知事選告示直前に明らかになった大石長崎県知事の政治資金収支に関する「重大問題」

長崎県大石賢吾知事に対して、公選法違反、政治資金規正法違反に関連する事実について、2025年12月22日に送付した公開質問状(【長崎県大石知事宛て公開質問状】)に対して、期限とした同年12月29日を過ぎても大石知事側からは何の回答もないまま、現在に至っている。

一方で、この公開質問状を長崎県庁の秘書室宛てに送付した翌日の12月23日、大石賢吾後援会(以下、「後援会」)の代理人弁護士から、後援会事務所元職員のTさんの代理人の私に宛て書面が届いた。

後援会代理人書面の内容と「前提事実」の誤り

同書面は、(a)「現在、会計書類の確認、見直しを行っております。令和5年度の収支報告書が明らかな誤りを含む内容となっており、精査を要するので過去の会計データを探しています。」とした上、(b)「令和4年4月 1から令和6年11月末まで、Tさんが同後援会の事務員として経理・会計担当として稼働し同後援会の収支報告書等の作成を担当し、令和6年度までは、専らTさんが通知人のパソコンを用いて作成していたが、Tさんから、令和6年7月 3日に引渡しを受けたパソコンには会計データが保存されておらず、後援会事務所にもそれらしきものが見当たらないことから、Tさんが保有していると考えている」として、その会計データの提出を求めるものだった。

この代理人書面で、後援会の政治資金処理が(a)の状況にあることはわかったが、代理人弁護士が「会計データの提出」を求める(b)の前提に多くの誤りがあった。

後援会の会計処理にTさんが関与していた状況、Tさんが自宅待機を命じられ後援会事務所からも会計処理からも排除された状況、事務所の会計データについてTさんが認識していた状況について、以下のとおり説明し、これらについて事実確認を求めた。

(1)「令和6年11月末まで、通知人の事務員として、主に経理・会計担当として稼働されておられました。」とされているが、Tさんは、令和6年6月26日に、「元監査人」が業務終了を通告した直後に、後援会事務所から出入り禁止を言い渡され、その後、6月27日に自宅待機を命じられ、11月末で解雇されたものであり、6月26日以降は、雇用契約は継続していたものの「11月末まで稼働していた」ものではない。

(2)Tさんは、6月26日午前9時に、大石知事の希望で予定していた大阪の弁護士とのミーティングに同席することになっており、その際に必要になる可能性がある選挙会計・後援会・確認団体の収支報告書、領収書綴り、パソコンなどを後援会事務所から持ち出していたが、大石知事が同弁護士とのミーティングを直前にキャンセルし、26日の夕刻、事務所への出入禁止を命じられ、その後7月1日にTさんに自宅待機を命じる業務命令書が届き、それ以降はU氏が会計を担当されるとのことだった。7月3日には、会計責任者K氏立会いの下で、持ち出していた書類、領収書綴り、パソコンなどをU氏に返却した。その際、事務所の鍵と事務所の車の鍵は6月27日に事務所のポストへ投函し返却した。

(3)会計処理システムは、前回知事選当時の事務局長のO氏の勧めで、パソコンに会計ソフトが予め入ったものを顧問税理士のM税理士から購入したものだ。税理士は、後援会から報酬を受領して、令和4年分の選挙運動費用収支報告書を作成し、令和4年の後援会と確認団体の政治資金収支報告書及を最終的に確認している。Tさんは、会計ソフト入力を行い、税理士に毎月確認してもらっていた。

(4)しかし、令和5年4月に、令和4年の政治資金収支報告書作成等に関する報酬をM税理士に支払うことについて、大石知事が納得いかないと言い、紹介者のO氏と直接話した結果、その4年分の支払はすることになったが、大石知事の意向で令和6年3月末でM税理士との契約は終了することになった。そのために、令和5年の後援会の政治資金収支報告書はTさんが作成した。M税理士との契約の終了に伴い、TKCの会計ソフトは使用できなくなりパソコンから削除され、パソコン上は過去の会計データも閲覧できなくなった。会計データが残っていないのはそのためだ(会計データが削除されて、閲覧できなくなることは税理士から説明を受けたが、大石知事がそれを了承して税理士との契約を解除した。)この令和5年分の政治資金収支報告書は、それまで会計ソフトに記録されていた入出金データのとおり、Tさんが正確に作成し、最終的に選挙コンサルタントが確認し、修正をした上で提出したものだ。

後援会収支報告書の「実態と異なる記載」についてのTさんの認識

(5)Tさんが作成した令和4年5年の後援会の収支報告書については、当時からTさんも認識していた、令和5年の収支報告書に記載されている翌年への繰越額の約2158万円が、銀行口座の残高とは一致していないという「実態と異なる記載」があった。それには、以下のような経緯があった。

