昨日、Abalance株式会社(東証スタンダード上場)が行った「検証委員会の委員の選任に関するお知らせ」において、第三者委員会の調査結果報告書に対する検証委員会の委員の構成と今後のスケジュールについて開示があり、私が同検証委員会の委員長に就任することが公表されました。
同社は、連結子会社と太陽光発電所の建設工事業者との間の一部の取引における有償支給取引が収益認識に関する会計基準の適用指針に照らし、売上及び売上原価が誤って計上されていることが判明したとして昨年3月に過年度決算を訂正、その後、9月2日に、第三者委員会を設置、12月17日には、調査報告書が公表されました。
しかし、その結論の前提とされた「財務報告における虚偽記載の不正が故意のみならず重過失をも含み得るという会計上の慣行」について、その根拠が十分に示されていないことから、当事者の納得が得られにくく、包括的なガバナンス・コンプライアンスの強化及び個別の事象に対する適切な再発防止策を講じるための環境が十分に整っているとは言い難い面があることから、同社は、新たに検証委員会を設置し、第三者委員会調査報告書における、同社の「会計不祥事」に関する事実認定及び評価等について客観的な視点から検証した上で、取締役等各人の責任調査と新経営陣の陣容や組織に対する在り方に対する提言を求めることとしたものです。
委員長に就任する私は、「第三者委員会」の草分け的なものと言える、消費期限切れ原料使用問題を受けての「不二家信頼回復対策会議」で議長を務めたのをはじめ、キリンHDのメルシャン問題第三者委員会、田辺三菱製薬メドウェイ問題第三者委員会等の多数の第三者委員会委員長を務めましたが、九州電力やらせメール問題第三者委員会については、原発立地地域の自治体首長等の有力者との不透明な関係が根本原因だとする委員会報告書の指摘の受け入れを拒否した会社側と対立した経験もあります(【第三者委員会は企業を変えられるか~九州電力「やらせメール」問題の深層】)
最近では、第三者委員会を設置した会社側や調査対象者側が、調査及び報告書の内容に納得できないとして検討や対応を依頼され、報告書の問題を指摘し、対応を求める活動を行った事例も複数あります。
「第三者委員会」には法的根拠はないものの、不祥事の当事者組織が自ら設置した場合にはその報告書が極めて重いものとして扱われ、委員会の調査の結果示された認定・判断を受け入れてそれを前提に対応することが、関係当局も含めて、強く求められることになりますが、一方で、第三者委員会の判断が、あらゆる場合にすべてにおいて正しいとは限らず、設置した組織の側からの反発・反論に相応の合理性がある場合もあり得ます。このような場合、専門性を有する客観的・中立的な立場からの検証を行うことで、第三者委員会の認定・判断を「客観化」することは、問題の根本的な解決の有力な方法であると考えられます。
今回の第三者委員会調査報告書に対しても、会社側の納得が十分に得られていない状況において、客観的中立的な立場から検証を行って問題を整理することが、経営の正常化、信頼回復に向けての環境を整備することにつながるものと思います。
私の場合、これまで、上記のように第三者委員会の委員長として、問題の本質を指摘し不祥事組織の信頼回復に相応に貢献した多数の事例がある一方で、問題の本質の指摘を受け入れない経営者側と厳しく対立した経験もあり、また、第三者委員会調査によって不利益を受ける立場の調査対象者の立場に立って、報告書の問題点を指摘したこともあり、様々な立場で関わってきた経験から、「第三者委員会の在り方」についても分析検討を行ってきました(日経bizgate《郷原弁護士のコンプライアンス指南塾》【企業の不祥事対応における第三者委員会の活用(1)第三者委設置の判断と人選】【(2)調査事項、調査手法、報告書確定のプロセス】【(3)費用・報酬額、全体総括】)。
今回の検証委員会は、そのような私と、大手監査法人での勤務経験も有する公認会計士でもある藤井寿弁護士、第三者委員会での調査の経験も豊富な元裁判官の大下良仁弁護士という2人の実務家で構成しています。
2月10日の報告書公表という極めてタイトなスケジュールですが、与えられたミッションを果たすべく全力を尽くしたいと思います。