の代表選任は、「代表は選考委員会で選ぶ」と定める党規約に基づいて、幹事長、政調会長と特別顧問の小池知事の3人からなる「選考委員会」で決定したとのことだが、その「党規約」は公開されておらず、党員である都議会議員も内容を知ることはできないという。

小池知事に関しても、都民ファーストに関しても、全く評価していないので、多少のことでは驚かないが、都議会議員選挙で公認候補として当選した55人の議員を擁する「公党」でありながら、党の組織にとって最も重要な代表選任の方法、代表の権限等を定める規約が公開されていないというのは、一体どういうことなのだろうか。政党として届けられているのであれば、選挙管理委員会には党規約が提出されているはずだ。党員は議員であっても、情報公開請求で選管に開示を求めないと、その内容を知ることができない、ということなのであろうか。「都民ファーストの会」というのは、小池都知事のための「秘密結社」なのか。

我々都民は、その「秘密結社」のような組織が最大会派である都議会と、それを背後で操る都知事の小池氏に、二元代表制の都政を委ねている。しかも、そのような「政治勢力」が、「第三極」などとマスコミに囃し立てられ、民進党の崩壊寸前の惨状の間隙を縫って、国政への進出を目論んでいるのである。民主主義への重大な脅威にもなりかねない事態に対して、我々は、最大の警戒を持って臨むべきであろう。

 

 

 

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WDの東芝半導体子会社売却への介入・株式取得は独禁法違反の疑い

迷走に次ぐ迷走を重ねてきた東芝の半導体メモリー事業の売却をめぐって、協業先の米ウェスタンデジタル(WD)の陣営に独占交渉権を与える方向で調整に入ったと、8月30日の日経新聞一面で大きく報じられた。そして、このような動きについて、世耕弘成経済産業大臣は、29日の閣議後の記者会見で、「東芝とWDが前向きな形でコミュニケーションを取っているとすれば、一定の評価はしたい」と述べ、歓迎する意向を示したとのことだ。

東芝は、6月に、韓国の半導体大手SKハイニックスや米ファンドからなる「日米韓連合」を優先交渉先に選んだが、WDが反発して法的措置に出たことから、交渉が行き詰まっていた。東芝の方針が二転三転し混乱を重ねている原因について、経産省の意向に振り回されているとの指摘もある(【経産省に振り回される東芝…再建の命綱・半導体事業売却が頓挫の可能性、国のいいなり経営】)。

今回、東芝が、WDの陣営に独占交渉権を与える方向で調整に入ったと報じられた途端、経産大臣が、すぐ様、その動きに対して「一定の評価」を明言したことは、経産省が、自らの意向で東芝を「振り回してきたこと」を、大臣が図らずも自白したということだ。

しかし、東芝がWDの陣営に独占交渉権を与えるなどということは、全く論外である。

そもそも、WDは、半導体メモリー事業に関して東芝と競争関係にある。そのような競争業者が、東芝がその事業に関して行おうとしている決定に介入してくること自体が、日本の独占禁止法に違反する。

独占禁止法2条9項で、「この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう」とされ、6号で、

六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの。

ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること

と規定されている。

そして、公正取引委員会告示(一般指定)15項では、「競争会社に対する内部干渉」について

自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいその他いかなる方法をもつてするかを問わずその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること

と定めている。

WDは、フラッシュメモリーをめぐって、東芝と競争関係にある。そのWDが、東芝との契約に基づいて、半導体子会社を他社に売却しないように要求することは、「その会社の不利益となる行為」を「強制すること」に該当し、しかも、それによって、東芝の事業に著しい支障が生じかねない状況になっているのであるから、「競争会社に対する不当な内部干渉」に該当し、公正な競争を阻害する恐れがある。

東芝は、WD社の行為が「不公正な取引方法」に該当し、違法だとして、公正取引委員会に申告を行い、併せて、それによって著しい損害を受け,又は受けるおそれがあるとして、裁判所に,WDの行為の差止めを請求することも可能だ。

そもそも、WDが、競争関係にある東芝の事業の意思決定に「横やり」を入れてくることが、「公正な競争」という観点から問題があるということは、独禁法の規定を具体的に知っていなくても、まともな法的センスがあればわかる問題だ。