令和4年の収支報告書において大石知事からの2000万円の借入金が計上されたこととごうまなみ県議からの寄附が計上されたことによって、収支報告書の翌年度の繰越額が2286万円増額され、銀行口座の残高とは一致しなくなっていた。令和4年の収支報告書における翌年度への繰越額の決定は、税理士と選挙コンサルタント側で行っており、Tさんは関わっていない。令和5年の収支報告書は、Tさんが、令和4年の収支報告書の繰越額を前提に、その後の令和5年の政治資金の収入と支出を正確に記載したものだったが、令和4年の収支報告書の繰越額が、実態とは異なる借入金2000万円の計上のために、預金残高と一致していなかったために、令和5年の収支報告書に記載されている翌年への繰越額の約2158万円も、銀行口座の残高とは一致していなかった。

「令和5年度の収支報告書の明らかな誤り」と「2000万円」問題との関係

Tさんとしては、当初の令和4年の収支報告書で翌年への繰越額と銀行口座の残高との不一致が生じていたのは、実態を伴わない2000万円の借入金が計上されたことによるものと認識していたので、2000万円の借入金を取消す等の訂正によって、不一致は解消されたものと思っていた。

今回の通知書で「令和5年度の収支報告書が、明らかな誤りを含む内容となっている」と書かれていたので、Tさんが、公表されている訂正後の令和5年の収支報告書を改めて確認したところ、翌年への繰越額は5,472,341円と記載されており、Tさんの手元に残っている令和5年末の後援会の銀行口座の残高の6,236,111円との差額763,770円が生じていることがわかった。

代理人弁護士の書面に対して、昨年末に、上記の(1)~(4)の前提事実について確認を求めるとともに、「令和5年度の収支報告書の明らかな誤り」というのは、上記(5)の「翌年への繰越額と銀行口座の残高との不一致」だと思われ、そうであれば、原因は、主として、Tさんが会計担当を外れた後に行われた2000万円の借入金の取消し等に起因するものと考えられるので、2000万円の借入金の計上に関わった選挙コンサルタント、M税理士や、収支報告書訂正を行った弁護士等に聞いてもらうしかない。その上で、不明な点があるのであれば、Tさんとしては、自らに向けられた疑いを晴らすためにも、後援会側の「令和5年度の収支報告書の明らかな誤り」の是正に協力する意向であることを伝える書面を送付した。

今週に入り、代理人弁護士と電話で話したところ、後援会事務所側が、選挙直前で準備に忙殺されているため、事実確認が十分にできているわけではないが、現時点では、当方から確認を求めている事実について異論は出ていないようであり、「令和5年度の収支報告書の明らかな誤り」というのは、上記(5)のTさんの認識のとおり、「翌年への繰越額と銀行口座の残高との不一致」に起因するものだということだ。

代理人弁護士は、受任して間がなく、後援会関係者も、収支報告書や会計データについてこれまでの経緯を正確に把握しておらず、事実関係について十分に把握できないまま、Tさんの代理人の私宛てに書面を送付したとのことだった。後援会としての対応は、大石知事個人とは切り離して、収支報告書の明らかな誤りを是正し、適正な処理が行えるようにしていきたいとのことだった。

従前、大石知事の会見に同席していながら、架空の貸付金計上の疑惑に対して説明責任を果たさず、後援会元職員のTさんに不当な疑いをかけることに加担したり、私がTさんの代理人を受任していることを認識していながら、聴取に応じることや資料提出を要求する書面をTさんに直接配達証明で送りつけるなど、従前の大石知事側の弁護士の対応には問題があったが、今回の代理人弁護士は、当方の説明を十分に理解し真摯に対応している。以前は、大石知事自身が後援会の代表者だったが、現在は代表者ではないことから、後援会として適切な対応を行うことを意図しているものと思われる。

 公開質問状でも指摘したように、大石知事の弁解どおりなのであれば、選挙コンサルタントは、選挙運動費用収支報告書の収入欄に自己資金2000万円が記載され、ほとんど選挙費用で使い切った記載になっていることを認識し、後援会の収支報告書に2000万円の借入金を計上することが虚偽記入に当たることがわかっていたのに誤った助言をしたことになる。さらに、M税理士は、選挙運動費用収支報告書の収入欄に被疑者の自己資金2000万円が記載され、ほとんど選挙費用で支出していることを認識した上で、後援会の政治資金収支報告書に2000万円の借入金を計上したことになる。

その点について法的責任を追及するのが当然であるのに、大石知事は、2人の責任を追及する姿勢を全く見せず、一方で、会見で「政治や会計処理に詳しくない職員に後援会の会計処理を任せてしまっていた。この任命責任につきましては、代表者を務めていた私にある」などと、あたかも元職員のAさんの対応に問題があったかのように述べてきた。今回の代理人弁護士に事実確認を求め、行ったやり取りからも、Tさんの会計処理には何の問題もなく、大石知事の説明が全くの誤りであったことは、明らかである。