ところが、世耕経産大臣は、そのような違法な介入を行ってくるWDに東芝独占交渉権を与えようとしていることを「評価する」というのだ。

しかも、上記の日経新聞の記事によれば、

WDは、議決権のない新株予約権付社債(CB)や優先株の引き受けにより約1500億円を拠出する。CBの転換後に約15%の株式を持つ見通し

とのことだ。

もし、東芝とWDとの間で、そのような内容を含む合意が行われたとしたら、新たな独禁法違反の問題が生じる。「不公正な取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならない」との規定(独禁法10条)に違反する疑いだ。

フラッシュメモリーをめぐって、東芝と競争関係にあるWDが、半導体子会社を他社に売却しないように要求していることは「競争会社に対する不当な内部干渉」であり、「不公正な取引方法」に該当するので、それによって東芝の株式を取得することは、独禁法10条に違反する疑いがある。

この問題は、東芝が半導体子会社の売却先の決定を急いでいる最大の理由とされている「(中国等)の独禁法当局の審査」に時間がかかるという「手続上の問題」とは異なる。日本の独禁法に「違反する疑い」という問題だ。もちろん、もし、東芝がWD陣営と合意した場合には、そのよう独禁法違反の疑いが、日本の公正取引委員会の審査においても、重大な問題とされることになる。

「東芝と競争関係にあるWDが、半導体子会社を他社に売却しないように要求しているのは日本の独禁法に違反するので、それを主張して法的措置をとるべき」との指摘は、定時株主総会直前の今年の6月末、知人を通じて(東芝を徹底批判してきた私の名前は伏せて)、東芝の社外取締役の一人に伝えている。「貴重なご提言を頂戴し、是非参考にさせていただきます」との反応だったと聞いているが、その後の東芝はWDに対して法的措置をもって対抗するどころか、WDとの妥協を図り、独占交渉権まで与えようとしているというのは全く不可解だ。

経産省が、東芝に対して、WDと合意する方向での解決を強く求め、東芝はそれに従わざるを得ない状況になっているということなのかしれない。

いずれにしても、東芝は、WD陣営に半導体子会社を売却する方向で交渉すべきではない。むしろ、最近になって、アップルも加わったスキームを提示したと報じられている「日米韓連合」との交渉を優先すべきである。

日本の法律に違反する疑いのある東芝・WD間の交渉を「評価する」などと公言する経産大臣には、東芝の問題に口を出してもらいたくない。

 

 

 

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検察は籠池氏を詐欺罪で起訴してはならない

大阪地検特捜部が籠池氏夫妻を逮捕した翌日に出した8月1日のブログ記事【検察はなぜ”常識外れの籠池夫妻逮捕”に至ったのか】は、その逮捕事実が、今年3月下旬に大阪地検が告発を受理した「補助金適正化法違反」の事実と同じで、森友学園が受給していた国土交通省の「サスティナブル建築物先導事業に対する補助金」の不正受給であったこと、大阪地検は、国の補助金の不正受給の事実を、「詐欺罪」に当たるとして逮捕したのだということを知り、それがいかに「検察実務の常識」に反するかを書いたものだった。

詐欺罪と補助金適正化法29条1項の「偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受ける罪」(以下、「不正受交付罪」)は「一般法と特別法」の関係にあり、補助金適正化法が適用される事案について詐欺罪は適用されないというのが、従来の検察実務の常識であった。また、逮捕に至る経過からして、実質的に「罪証隠滅のおそれ」があるとも思えず、いずれの面からも、籠池夫妻の逮捕は、検察実務からすると「常識外れ」と思えた。

逮捕直後だったこともあり、このブログ記事に対しては大きな反応があった。ツイッター、ブログの閲覧数等のネットを通しての反響も非常に大きく、また、週刊誌メディアを中心に多数の取材・問合せを受け、可能な限り対応した。

こうした籠池夫妻逮捕について「検察実務の常識に反する」とする私のブログに対して、ツイッター等で、判例や学説を挙げて、「詐欺罪の適用もあり得るのではないか」との反論もあった。また、新聞記事には、「詐欺罪で逮捕した理由」についての検察サイドの説明も出ている。

こうした指摘を踏まえ、補助金適正化法の立法の経緯、裁判例、学説等も可能な限り調べた上で、国の補助金の不正受給の事案に詐欺罪を適用することの当否について再検討してみたが、国の補助金の不正受給に対して詐欺罪を適用することは、検察実務としてあり得ない、という結論に全く変わりはない。

籠池夫妻は、その後、逮捕事実と同じ事実で勾留され、勾留期間が延長されて、8月21日が勾留満期と報じられている。

2010年に、村木厚子氏の事件をめぐる大阪地検の不祥事等を受けて法務省に設置された「検察の在り方検討会議」に委員として加わって以降、検察改革の問題に私なりに関わり、国会の場も含め、様々な形で意見も述べてきた。しかし、検察の抜本改革は遅々として進んでおらず、社会的信頼が回復されたとは到底言えない状況にある。

籠池氏が理事長を務めていた森友学園の事件に関しては、近畿財務局側も森友学園に対する国有地売却をめぐる背任罪で告発されており、その捜査・処分の結果如何では、籠池夫妻逮捕・起訴に対して、重大かつ深刻な検察批判が起こりかねない。そのような状況において、その籠池氏に対して、敢えて、「検察の常識に反する起訴」を行うことは、致命的な事態になりかねない。検察にとって、本当の正念場である。

 

補助金適正化法の立法経緯と検察の実務

補助金適正化法(以下、「適化法」)は、昭和30年に制定されたものだが、国会審議でも、詐欺罪と同法29条1項違反の罪との関係についての質問に対して、政府委員の村上孝太郎大蔵省主計局法規課長は、

偽わりの手段によって相手を欺罔するということになると、刑法に規定してございます詐欺の要件と同じ要件を具備する場合があるかと存じます。しかしながら、この補助金に関して偽わりの手段によって相手を欺罔したという場合には、この29条が特別法になりまして、これが適用される結果になります。

と答弁しており、同氏が著した解説書でも、同法違反の「予定する犯罪定型は、補助金等に関して刑法詐欺罪の予定する定型を完全に包摂しており、又本条第1項において刑法詐欺罪より拡大された部分も、国家の財産的法益を主として保護法益とする意味において、詐欺罪の構成要件を量的に拡大したものであって、本条は補助金等の特殊性に鑑み刑法詐欺罪の特別規定を設けたものである」(同村上「補助金適正化法違反の解説」)とされるなど、立法経緯からは、適正化法違反が詐欺罪の特別規定で、同法違反が成立する場合には、詐欺罪は適用されないという趣旨であることは明らかだ。

同法制定後の検察の実務でも、国の補助金の不正受給の事案に対しては、詐欺罪は適用せず、適化法違反で起訴するという実務が定着してきた(一方、地方公共団体が交付する補助金には、「間接補助金」に該当しない限り補助金適正化法の適用はないので、詐欺罪が適用される。)。

私も、検事時代、検察の現場で補助金不正受給の事件を相当数担当した。特に、1990年代は、不況で民間建築をめぐる競争が激化し実勢単価が値下がりして、公共工事単価と同レベルに維持されていた補助金単価とは大きくかい離していたため、社会福祉施設の建設に対する補助金で、実勢価格に基づく安い代金で契約する一方で、補助金単価で算定した代金に水増しした虚偽の契約書を作成して国に提出し、補助金を不正受給する事件が多発していた。施設の建設費の大部分が補助の対象となる社会福祉施設をめぐる事件では不正受給額が数億円に上っていた。社会福祉法人の経営者が不正受給した補助金を私物化していたケースもあった。しかし、それでも、補助金の不正受給の事案に対しては、詐欺罪ではなく、適化法を適用するというのが、法律上当然との前提で捜査・処分を行っていた。国の補助金に関する事件であれば、詐欺罪を適用することはなかった。

 

大阪地検は、なぜ籠池夫妻を詐欺罪で逮捕したのか

このように、検察の実務では、国の補助金の不正受給は、適化法違反で捜査・処分するのが当然とされてきたのに、大阪地検が、今回の籠池夫妻の逮捕において詐欺罪を適用したのはなぜなのか、

籠池夫妻逮捕直後の朝日新聞の記事【籠池氏、告発より重い詐欺容疑 特捜部「もろもろ検討」】では、

逮捕後の7月31日夜、取材に応じた大阪地検の山本真千子特捜部長は、両容疑者の行為について「詐欺、適化法違反の両方が該当するが、もろもろを検討し、詐欺容疑が適切と考えた」と述べた。