大石知事の政治資金について新たに明らかになった事実

このように、後援会の代理人弁護士が交代し、大石知事個人とは切り離し、政治資金収支報告書の記載について適切な処理を行おうと努力を始めたことは望ましいことだが、一方で、今回の書面のやり取り等によって、知事選の告示直前に、大石知事の政治資金、選挙資金の問題について重要な事実が明らかになったことに注目する必要がある。

第1に、令和4年分と5年分の収支報告書の2000万円の借入金の記載の訂正に関して、虚偽記入の疑いで行われた告発事件について、既に不起訴処分が行われており、検察官の捜査・処分に至る手続の中で、後援会の担当者等と担当検察官との間で正しい収支報告書の記載内容が確認されたからこそ、各年度の収支報告書の記載に関する刑事事件の捜査処理が終結したものと考えていた。ところが、令和5年度の収支報告書には明らかな誤りがあり、しかも、それは、虚偽記入の疑いで刑事事件として捜査の対象とされた2000万円の借入金の計上とその取消しに関連するものであることが明らかになった。代理人弁護士の話によると、現状でも、刑事事件で問題となった後援会の政治資金収支報告書の記載は誤っており訂正未了で「違法状態」にあることになる。しかも、Tさんが述べるように、その「誤り」の原因を作ったのは、上記のとおり、大石知事が責任を追及すべき選挙コンサルタントとM税理士である。その政治資金収支報告書の「誤り」については、捜査によって「正しい収支報告書の記載内容が明らかにされ、それに沿って訂正が行われるのが通常であり(政治資金パーティー裏金問題でも、すべてそのような処理が行われている)、その誤りが放置されたまま収支報告書虚偽記入についての刑事処分が決着することは、通常、検察官の実務としてあり得ない。

大石知事の政治資金規正法違反の不起訴処分について、Tさんは、K検事から「大石の不正の認識に関する事実」を思い出すように言われ、改めて供述し調書作成に応じる予定だったが、検察官は、そのようなTさんの聴取・供述調書作成を行わないまま、9月12日に、不起訴処分を行ったこと、その不起訴処分に対して告発人として検察審査会への申立てを行ったのに対して、事実認定上、法律適用上多くの問題がある事件であり、審査に半年程度かかるのが一般的であるにもかかわらず、12月19日に、申立てから僅か2か月半で「不起訴相当」の議決が出されたことなど、不起訴処分、検察審査会の議決には、不可解な点があった。その不起訴処分が、政治資金収支報告書の明白な誤りを是正しないまま行われたということになると、2026年2月に知事選挙が予定されていることから、行うべき捜査を尽くさないまま、拙速に不起訴処分を行った重大な疑いが生じる。

第2に、このような「後援会の収支報告書の明らかな誤り」は、目前に迫っている知事選挙の政治資金と選挙資金とを区別して処理することの重大な支障になるということである。

大石知事は、2025年10月24日の説明会見の際に、この点について、《本来個人の口座で管理をすべき選挙費用ですね、それと政治団体である後援会、そして確認団体、この3つの資金管理を同一の1つの口座で行っておりました。このため、煩雑となってしまって、結果として県民の皆様に疑念を抱かせてしまう不正確な資金管理の状況となってしまいました。》と述べ、候補者個人としての選挙費用の収支と後援会等の政治団体の収支が同一の口座で混然一体となって管理されていた、つまり、選挙資金の収支の管理があまりに杜撰だったことを認めているのである。このように、政治資金と選挙資金とが後援会の口座にまず入金され、それが、その後、振り分けられるという処理の基本的なやり方に変わりはないと考えられる。ところが、その処理の基本になる後援会の政治資金収支報告書の記載の現状に誤りがあるというのである。この状況で、今、選挙に向けての政治資金、選挙資金の流れが生じているはずである。明らかな誤りを放置したまま適正な処理が行えるはずがない。

知事選告示直前に明らかになった大石知事の政治資金収支報告書に関する「重大問題」

大石知事が再選をめざして立候補を表明している長崎知事選挙の告示が明日(1月22日)に迫っており、公開質問状で、「検察の不起訴処分により刑事責任は問われなかったとしても、重大な政治的説明責任がある」と私が指摘したにも関わらず、大石知事は、説明責任を全く果たしていない。

対立候補を僅差で破って当選した一期目の選挙で選挙収支、政治資金収支に関して重大な問題が多数表面化した大石知事だが、今回の選挙では、選挙前から、すでに適正処理が困難な状況が生じている。この状況で、「政治とカネ」の問題は決着した、と胸を張った上で選挙に臨むことなどできるはずもない。

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