とされており、特捜部長が籠池夫妻の行為について、「詐欺、適化法違反の両方に該当する」と明確に述べているようである。

 

昭和41年最高裁決定は詐欺罪適用の「根拠」にはならない

学説においても、ほとんどが不正受交付罪は詐欺罪の特別規定だとする「特別規定説」を支持しており、通説となっている。一方で、国の補助金の不正受給についても、適化法の不正受交付罪ではなく詐欺罪を適用できるとする少数説が一部にはある。佐伯仁志氏「補助金の不正受給と詐欺罪の関係について」(「研修」七〇〇号)、星周一郎氏「詐欺罪と『詐欺隣接罰則』の罪数関係」(法学会雑誌53巻2号)である。それらの学説が重視しているのが、昭和41年2月3日の最高裁決定(判時438号6頁)の中で、両罪の関係について、「犯人側の為した行為自体は同一であり、相手方のこれに対応する態度の如何を構成要件の中に包含する罪とこれを構成要件としない罪とがある場合、検察官は立証の有無難易等の点を考慮し或は訴因を前者とし或はこれを後者の罪として起訴することあるべく」と判示していることだ。これを根拠に、国の補助金の不正受給に関して、検察官は、詐欺罪と不正受交付罪のいずれで起訴することも判例上許容されているとしているようだ。

しかし、この最高裁決定は、適化法が施行される直前の昭和30年に、被告人ら3名が国庫補助金を不正に受給しようと「共謀」し、同31年に施行された後に、それを実行して不正受給を行った事実を、検察官が適化法違反で起訴したことが「刑罰の不遡及」を定める憲法39条に違反するのではないかが争われた事案であり 国の補助金の不正受給に対して詐欺罪を適用した事案に対して判断を示したものではない。

同決定でも判示しているように「偽りの手段により国庫補助金の交付を受けようという詐欺の共謀をなし、その共謀に基づきそのうちの二名がその後右目的達成のため必要な行為を実行し所期の目的を達した」というのであるから、適化法が施行されることがなければ、詐欺罪で起訴され有罪になっていたと考えられる事案だ。共謀の時点と実行の時点の中間に「適化法の施行」があったために、検察官は、詐欺罪ではなく同法違反で起訴したのである。もし、詐欺罪と適化法違反とが「一般法・特別法」の関係ではなく、同法違反が成立する場合でも、検察官の裁量で詐欺罪での起訴が可能だというのであれば、検察官は躊躇することなく、詐欺罪で起訴したであろう。それを行わず、不正受交付罪で起訴したのは、検察官が、適化法が施行され、それに該当すると判断される以上、詐欺罪での起訴はできないと判断したからだと考えられる。

しかも、上記最高裁決定の判示は、当該事件についての判断の根拠とされたものではない、単なる「傍論」に過ぎず、一般的な検察官の訴追裁量権をここで確認的に判示した程度の意味しかないと見るべきだろう。

 

「間接補助金」に関する主張に対する裁判所の判断

実際に、既に述べたように、その後の検察の実務では、一貫して、国の補助金の不正受給については、詐欺罪ではなく適化法違反を適用してきたのであり、両罪の関係について、不正受交付罪が成立する場合には詐欺罪は適用できないことを大前提にしてきたと考えられる。また、最高裁も含め、裁判所も、同様の見解をとってきたと考えられる。

その根拠となるのは、国以外の団体が交付し、国が一部その資金を負担している金員を不正に受給した事例で、検察官が詐欺罪で起訴したが、弁護人が「適化法の『間接補助金』に該当するので詐欺罪は成立しない」と主張したのに対して、裁判所が、「『間接補助金』には該当しない」との判断を示して弁護人の主張を排斥した「ハンナン食肉偽装事件」(大阪地判平成17年5月11日)がある。最近、上告審判決が出て確定した「小豆島バス事件」【補助金を不正受給 小豆島バスの元社長の実刑判決確定へ】)でも同様の弁護人の主張に対して裁判所は「間接補助金に該当しない」との判断を示している。

「間接補助金」というのは「国以外の者が相当の反対給付を受けないで交付する給付金で、補助金等を直接又は間接にその財源の全部又は一部とし、かつ、当該補助金等の交付の目的に従つて交付するもの」であり、補助金適化法29条1項の罰則は、間接補助金の不正受給に対しても適用される。そこで、弁護人は、詐欺罪と補助金不正受給罪とが「一般法・特別法」の関係にあるとの前提で、「騙し取ったとされるのが『間接補助金』に該当するので、詐欺罪ではなく補助金適化法違反となる」という主張をしたのである。

もし、適化法違反の成否とは無関係に詐欺罪が成立するのであれば、弁護人の主張するように「間接補助金」に該当したとても、詐欺罪の成立が否定されることはない。裁判所は、そう判示して弁護人の主張を排斥すればよいはずである。しかし、これらの事例においても、裁判所は、当該補助金が「間接補助金」に該当しない(「相当の反対給付を受けないで交付する給付金」ではないので、詐欺罪が適用される。)と認定・判示を行って弁護人の主張を退けており、上告審の最高裁でも支持されている。

このことからも、裁判所が、最高裁も含め、詐欺罪と補助金不正受給罪との関係について、補助金不正受給罪が成立する場合には、詐欺罪は成立しないと判断していることは明らかである。昭和41年2月3日の最高裁決定の「傍論」を持ち出して、判例上、国の補助金の不正受給についても詐欺罪が適用できるとされているというのは、全くの筋違いだ。

 

補助金適正化法の「立法事実」とその後の状況変化

昭和30年に、補助金適正化法が制定され、それまでであれば詐欺罪に当たるような補助金不正受給を、詐欺罪の「10年以下の懲役」より軽い「5年以下の懲役又は罰金」の法定刑を定めた理由は何だったのか。同法案の国会審議で、前記村上政府委員は、

ともすれば何か村のため、県のためであれば、補助⾦を多少ごまかしてもそれは許さるべき⾏為であるという、ような⾵潮の多い点にかんがみまして、税⾦その他の貴重な資⾦でまかなわれておりますこの補助⾦というものが、正しく使われなければならないという⼀つの社会道義と申しますか、そういう観念を植えつけていく

と述べている。その当時、地方自治体の財政が窮乏する中、少しでも多く国の補助金の交付を受けて、自治体の事業を実施しようとして、虚偽の書類を提出したりする行為が横行し、それは、個人的利得を得ようとするものではなく、やむを得ない事情がある場合もあるので、「詐欺罪としての処罰」を行うような行為ではない、という評価が一般的だったため、処罰はほとんど行われず、言わば「野放し」の状態になっていたのであろう。そうした中で、刑法犯としての処罰ではなく、国の補助金の不正受給に対しては、法定刑を軽くした特別の罰則を設け、実態に即した制裁を科して、補助金の交付の適正化を図っていこうとするのが、立法者の意図だったものと考えられる。

そのような「立法事実」は、現在の状況には適合しなくなっているということは少なからず言えるであろう。当時のような、虚偽の書面を提出して国から補助金の交付を受けるような行為は、その主体が地方自治体であれ公的団体であれ、詐欺罪と同程度に厳しく処罰すべきというのが、現在の一般的な認識であるように思える。また、【前記朝日記事】でも書かれているように、「国でなく自治体の補助金を不正受給した方がより罪が重くなる」という処罰の不均衡があることも事実である。

 

検察は、法に則った権限行使をしなければならない

私も、現職検事時代に、社会福祉法人の経営者が、施設の建設代金を水増しして補助金を不正受給し、それを私物化するというような事案を多数捜査・処理した経験から、国の補助金の不正受給事案に対して詐欺罪と同程度に重く処罰すべきであるという意見について、決して否定はしない。

しかし、それを行うのであれば、適化法違反の罰則の法定刑を引き上げるか、詐欺罪の適用を明文で認める立法が必要である。検察が、従来の罰則の運用の前提となっている解釈を勝手に変えて、厳しく処罰することなど許されない。それが、法治国家における刑罰の運用である。

実際、同じように詐欺罪との関係が問題になる所得税、法人税等の逋脱犯(脱税)については、もともと法定刑が「3年以下の懲役」だったのが、段階的に「5年以下の懲役」、そして詐欺罪と同じ「10年以下の懲役」に引き上げられている。

今回の籠池氏の事件が、過去の国の補助金不正受給事案と比較して著しく悪質であり、適化法違反による処罰では軽すぎるというのであれば、検察として、何とかして重く処罰しようとすることも理解できないではない。ところが、今回の森友学園の事件で不正受給が問題とされた国の補助金は総額でも約5640万円、正当な金額との差額の「不正受給額」は、そのうち3分の2程度と考えられるので2000万円にも達しておらず、しかも、全額返還済みである。

籠池氏の事件は、むしろ、適化法違反としての処罰にすら値しない程度の事案であるとしか考えられない。そうであれば、むしろ、「適化法違反で、罰金刑ないし起訴猶予」というのが、本来行われるべき適正な処分である。

「日本版司法取引」の導入、盗聴の範囲の拡大等を内容とする刑訴法改正、共謀罪の制定など、捜査機関や検察の権限が大幅に強化される中、検察には、法に則った権限行使がこれまで以上に厳格に求められる。

籠池氏に対して、「けしからん奴だ」「悪質だ」などという理由で、本来、適化法しか適用できない事案を、詐欺罪で起訴するなどということが行われるとすれば、「厳正中立・不偏不党」を旨としてきた検察の史上に重大な汚点となるものだと言わざるを得ない。

 

 

 

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東芝監査をめぐる混乱は、受任したPwCに重大な責任~「真の第三者委員会」で“東芝をめぐる闇”の解明を

会社と監査法人が対立したままの有報提出という「異常な結末」

8月10日、東芝は、2017年3月期の有価証券報告書を関東財務局に提出した。同報告書には、会計監査人のPwCあらた監査法人の監査報告書が添付され、そこには、17年3月期の財務諸表について「限定付き適正」、内部統制に関する監査には「不適正」とする監査人意見が、それぞれ表明されている。

4月11日に、2016年度第3四半期レビューについて、PwCが「意見不表明」として以来、東芝の2017年3月期の決算報告をめぐって、PwCと東芝執行部、それに、前任監査人の新日本監査法人(以下、「新日本」)まで巻き込んだ「泥沼の争い」が繰り広げられ、注目を集めてきたが、PwCは、「限定付き適正意見」で、一部とは言え「適正な決算ではない」との評価を押し通し、一方、東芝側は、それを受けても決算を全く修正せず、会社と会計監査人との意見が対立したまま有価証券報告書を提出するという異常な結末となった。

「原発子会社のウェスティングハウスエレクトロニクス(WEC)社がCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)社を買収したことによって最終的に生じた工事契約にかかる損失を、東芝が認識すべきだった時期」について、PwCは、2016年3月以前の段階であった可能性を指摘し、「意見不表明」のまま調査を継続してきた。PwCの指摘どおりだとすると、東芝の16年3月期決算は訂正が必要となる可能性がある。それに対して、東芝執行部は2017年3月末時点までは認識できなかったと主張し、16年3月まで会計監査人だった新日本も、16年3月期決算には問題はないとしてきた。

今回、有価証券報告書に添付した監査報告書で、PwCは、

工事損失引当金652,267百万円のうちの相当程度ないしすべての金額は、2016年3月31日現在の連結貸借対照表の非継続事業流動負債に計上する必要があった

としているが、その根拠についての記述は、「工事原価の発生実績が将来の工事原価の見積もりに反映されていなかった」などの抽象的なもので、損失計上すべきであった時期も特定されず、金額も「相当程度ないしすべての金額」と曖昧な表現とにとどまっている。2016年3月以前の段階で損失を認識すべきだったとする根拠として十分なものであるのか疑問がある。

 

東芝が損失を隠ぺいした「疑い」を持って調査を行ったPwC

S&W社の買収によって生じた巨額損失でWECは法的整理に追い込まれ、東芝に、最終的には7,166億円もの損失が生じたことは客観的事実である。その買収自体が、WECの原発事業で大きな損失が生じていることを隠ぺいする目的だったのではないかとの指摘もある(【NBO 東芝、原発事業で陥った新たな泥沼】)。PwCが、東芝への「不信」を募らせ、東芝側が2016年3月末時点で損失を認識しながら隠ぺいしたのではないかと疑うのは致し方ない面がある。2016年3月期以前に損失が認識できたとの疑いをもって必要な調査を行うのは会計監査人としては当然だと言えよう。

しかし、結果的に、6ヶ月も「意見不表明」を続け、上場企業では前例のない事態で証券市場の混乱を生じさせたが、東芝の会計報告を具体的に是正させるだけの根拠を示すことはできなかったといえる。東芝が損失を認識していた、或いは、認識すべきだったとする具体的な「証拠」は発見できなかったが、監査報告書の意見は、「適正」ではなく「限定付き適正」とされた。

 

監査受任の段階でPwCは東芝を「信頼」できたのか

そのような異例の事態に至った最大の原因は、東芝が一連の会計不正に関して監査法人に対して行ってきた対応や、その後のWECの巨額損失の表面化の経緯等から、東芝とPwCとの間に、本来、顧客企業と会計監査人の監査法人との間に存在していることが不可欠の「最低限の信頼関係」すらなくなっていることであろう。

しかし、PwCが東芝の会計監査を受任した2016年3月末の時点で、「最低限の信頼関係」が作れる見込みはあったのか。PwCはなぜ東芝の会計監査を受任したのか。

その時点においても、東芝には、一連の会計不祥事に関して、監査法人に対して悪質な「隠ぺい」を行った疑いが指摘されていた。東芝は、会計不正の疑いが表面化したことを受け、「第三者委員会」を設置し、その報告書公表を受けて「責任調査委員会」を設置して歴代経営者への責任追及について検討したが、それらの一連の「第三者委員会スキーム」では、調査の対象は、原発関連ではなく、調査対象とされた事業の範囲も責任追及の範囲も極めて限定的で、当時の室町正志社長は、責任追及の調査の対象にすらされず、問題の幕引きが図られた。そして、2015年9月末の臨時株主総会では、社外取締役に財界のオールスターメンバーと法曹界の重鎮等を揃えた新体制が選任され、「東芝の再生に向けて万全の体制」がアピールされた。

しかし、その直後の2015年11月に日経ビジネスが、【スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽 内部資料で判明した米ウエスチングハウスの巨額減損】【スクープ 東芝 減損隠し 第三者委と謀議 室町社長にもメール】という二つの衝撃的なスクープを報じたことで、状況は激変した。

これらの記事から、WECが2012年度と2013年度に巨額の減損処理を行なった事実を東芝が公表せずに隠していたこと、第三者委員会発足前に、当時の田中久雄社長、室町正志会長(現社長)、法務部長(現執行役員)等の東芝執行部が、米国原発子会社の減損問題を委員会への調査委嘱事項から外すことを画策し、その東芝執行部の意向が、東芝の顧問法律事務所である森・濱田松本法律事務所から、第三者委員会の委員の松井秀樹弁護士に伝えられ、原発事業をめぐる問題が第三者委員会の調査対象から除外されたことが明らかになった。

また、東芝が、一連の会計不正を行っていた間に、会計監査人であった新日本に対して悪質な隠ぺい・虚偽説明を繰り返していたことは、第三者委員会報告書でも極めて不十分ながら指摘されていたが、2016年3月初めに発売された文芸春秋2016年4月号の【スクープ・東芝「不正謀議メール」を公開する】と題する記事では、東芝が、大手監査法人の子会社であるデロイト・トーマツ・コンサルティング(以下、「デロイト」)に「監査法人対策」の指導を依頼し、損失を隠ぺいした財務諸表を新日本が認めざるを得ないような「巧妙な説明」を行ってきたことが指摘された【最終局面を迎えた東芝会計不祥事を巡る「崖っぷち」】。

このように、会計監査人の監査法人に対して不誠実極まりない対応を繰り返してきたことが相当程度明らかになっていた東芝の会計監査を、PwCは、敢えて受任したのである。しかも、受任する際には、その時点での東芝の財務諸表や内部統制に問題がないか、事前調査も行ったはずである。その段階で、東芝の監査法人への対応に問題があることに気づかなかったのであろうか。

 

新日本の立場

一方、PwCに東芝の会計監査を引き継いだ、それまでの会計監査人の新日本は、東芝側の虚偽の資料や説明で騙され、会計不正を見抜けなかったことで、金融庁から課徴金や一部業務停止などの厳しい行政処分を受け、東芝を担当していた複数の公認会計士が業務停止処分を受け、新日本を退職することを余儀なくされた。

新日本がそのような事態に至った最大の原因は、東芝の監査についての問題について、新日本の当時の執行部が、「東芝との契約上の守秘義務」を強調し、独自の対社会的対応をほとんど行わなかったことにある。(【年明け早々から重大な危機に直面している新日本監査法人】)

そのような新日本の対応にも、新日本の顧問法律事務所が、東芝の顧問法律事務所であり、前記の「第三者委員会スキーム」にも関わったとされる森・濱田松本法律事務所と同じであったことが影響している可能性がある。

2016年3月末で会計監査人がPwCに交代することが決まっており、それまでさんざん東芝に騙されてきた新日本としては、その時点で、東芝にたいして、甘い監査で「お目こぼし」などする動機は全くなかった。2016年3月末の段階で、その前年末にS&Wを買収したことによる損失発生の可能性についても、徹底して厳しい目で監査を行ったはずだ。その新日本ですら損失発生の可能性を認識する根拠は見出せなかった。

 

PwCにとって東芝監査受任が重大な誤り

ところが、PwCは、東芝の会計監査を受任した後、2017年度の第1四半期、第2四半期はいずれも、東芝の決算を「適正」と評価しておきながら、2016年12月に、S&W買収による巨額損失が表面化するや、一転して、東芝に対する「不信」を露わにし、2017年3月期の会計報告について「意見不表明」を続ける一方、前任会計監査人の新日本が、2016年3月末の時点で東芝が損失発生の可能性を認識すべきだったのに、見過ごしたかのような主張を始めたのである。

少なくとも、東芝のS&W買収による巨額損失が表面化して以降の東芝監査へのPwCの対応には、監査法人の世界の常識からすると、かなり疑問がある。しかし、PwCは、現在のところ、大きな批判を受けてはいない。それは、現時点においては、東芝という企業や執行部に対する「不誠実で信頼できない」という認識において、PwCと社会一般の認識とが共通しているからである。東芝の会計監査で徹底して厳しい対応をとることは、基本的に社会的要請に沿うものなので、PwCを批判する声があまり上がらないのである

しかし、一連の会計不正への対応を見る限り、東芝執行部の監査法人への対応が不誠実で信頼できないことは、監査受任の段階で十分に認識できたはずだ。PwCは、それでも、敢えて東芝の監査を自ら受任したのである。もし、PwCが受任していなければ、他に受任できる大手監査法人はなく、東芝は上場廃止に追い込まれていた可能性が高い。東芝監査をあえて受任したPwCには重大な責任があることを忘れてはならない。

 

「真の第三者委員会」設置によって「東芝をめぐる闇」の解明を

東芝とPwCの関係は「限定付き適正意見」を東芝側が無視し、何も措置をとらないという「異常な関係」となっている。今後もPwCが東芝の会計監査人にとどまるのであれば、その条件として、「不誠実で信頼できない」状況を解消するための抜本的な是正措置を求めるべきである。そのための重要な手段が、「東芝不祥事」の全容を解明するための、東芝執行部からの独立性・中立性が確保された「真の第三者委員会」の設置である。それが受け入れられないということであれば、PwCは会計監査人を辞任すべきである。

東芝の一連の会計不祥事の発端が、WECの買収による海外の原発事業によって大きな損失を生じたことにあったのは、もはや疑う余地がない。その失敗の根本原因がどこにあったのか。海外原発事業の損失が、東芝社内でどのように認識され、どのような対策が講じられてきたのか、それに関して、デロイトを使った監査法人対策がどのように行われ、そこにどのような問題があったのか。海外の原発事業をめぐる問題が、「4事業」の会計不正にどのようにつながったのか。会計不正が表面化した後の「偽りの第三者委員会」の設置等による問題の本質の隠ぺい工作は、誰が主導し、誰が関わって行われたのかなど、東芝の会計不祥事をめぐって起きたあらゆる問題を徹底解明すべきである。

PwCがこだわり続けた、「S&W社買収による損失を東芝が認識した時期」というのは、「東芝をめぐる闇」の一コマに過ぎない。今、重要なことは、来年3月までに債務超過を解消し上場を維持することではない。「東芝不祥事」の全容を解明し、「日本を代表する伝統企業」が「最も不誠実で信頼できない企業」に転落していった原因を明らかにすることである。そのうえで、経営体制の刷新、組織の抜本改革を行うのでなければ、東芝に対する社会の信頼を回復することはできない。

東芝監査に関わった以上、PwCには、それを徹底して追求する社会的責任がある。

 

 

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